フランス・アニメーションレポート:アヌシー2012から by 伊藤裕美 第1回 | アニメ!アニメ!

フランス・アニメーションレポート:アヌシー2012から by 伊藤裕美 第1回

世界最大規模のアニメーションの映画祭とMIFA(国際アニメーション映画見本市)が、フランス南東部、スイスとの国境に近いアヌシー市で6月4日から5日間開催された。11万枚もの上映チケットが販売され、MIFAは7000人を超すプロを世界中から集めた。

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フランス・アニメーションレポート:
アヌシー2012からby伊藤裕美 第1回


取材・文: 伊藤裕美(オフィスH)

世界最大規模のアニメーションの映画祭とMIFA(国際アニメーション映画見本市)が、フランス南東部、スイスとの国境に近いアヌシー市で6月4日から5日間開催された。11万枚もの上映チケットが販売され、MIFAは7000人を超すプロを世界中から集めた。
コンペティションには例年より多い日本作品がノミネートされ、水江未来が『Modern No. 2』で最優秀オリジナル音楽賞に輝いた。
また、日本のデジタル・ガーデンに所属する、フランス出身のフロリアン・ピエントが、津波が押し寄せても行列を乱すことなく突き進む“日本人”を描いた、日仏合作の『The People Who Never Stop(動じない)』で初監督賞に当たるJean-Luc Xiberras賞を受賞した。ピエントはMTV Japanのヒットシリーズ「ウサビッチ」にも参加していた。

■例年を上回る、日本作品の上映

今年もアヌシーは世界中から、アートアニメーションの作家からプロデューサー、ディストリビューター、教育関係者そして学生まで、さまざまなアニメーション関係者を集め、賑やかで忙しい一週間を迎えた。
“アヌシー”は、52年前に、アレクサンドル・アレクセイエフ、ポール・グリモー、イジー・トルンカら当時を代表するアニメーション作家が20カ国から集い、短編アニメーションの祭典として始まった。今では80カ国から2455本の新作が応募され、延べ500本近い新旧アニメーションが上映される世界最大規模のアニメーション映画祭に成長した

日本からは例年を上回るアニメーションが登場した。地元ファンにとって、伝説の名作『AKIRA』の大友克洋監督の新作『火要鎮』は待ち望んだ新作であった。上映後に「オオトモの新作が良かった」とか、「オオトモを見かけた」と、筆者も知人の参加者から声を掛けられた。
『火要鎮』は、『FREEDOM』の森田修平監督の『九十九』と共に短編部門コンペティションに登場した。両作は、日本を代表する4人の監督が“ニッポン”をテーマとする短編アニメーションのオムニバス『SHORT PEACE』から出品された。日本で劇場公開が予定されている。

長編部門では、コンペティションに、さとうけいいち監督の『アシュラ』(東映アニメーション)、新海誠監督の『星を追う子ども』(コミックス・ウェーブ・フィルム)がノミネートされ、アウトオブコンペティションで『人狼』の沖浦啓之監督の新作『ももへの手紙』(プロダクションI.G.)、三浦健太郎原作、窪岡俊之監督の『ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略』、宇田鋼之介監督の『虹色ほたる~永遠の夏休み~』(東映アニメーション)が上映された。

日没後に毎日行われ、アヌシー市民が気軽に立ち寄れる屋外上映では、『時をかける少女』で2007年の長編部門特別賞を受賞した細田守監督の新作『おおかみこどもの雨と雪』の予告編が紹介された後に、『時をかける少女』が上映された。細田監督は7月のパリでのプレミア上映に渡仏予定で、アヌシーにはビデオメッセージを送った。
本作は日本で7月21日公開予定だが、フランスでも日本の“アニメ”を扱うディストリビューターKazeの配給で8月に公開が予定され、韓国、台湾、スペインなど世界34の国と地域へ販売されている。19歳の少女と狼との間に生まれた“おおかみこども”の姉弟の成長から自立までを描く細田監督独自のファンタジーで、親子という普遍的テーマによって世界的なヒットを期待したい。

短編部門には、『ベルーガ』(監督:橋本新)、『リリタアル』(泉原昭人)、『Modern No.2』(水江未来)、『ヨナルレ: Moment to Moment』(中田彩郁、サキタニ ユウキ)もノミネートされた。『一輪化 -Monocyclic Flower-』(永楽壮尚/多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科)、『就活狂想曲』(吉田まほ/東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻)、『空の卵』(大川原亮/東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻)、そして、大西香織がイギリスのUCA芸術大学で制作した『When I Was Young』の4本が卒業制作・学生作品部門で上映された。
東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻は、『頭山』で2003年のグランプリを受賞したアニメーション作家の山村浩二が指導することで知られる。

第2回へ続く

[伊藤裕美]
オフィスH(あっしゅ)代表。
外資系ソフトウェア会社等の広報宣伝コーディネータや、旧エイリアス・ウェーブフロントのアジアパシフィック・フィールド・オペレーションズ地区マーケティングコミュニケーションズ・マネージャを経て1999年独立。海外スタジオ等のビジネスコーディネーション、メディア事情の紹介をおこなう。EU圏のフィルムスクールや独立系スタジオ等と独自の人脈を持ち、ヨーロッパやカナダのショートフィルム/アニメーションの配給・権利管理をおこなう。
/http://blogs.yahoo.co.jp/hiromi_ito2002jp
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