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「たまこラブストーリー」山田尚子監督インタビュー 第18回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞受賞

第18回文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門新人賞を「たまこラブストーリー」が受賞、その監督である山田尚子さんに作品作りと本作の魅力について、お話を伺った。

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■ キャラクターにひとりの人間として接する

―映像面では、レンズを意識した演出など、TVシリーズよりも実写的な画づくりが印象的でした。

山田
もともと実写的なアプローチが好きなんです。レンズを意識したり、望遠気味に撮ったり。それは「映画」への憧れが影響しているのかもしれません。もともとテレビっ子で小さいころから深夜に放送されている映画をよく観ていて、そのたびに夜寝られないような興奮を味わっていたんです。今度は自分が撮る側になって、自分の作品でそうした興奮を視聴者に味わってほしい。だから、演出するうえでも「カメラで被写体に迫る」という感覚が強くて。

―なるほど。それがキャラクターの実在感にも繋がっていると思います。

山田
キャラクターをひとりの人間として扱うことは大切にしています。「絵空事のキャラクター」としてではなく、「この子はどう思っているのかな」「どんな景色が見えているんだろう?」そういった目線でキャラクターに接している。それも実写的なアプローチに繋がっているのかもしれません。

―本作は山田監督にとって長編映画2作目にあたりますが、前作『映画 けいおん!』と比べるといかがですか?

山田
『けいおん!』の頃はまだまだ経験も浅く、画面のつくり方にも不器用さを感じますね。あのシーンのアプローチはこういうやり方もあったかも…、と反省すべき部分もあります。でもその一方で、あのときの自分にしか撮れない「無邪気さ」のようなものもあって、同じような撮り方はきっと二度とできない。
後から『たまこラブストーリー』を振り返っても同じように思うはずなので、やっぱりどの作品も大切にしていきたいです。

―本作は青春の輝きに満ち溢れた作品ですが、「青春」というテーマは『けいおん!』から一貫しています。

山田
青春時代を離れて久しいのですが、たまこの年代の子たちは、呼吸しているとき、瞬きしているとき、もうすべての瞬間が“青春”なんです。自分が17歳のときはそれが青春とは意識せずに生きてきましたが、それは実に感動的なことで。それを撮りたいという思いでこれまで作品づくりをしてきました。やはり本作でもそれを意識して、彼女たちの輝きを一瞬たりとも逃さない、そういう気持ちでつくりました。

■女の子を描くのが好き

―『けいおん!』から引き続きとなりますが、キャラクターデザイン・総作画監督の堀口悠紀子さんとのお仕事はいかがですか。

山田
堀口さんとの仕事は、フィーリングと言いますか、言葉じゃないところが大きくて。つねにお互いがこの作品に求めていることを感じ取って、出し合うみたいな魂のやり取りをいつもしています(笑)。
今回も具体的なオーダーは特にしなかったのですが、映画ということで堀口さんのほうでキャラクターの頭身を少し上げたり、髪型もちょっとリアルっぽくしたりしてくれました。

―たまこともち蔵は恋愛をとおして成長を遂げますが、そのほかのキャラクターも自分なりの一歩を踏み出します。

山田
そうですね。史織ちゃんも留学を決めたり、みんなちょっと目を離している隙に大きい一歩をバーンと踏み出していく。実はコンテ作業などなかなか進みが悪くて、「どうしよう…」と悩みながら描いてたんですけど、そのたびにキャラクターたちが背中を押してくれて、本当に支えになりました。彼女たちの勇気、成長にわたし自身感謝しています。
あと、この作品ではみどりの存在がとても大きかったです。あの子、別名「青春」というぐらいで(笑)。TVシリーズの第2話でみどりの恋心に触れてしまったので、入り口を描いてしまった以上、最後までみどりを描かないといけないという想いが強くありました。そういう意味でも、今回映画化できたのは本当によかったです。

―女性キャラクターを魅力的に描かれる山田監督ですが、やはり女の子を描くのがお好きなのでしょうか?

山田
好きですね(笑)。女の子は眩しい存在で、興味が絶えません。逆に弊社制作の『Free!』は男の子ばっかりな作品で、内海(紘子)監督のキャラクターに対するアプローチがとても面白くて新鮮でした。とても良い経験になりましたね。

―山田監督の作品は、「女性監督だから」と性別論的に語られることも多いですが、ご自身的にはいかがですか?

山田
たしかによく言われますが、実のところ自分ではよく分かりません……。男性でも女性でも個人の世界のとらえ方は十人十色なので、男・女の二元論的に語れない気がしています。実際、女の子を描くときは「可愛いな、えへへ」という感じなので、「女性らしい」と言われたら申し訳ない気持ちがあります(笑)。

《沖本茂義》
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