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映画「ハル」 京都・立命館大学で、特別試写にスタッフトーク“アニメの過去から「ハル」まで”

京都の立命館大学衣笠キャンパスで6月7日、WIT STUDIO制作、松竹配給による中編アニメーション『ハル』の特別試写会と、講演会が開催された。本講義はクリエイティブ・リーダーシップ・セミナーとしてクリエイターを招いておこなわれる

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■ アニメというよりはむしろ実写に近い、作中でおこなわれた数々の試み

一方、アニメファンだけでなく一般の人もターゲットにしているということを受け、「アニメーションにあまり興味がない人が見ると、日本のアニメーションってどれも似てると思う人が多いと思うが、今回はクリエイターがやりたいことを詰め込むという形を意識的にとった」といった制作時の状況を踏まえつつ、『ハル』については、「アニメーションというよりは邦画という感じで見て欲しい。」と和田プロデューサーは作り手としての意図を告げた。
これについて牧原監督は、「自分がもともとアニメよりにしない東映動画、テレコムあたりの流れを汲んでいると思っているので、何がアニメよりかと考えると難しい。」としながらも定型文的な芝居や、わかりやすい漫画よりは、カットごとに演出面でもっと格闘したいと思って作品づくりに取り組んだという。

このアニメにおける繊細な演出技術について、小田部先生は、「荒唐無稽なアニメという意識に沿ってつくられたアニメは、『太陽の王子ホルスの大冒険』から変わった。アニメーションの中で初めて人間の心や心情について考えて作られたアニメ。」と自身が関わった作品を振り返りつつ、同時にアニメーションで、このような感情を表現するのはどうなのかと思い悩んだ時期もあったと当時の心境を吐露した。
しかし、人間の豊かな情感を込める必要性に改めて決意を固めたという。それは、アニメが表現できるのは、単なるリアリズムではなく、アニメーションという映画世界の中で如何に本当と感じてもらえるかと別次元の発想があるからだという。そのような意味からも本作での監督の挑戦についても共感すると敬意を払った。

なお、全編が「近未来の京都」ということをうけ、京都でのロケハンについても話し合いが拡がった。「京都を舞台にしてよかったところは2つあります。」切り出したのは牧原氏。以前、『四畳半神話大系』の際もロケハンを重ねていたことから、時間を短縮出来たという点、もう一つは、鴨川など、川の流れが多様で、作品のテーマを描きやすかった点を挙げた。
これに対し、和田プロデューサーは、「プロデュース的な観点でいうと、これから海外の映画祭にも色々出していこうと考えているので、SF、ロボット、京都の組み合わせはパッケージとして分かりやすい。そのような観点から京都は素晴らしいと思って組みました。」と舞台に京都を選んだ内情を示した。
なお、映したい場面については、「ロケハンをするうちに使いたい場所が多くなりすぎて悩んだ」としながらも「川を中心にという思いはあり、川が映ってなくても川の音を入れてもらったりして、なんとか川が中心にある映画になる様に工夫した。」とのこと。
また、ドラートや、大正製パン所などの実在の店舗が舞台になっている点については、「単純にいい場所だったからというのはありますね。」と外観が作風にマッチしていたという点が理由にしつつも、はちみつのお店、ドラートは、見つけてすぐに使いたいと思ったので、こうやって協力していただいているというのはとてもありがたいことだと思っています。」と映画での使用を許諾した店舗に感謝の意を述べた。

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このように話題は多岐に渡って広がり、その後の質疑応答も学生、一般参加者の双方からおこなわれるなど終始盛況で、講演終了後も多くの受講者が列を成して講演者に質問をする姿が見られた。
そこでは本リポートの締めくくりとして、登壇者それぞれが示した『ハル』の見どころについてお伝えする。

「色々細かく見て欲しいです。作品色々な想像をめぐらして見てもらうと違った楽しみ方ができると思います。」(北田氏)
「この作品はWIT STUDIOで『進撃の巨人』と並行でつくったので、根底に似ている部分があると思います。グロくはありませんが(笑)。自分たちの気持ち等、言葉で説明出来ない部分を映像で伝えている。」(和田プロデューサー)
「思っていることを言葉で説明できないところを映像で伝えている。最後に何かふわっと思ってもらえたら嬉しい。」(牧原監督)

映画『ハル』は現在国内各劇場で上映中だ。

立命館大学 /http://www.ritsumei.jp/ 
映画『ハル』 /http://hal-anime.com/
《animeanime》
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