脚本家・吉田玲子が「ブルーピリオド」実写もアニメも手掛けることになった理由【インタビュー】 2ページ目 | アニメ!アニメ!

脚本家・吉田玲子が「ブルーピリオド」実写もアニメも手掛けることになった理由【インタビュー】

眞栄田郷敦、高橋文哉、板垣李光人、桜田ひよりらが出演する『ブルーピリオド』の実写映画が、8月9日から公開。このたび、萩原健太郎監督と脚本・吉田玲子にインタビューを実施。アニメの表現の違いや見どころを聞いた。

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映画『ブルーピリオド』場面写真(C)山口つばさ/講談社(C)2024映画「ブルーピリオド」製作委員会
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■“マンガ”→“映像”にするということ

――脚本の方向性で、吉田さんと萩原監督の間でどんな話をされたのですか?

萩原:最初、プロデューサーや吉田さんと打ち合わせしていたとき、藝大の受験を全部描くのは尺的にも難しいんじゃないかと話していたんです。ですので、最初は受験のシーンをもっとコンパクトにした脚本を吉田さんにお願いしたんですけど、原作者の山口先生とやり取りする中で、受験のシーンは全部描いてほしいという話になり、吉田さんがまとめてくださいました。

――藝大出身の山口先生のこだわりの部分なんですね。

萩原:一次試験と二次試験があって二次は3日かけてやるのが藝大の特徴みたいですね。受験を体験している山口先生は、そこにすごいドラマがあると身に染みてわかっているんだと思います。実際、映画を作ってみてそれがよくわかりました。

吉田:アニメ版のときの打ち合わせで、山口先生は「これはある種のスポ根マンガとして描いた」とおっしゃっていたと伺いました。なので絵を描く試験は、スポーツもので例えると試合なんですね。だから、試合のシーンを抜いては『ブルーピリオド』は成り立たないという思いがあったようです。

――なるほど。しかし、尺の問題以外にも映像はマンガとは異なる表現媒体なので、変えるところは変える必要があるわけですよね。実写という媒体で、どうアプローチしましたか。

萩原:このマンガが支持されている理由のひとつは、八虎の内面の言葉だと思うんです。でも、実写映画は、やはり言葉よりも映像と芝居だけで伝えたほうがよりエモーショナルになります。だから、映画ではなるべく言葉を省いていかに見せるかを考えないといけないし、実際に良い台詞を並べただけでは、尺の関係で文脈が異なるので、グッとこなかったりするんですよね。

でも、役者さんの芝居が良かったこともあって、山口先生にも「原作にない行間が読み取れた」と言ってくださいました。変えるべきところ、変えるべきでないところなど、リスペクトを持ったうえで、齟齬のないように原作者や出版社の方ときちんとコミュニケーションとって制作できたと思います。

■本当に青い――早朝の渋谷は必見

――『ブルーピリオド』というタイトルの作品ですから、渋谷の明け方が青いことが重要な作品です。実際に映画では青く撮れていましたけど、フィルターやカレーコレクションはしていないのですか?

萩原:はい。多少のカラーグレーディングはしましたが普通に撮影しました。早朝の渋谷は、本当に青いんです。4時から5時の間くらいに、渋谷109から撮影して、渋谷ヒカリエのほうから太陽が昇ってきて、スクランブル交差点に光が当たる直前を狙っています。

できるだけ、僕らの日常と地続きにしたいから、渋谷のシーンはすべて渋谷で撮影しています。渋谷のシーンを撮影する場合、最近は足利にあるスクランブル交差点のオープンセットを使って、背景はCG合成ということが多いですが、これは絵を描くというアナログな行為の映画だし、あまりCGに頼らずやりたかったんです。制作部が1年かけて交渉してくれて、渋谷109に撮影用クレーンを入れて撮りました。

――交渉に1年もかかるんですね。

萩原:制作部が、それくらいかければいけるんじゃないかと頑張ってくれました。周囲からは渋谷で撮影許可は下りないと言われ続けていましたが、諦めずに努力して勝ち取った映像です。まさに「情熱は、武器だ」の言葉通り(笑)。

――その甲斐あって、本当にきれいな青が撮れていますね。

萩原:八虎たちがラーメン屋を出たあとのカットなんかは、実際に撮った映像よりも少し青を抜いているんです。青すぎて不自然に見えてしまうので。それぐらいあの時間の渋谷って本当に青いんですよ。

――聖地巡礼に行く方には、ぜひ早朝の渋谷を体験してほしいですね。最後に、映画をご覧になる方々に向けてメッセージをお願いします。

吉田:この映画を観ると、美術館に行ってみたくなったり、絵を身近に感じらることができるのではないかと思います。映画としてはユニークな題材なので是非楽しんでください。

萩原:絵画が題材と聞くと、難しい内容かと身構える人もいるかもしれません。でも、スポ根として本当に熱い作品になっているので、期待してください。


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映画『ブルーピリオド』
8月9日(金)全国ロードショー
眞栄田郷敦
高橋文哉 板垣李光人 桜田ひより
中島セナ 秋谷郁甫 兵頭功海 三浦誠己 やす(ずん)
石田ひかり 江口のりこ
薬師丸ひろ子
原作:山口つばさ『ブルーピリオド』(講談社「月刊アフタヌーン」連載)
監督:萩原健太郎
脚本:吉田玲子
音楽:小島裕規 “Yaffle”
主題歌:WurtS「NOISE」(EMI Records / W’s Project)
製作:映画「ブルーピリオド」製作委員会
制作プロダクション:C&I エンタテインメント
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)山口つばさ/講談社(C)2024映画「ブルーピリオド」製作委員会

《杉本穂高》
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