本作はファスナーのトップメーカーとしてお馴染みのYKKが、ファスナーにちなんでFasten=「“つなぐ”ことの大切さ」ことのメッセージを世に伝えることを目的として制作された。作中にもファスナーにちなんだ場面もある楽しい作品だ。
またPerfume×砂原良徳×石田祐康という強力コラボも注目されている。『FASTENING DAYS』は一体どのような試みで作られたのか。石田監督にお話をうかがった。
[取材・構成:細川洋平]
「FASTENING DAYS」公式サイト
http://www.ykkfastening.com/fd/
―アニメ!アニメ!(以下、AA)
突然の発表となり驚きました。制作期間はどのくらいだったのでしょうか?
―石田祐康監督(以下、石田)
実制作の期間は三ヶ月ですね。参加した人数などを考えるとすごくタイトでした。
―AA
どういった経緯で企画に参加することになったのでしょうか。
―石田
CMプランナーで今回、脚本・原案を担当されている田中淳一さんとYKKの間で「アニメを作ろう」という話があり、じゃあ誰に頼むのがいいのかなと見渡したときに、『フミコの告白』から知ってくださっていた田中さんが僕を指名してくれたという経緯だと聞いています。
―AA
それまでは面識はなかったのですか。
―石田
ありませんでしたね。
―AA
今回は田中さんが原案・脚本を担当されるというのは最初から決まっていたことなのでしょうか。
―石田
ええ。僕たちは絵作りに特化した関わり方をする、という話でした。打ち合わせを重ねた上で両者の納得のいくストーリーの落としどころを見つけて、脚本としてまとめていただく、というのは初めての体験でしたね。
―AA
ホン打ちを繰り返されたということですか?
―石田
それよりも前の企画段階です。そこでかなり詰めた話をして、脚本やセリフに関してはお任せしました。
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―AA
今回、YKKのメッセーシを伝える一環としての作品ですが、石田監督が本作に込められた思いはどういったものでしょうか。
―石田
物語上のテーマとは別に、絵作りの点で意識したことですが、あんまり片意地張らずに見られるような、軽快なタッチ。別の、こっぱずかしい言い方で言えば、優しさであったりとか、暖かみであったりとか。そういうのにも繋がるような軽妙さですね。だからお気楽な作品といえばお気楽ですね。
―AA
お気楽の中にも重さは見えます。最初に見た時には少し驚いたのが、例えば冒頭でケイとヨージの部屋にアンナが車いすで入ってくる時です。そういったある種の過去を連想させるアイテムを絵にされる時はどのように気を配られたのでしょうか。
―石田
そこで何か内に秘めた重さみたいなものは感じるんですかね。脚本ではそれぞれのキャラクターに過去や生い立ちがあります。例えばケイもヨージも2人とも親を失って、後見人としてアンナが引き取ってくれたというのがあります。それを回想シーンで何となくわかるように脚本に書いてあるんです。ストーリー上にはそういった重いものがありつつも、絵の描き方としては、そんなに重くなるのはいやだなと思ったんです。だから軽妙な形で見られるように描きました。それがひとつテーマです。
―AA
それには色味も大きな働きをしていますね。
―石田
重くならないように色にもポップさを出そうと意識しました。設定に「多人種が一緒に住む街」とあり、日本のようでありつつ別のどこか、という設定です。人に関しても色彩に富んでいるのは大事なんですよね。肌が黒い人もいれば、黄色い人、白い人、いろんな人がいる。
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―AA
とてもエコの進んだ世界でもありますね。
―石田
そうですね。ソーラーパネルがほとんどの家に設置されていたり、風車が街にいっぱいあったり。細かいんですけど、町中の看板が全部薄いパネルになっていたり、車が全部電動式の三輪車だったりするんです。この辺りは、脚本に「近未来」と書かれたもの膨らませて絵にしていきました。
―AA
『陽なたのアオシグレ』では音楽が非常に大きな要素でした。本作での音楽はどういう位置づけになったのでしょうか。
―石田
『アオシグレ』の時は曲を聞きながら、映像のタイミングをピッタリ合わせていって、ひとつのPV映像としても気持ちのいいように作っており、曲は外せないものだったんです。今回は自分の作った映像に、音楽を付けていただきました。砂原良徳さんとは、何度もやりとりをした中でのこだわりはありましたが、意識としてはやはり全く別物です。ただ、砂原さんの曲も、Perfumeさんの曲も、作品にピッタリですごくよかったと思います。
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