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『ガンダム Gのレコンギスタ』における「線」を巡る冒険:吉田健一氏、脇顯太朗氏が語る 第2回

『ガンダム Gのレコンギスタ』における「線」を巡る冒険:吉田健一氏、脇顯太朗氏が語る 第2回 藤津亮太氏による全4回の連載。

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■「こだわり」ではなく普遍的な技術を目指す


番号とか指示とか不要な部分は消して、線の部分だけ。

吉田
でも修正ラフって原画の位置だけしかないでしょう。


そうです。原画の位置にしかないので、中割のところは、動画の線のままになっちゃうんですよ。それだと動画が浮いちゃう。だから、似たような感じの処理を、あのカットだけ別で作って足して繋がるようにはしました。

吉田
そうなんだ。あれはおもしろかったし、要所要所ならこんなこともできるんだな、と。


そうですね。ぜんぜんいけると思います。

――これもまた作画と撮影の連携の産物ですね。『G-レコ』のほかのカットでもそういうことはやったのですか。


いや、ここだけですね。

吉田
だから、そういうことは試していくといいなと思いました。ちょっと『茄子 アンダルシアの夏』の自転車レースのラストで、三原(三千夫)さんが原画までやって、さらに動画までいった後に、三原さんが全部グワーッと線を乗っけた時みたいな効果だなと。

――ぐっとニュアンスが加わりますよね。

吉田
やっぱり変わるんですよ、ラフな線そのものを目的にするというより、気分を乗せようと思って描いた線って、画面に出るとぐっと気分が乗って見えるなって思って。『機動戦士ガンダム』の劇場版なんか、もう全編そういう気分が出てるんですよね。困ったことに、安彦さんがやってない話数でも気分はしっかり出ていたりして。なぜ今はこうならないのかは考えちゃいます。

――こうなってくると、原画や修正を清書して動画にしなくても、原画マンや作画監督の線のまま画面に出す方向もありえるのではないですか?

吉田
はい。それはあるかもしれません。でもそれはやっぱりケース・バイ・ケースだろうと思ってます。たぶん、やろうと思えばできるでしょうけれど、それをルールにしてしまうと、『ホーホケキョ となりの山田くん』とか『かぐや姫の物語』と同じような、スペシャルなものにならざるを得なくなって、TVアニメではなくなってしまうでしょうね。小西(賢一)さんが全部清書しなくてはいけないっていうことに(笑)。

――吉田さんとしては、スペシャルなものには興味がない?

吉田
いや、ありますよ。そういうやり方をやらないかっていう話をいただいたこともあるし。ただそれで『G-レコ』みたいな、キャラもメカも大勢でてくるTVシリーズは作れない。僕は、今自分がやってることを「こだわってますね」って言われるのは、ちょっと不本意で。こだわっている、っていうのは、それこそ『かぐや姫』のようなものを言うのであって、僕らが『G-レコ』でやってることは「これが普通です」っていうことでないといけないと思うんです。だから、絵描きが絵をリレーしてアニメの画面を作っていくっていうことを、技術化して、もっと普遍的なものになる方法を探るべきなんじゃないかと思っているんです。

(第3回に続く)

[プロフィール]

□ 吉田健一(よしだ・けんいち)
アニメーター。主な作品に『OVERMANキングゲイナー』(キャラクターデザイン・アニメーションディレクター)、『交響詩篇エウレカセブン』(キャラクターデザイン、メインアニメーター)、『茄子 スーツケースの渡り鳥』(作画監督)などがある。

□ 脇顯太朗(わき・けんたろう)
主な参加作品に『革命機ヴァルヴレイヴ』(撮影監督補佐)、『GOD EATER』(撮影監督)などがある。

(原稿後半用図版)










レイアウトとともに提出されたラフ原画に対し、吉田が加えた修正。この修正に従って、原画・動画作業が行われたが、撮影工程で、改めてこのラフ修正の線を画面の上に重ねて完成画面としている。



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発売元:バンダイビジュアル 販売元:バンダイビジュアル

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『ガンダム Gのレコンギスタ』
(c)創通・サンライズ・MBS
《藤津亮太》
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