布川
日本のアニメはストーリーがしっかりしています。日本では作画枚数に制限があるリミテッドアニメとして発達したけれども、そうした歴史もあって、たくさん動くかどうかよりも、ストーリーに感動してくれる傾向にあります。
それから設定のリアリティも持ち味だと思います。
「ニルス」の頃も、作品舞台となるスエーデンの風景や人の暮らしをできるだけリアルに描こうとしていました。当時はスタッフみんなでロケハンなんてとても行けなくて、でも美術監督の中村光毅さんだけは現地でロケをしてきたんです。食器、テーブル、扉のノブがどの位置でどちら側に開くか、木靴……そこまで全部調べて描いていくという緻密な作業でした。
日本はリアル志向の作品になるほど、設定をいいかげんにしない。うちで作った『英國戀物語エマ』も、主人公が19世紀イギリスメイドが主人公ということで、原作者の森薫先生がすごくこだわりがある方だったということもあり、アニメでも19世紀の貴族の紅茶の飲み方ひとつでも細かく設定を作りました。
日本のアニメーションは、世界でもトップレベルです。
あとの課題は売り方ですよね。作品を制作する段階から、世界への発信と売り方を考えるプロデュースが大事になっていく。そこができる人を「NUNOANI塾」でも育てたいんです。
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――海外マーケット作りで布川さんがお考えになる肝はなんでしょうか。
布川
インフラでしょうね。ハリウッドやディズニーは、映画やTVの分野で先にインフラを作ってしまって、あとはコンテンツを入れるだけになっている。悔しいけど(笑)。日本としては今のインフラに乗って作品を作るだけでは勝ち目はない。
勝機があるとしたらインターネットです。アニメもインターネット配信など次のメディアが始まっています。どこでどんなものがヒットするか、TV以外にも視野を広げてリサーチをかけていくことが必要です。
ネット配信でのビジネスモデルも過渡期だから、現在の形が「正解」というわけではない。もしお金が生み出せるようなブレイクポイントがあったら、その時は一気に業界が変わるでしょうね。
――そうした日本のアニメの将来も踏まえて、「NUNOANI塾」への応募を考えている人たちにメッセージをお願いします。
布川
デジタルのおかげで、作業面もインフラも、ものづくりが大きく変わってきています。
アニメ制作も「動画一枚幾ら」という作業面からまず変わる。アニメはこの先もっともっといいビジネスになっていくと思います。
配信の仕方も、お金にしていくシステムも、媒体に合わせた作品の乗せ方もこれからです。僕らもさまざまな可能性を探っています。
アニメに未来性を感じて欲しいし、切り開いて欲しい。その方法をみんなで考えていかなきゃいけないから、そのヒントを学んで欲しい。本当の意味での「プロフェッショナル」が増えればアニメは変わると思います。
――ありがとうございました。
NUNOANI塾 公式サイト
http://nunoani-project.jp/
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