アヌシーでは、一般公開前のスニークプレビューで、『Ernest & Celestine(原題 アーネストとセレスティーヌ)』、『Madagascar 3: Europe’s Most Wanted(マダガスカル3)』、フランスとカナダ合作の『Day of the Crows/Le Jour des corneilles』、フランスを代表するCGI/VFXスタジオのMac Guff Ligneからアニメーション部門が分かれたIllumination Mac Guffがディジタルアニメーションを制作した『Dr. Seuss' The Lorax(原題 ドクター・スースのローラックス)』など、現地でも話題の新作が登場した。 オープニングフィルムに選ばれたのは、2Dアニメーションを3D立体視化した『Le Magasin des Suicides』(原作 ジャン・トゥーレの「ようこそ、自殺用品専門店へ」)。フランス映画の巨匠パトリス・ルコントの初アニメーション映画で、アヌシーでは制作最中から紹介され、昨年はルコント監督がコンペティションの審査員を務めた。ルコント監督は次回作もアニメーションになると語っている。
制作中や開発中の新プロジェクトを紹介するワークインプログレスでは、『Hotel Transylvania』(米国)、『Foosball』(アルゼンチン/立体視)、『Extraordinary Tales』(フランス/エドガー・アラン・ポー原作)、『May Mon is in America, She met Buffalo Bill』(フランス)、『Sarila』(カナダ/立体視)、『Aya de Yopougon』(フランス/人気コミックス原作)、『Deep』(アイルランド/ゲームエンジンをベースにした技術で制作されるアニメーション)がピッチされた。
長編部門コンペティションの受賞は、最優秀賞のクリスタルにルーマニアのAnca Damian(アンカ・ダミアン)監督の『Crulic – The Path to Beyond(クルリク)』、特別賞にIgnacio Ferreras(イグナシオ・フェレラス)監督の初長編『Arrugas/Wrinkles(原題 皺)』(スペイン))、観客賞とUNICEF賞にJung (ユング)、Laurent Boileau(ローランド・ボワロー)共同監督の『Le Couleur de peau: Miel(原題 ハチミツ色の肌)』(ベルギー、フランス、スイス、韓国合作)と、ヨーロッパ作品が独占した。 この3作には、“おとな向け”というヨーロッパの傾向が現れた。これまでなら実写映画やドキュメンタリー映画向きと考えられた、社会的あるいは政治的テーマをアニメーションで描く。
アルツハイマー病を煩った元銀行員の男性が老人ホームに移り住み、病状の進行と周囲の老いた人々の姿を描いた『皺』は、スペインのパコ・ロカが描いたコミックが原作で、短編アニメーション『How to Cope with Death』(死神と老婆、2002年)でアヌシーの初監督作品に授与されるJean-Luc Xiberras 賞を受賞するなど、評判となったフェレラス監督の初長編。 フェレラスはアルゼンチンに生まれで、オーストラリア、スペインそして日本でのアニメーション制作を経て、『死神と老婆』後は、欧米でアニメーターとして活動しながら、自主企画を売り込むなど長編アニメーション制作へ情熱を注ぎ、念願が適った。本作は本年の米アカデミー賞長編アニメーション部門にもノミネートされた。