
― AA
そうした強烈な俳優陣の中心には、クリス・エヴァンスとポン監督作品常連のソン・ガンホがいます。監督は以前、クリス・エヴァンス演じる主人公“カーティス”とソン・ガンホ演じる“ナムグン・ミンス”の関係性を『スターウォーズ』のルークとハン・ソロに例えていらっしゃいました。
シナリオを手がけている時点から、二人の関係性は『スターウォーズ』のようなものになると意識されていたのでしょうか。
― ポン
「ルークとハン・ソロとの関係」と言うのではなく、ナムグン・ミンスという存在がハン・ソロのようだ、ということで例えにだしました。
ナムグン・ミンスというのは隠れた主人公です。もちろん主人公はクリス・エヴァンスであり、シーンの数も圧倒的にクリス・エヴァンスが多いんですけれども、一方でナムグン・ミンスこそ、この映画に独特な活気を持ち込んで来る存在です。現れては消え、現れては消え、まさにハン・ソロのようなんです。
サッカーに例えればナムグン・ミンスは「リベロ(※)」のような存在です。映画に活力を与えてくれる存在であり、同時にこの映画全体のテーマ、映画の中で監督が伝えたいことを運んでいく人物でもあります。そういう意味での隠れた主人公ということです。
キャラクターの描写というのはシナリオの段階でデザインしていくわけですから、最初から念頭に置いて登場人物の配置を書いていきます。例えばサッカーの監督は「4-2-3-1」や「4-3-3」といった配置を考え戦術を練っていきますよね。同じように映画監督はシナリオを書く時に、誰を前方に配置し、どの俳優をどう配置するか、ということをシナリオの段階で書いていくわけです。
今回クリス・エヴァンスは最前方に配置されたワントップストライカーであったとすれば、ソン・ガンホというのは後方のジョーカー=リベロのような存在として最初に組み立てられていったのです。
(※リベロ=守備だけでなくチャンス時には積極的に攻撃参加をするセンターバック)
― AA
ポン監督の作品といえば雨のシーンがとても印象的です。今回それが登場しません(!)。
― ポン
列車の中で雨を降らせるというのはできないですよね(笑)。私も寂しいなと思いました。初めて雨のシーンのない映画になるなと。その代わりと言ってはなんですけれどもシャワーを浴びるシーンが少し登場します(笑)。
― AA
やはりそこは意識されていたんですね!
