『ガンダム Gのレコンギスタ』における「線」を巡る冒険:吉田健一氏、脇顯太朗氏が語る 第1回  3ページ目 | アニメ!アニメ!

『ガンダム Gのレコンギスタ』における「線」を巡る冒険:吉田健一氏、脇顯太朗氏が語る 第1回 

『ガンダム Gのレコンギスタ』における「線」を巡る冒険:吉田健一氏、脇顯太朗氏が語る 第1回 藤津亮太氏による全4回の連載。

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■ 絵であることを思い出してもらいたい『G-レコ』

――そこまでアナログ感を目指す目的や理由というのは何なんでしょうか?

吉田 
結局、なんでそういうことをやったかというと、お客さんに「これは絵なんですよ」っていうことを認識してほしいからなんです。「これはリアルなものです」「実写みたいなものです」っていうんじゃなくて、「これはマンガですよ」「これは絵なんですよ」っていうことをちゃんと伝えたい。

――手で描いた絵であることを意識してほしいためのアナログ感というわけなんですね。そういえば『G-レコ』では拡大作画禁止と聞きました。

吉田 
原則、ですね。原則として拡大作画はしないという。

――それも「絵であることを意識してほしい」ということと同じ発想ですよね。

吉田 
拡大作画に関しては、これまでも、決して好きではなかったです。でも、演出さんが望めばやってはきました。その時に僕は「なぜ拡大作画をするのか」を、いちおう聞くんですよ。そうすると理由はいろいろ出てきます。「小さいものは拡大して描いたほうが動画さんの効率があがって早く上がる」という言い方もあれば「大きな画面で見栄えがするような精密感が出るから」という言い方もあって。でも、それには疑問があって。

――疑問ですか。

吉田 
僕は、小さいものは小さく描くのが普通だと思うんですよ。それで時間がかかってしまうなら、そこを早く描くのが仕事だろうと思うし。あと、小さいものは細部をうまく省略して描けばいいんですよ。絵なんだから。
今回、あるアニメーターじゃないベテランスタッフさんに言われたんですよ。いつからアニメーターはこんなに省略がヘタになったんだ、と。ただ細かく描くだけが、よい仕事ではないですよね。そこはとても大事なことだと思うんです。

――観客だけでなく、作り手側も描いているものが「絵」だと再確認したほうがよい、と。

吉田 
たとえば、エフェクトにエアブラシのようなぼかしの効果を加えようとしますよね。今は、アニメーターはそのぼかしの効果の範囲を実線で描いて、撮影さんがぼかすという段取りになります。僕としては、それがもう「絵じゃなくなっている」感覚があるんです。
昔は、原画マンが鉛筆の腹でグラデーションのある線をシャーッと勢いよく引いて、それを動画さんが、原画の気分を拾おうとしながら描く。それを特効(特殊効果)さんが、「お、このシャーッ! はこうだろ」ってエアブラシで吹き付けていく。最終的にそれは原画さんが望んだイメージとは変わっちゃってるかもしれないけれど、前の絵描きが描いたものを次の絵描きが読んで、気分をバトンしていく感覚があったんです。後の人は「あれはきっとコントロールされた絵に違いない」って思うんだけれど、ほとんどがそういう「絵を読んでいく」流れで起きた偶然だったりする(笑)。

脇  
そう、偶然なんですよね。

吉田 
アニメ業界としては、その時はそれが効率的だからそうしていただけで、今も今なりに効率的にやってるだけなんです。ただアナログ時代に、効率の中で偶然生まれていたよさが、デジタルの効率の中では消えてる。
とするとデジタルのソフトの使い方としては、そういう偶然性を増やしていく方向で、使い方を考える余地はあるんじゃないかなと思うんです。その上で、一番大事なのは、もう一度みんな絵描きに戻って、描くことで今の状況を突破することなんじゃないかと思うんです。

[第2回に続く]

[プロフィール]
□ 吉田健一(よしだ・けんいち)
アニメーター。主な作品に『OVERMANキングゲイナー』(キャラクターデザイン・アニメーションディレクター)、『交響詩篇エウレカセブン』(キャラクターデザイン、メインアニメーター)、『茄子 スーツケースの渡り鳥』(作画監督)などがある。

□ 脇顯太朗(わき・けんたろう)
主な参加作品に『革命機ヴァルヴレイヴ』(撮影監督補佐)、『GOD EATER』(撮影監督)などがある。

油彩処理の比較(上段が処理前・下段が処理後)












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(c)創通・サンライズ・MBS
《藤津亮太》
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