ウテナ、ガンバ、カリ城…アニメ美術のレジェンド・小林七郎が伝える“絵の本質” 「カメラのレンズじゃない、心の眼で描け!」【インタビュー】 3ページ目 | アニメ!アニメ!

ウテナ、ガンバ、カリ城…アニメ美術のレジェンド・小林七郎が伝える“絵の本質” 「カメラのレンズじゃない、心の眼で描け!」【インタビュー】

『ガンバの冒険』『ルパン三世 カリオストロの城』『少女革命ウテナ』など、数々のアニメ作品の背景美術を手がけ、独自の世界を創り上げてきた小林七郎氏。アニメ美術のパイオニアである小林氏に、書籍「アニメ美術から学ぶ《絵の心》」をベースにお話をうかがった。

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ウテナ、ガンバ、カリ城…アニメ美術のレジェンド・小林七郎が伝える“絵の本質” 「カメラのレンズじゃない、心の眼で描け!」【インタビュー】
  • ウテナ、ガンバ、カリ城…アニメ美術のレジェンド・小林七郎が伝える“絵の本質” 「カメラのレンズじゃない、心の眼で描け!」【インタビュー】
  • 『ガンバの冒険』(C)斎藤惇夫/岩波書店・TMS
  • 『ガンバの冒険』(C)斎藤惇夫/岩波書店・TMS
  • 『あしたのジョー2』(C)高森朝雄・ちばてつや/講談社・TMS
  • 『少女革命ウテナ』(C)1999 少女革命ウテナ製作委員会
  • 『赤いろうそくと人魚』
  • 『赤いろうそくと人魚』
  • 小林七郎氏

■ものづくりは闘いだ


――小林さんの会社ではどのような形でスタッフとものづくりをされてきましたか。

小林:私は美術監督として、社員のスタッフに、この作品はこんな絵面にするよと大枠は決めてそれを伝えます。が、あとはお前ら好きにやれと。
そしてだいたいは彼らの描いたものを採用していくんです。

でも、採用する間の段階で、私なんかすぐに筆をとって横から割り込んで「もっとこうだ!」と彼らの目の前でね、わーっとやるわけですよ(笑)。口で言えずにやってみせるから。彼らはね、「くそ!」と思うし、そのことによって具体的な体験、生なやり方を受け取るわけです。

そういう現場主義でとことん若い奴らと闘いながらやってきました。ずっと繰り返しているうちに、いつの間にかスタッフが育っちゃった。そんな現場の状況が何十年か続きました。でも、そういうやり方はね、他の人はできなかったんです。

――ものづくりにおいて、昔と今と、時代の変化を感じますか。

小林クリエイトするというのは一種の闘いであるはずで、仕事場では技術を通して争って当たり前なんです。でも時代が立つにつれて若者たちが争わなくなった。争いを避けるようになった。私もだんだん社員と争わなくなってきた。これは時代の流れとして大変残念なことだと思っています。

――今の時代は、たとえ技術的なことでも相手と争わないで進める、協調性を重視するという考えが主流になっています。ここで反対意見を出すと相手に申し訳ないと思ってしまうというか……。『あしたのジョー2』を観ていても思うのですが、昔の若者は、どうして“闘い”をやめなかったのでしょうか。

小林争わないのは身を守るためでしょう? 自分のやっていることに対して満足しているかは脇へ置いておいて、お互い馴れ合いで満足する状況というのは、それはもう、ものづくりじゃないんだよ。

お互いに、自分の考えをぶつけて言葉を交わして闘う。それが当たり前という時代があったんです。
貧しい時代は飢えとの闘い。衣食住、生活上の闘いがあり、お互いに必死に譲れない、という生活をしていました。
それがなくなって、いつしか豊かになると同時に若者は闘いをやめたんですね。他人と争わなくていいくらいラクになっちゃった。

――小林さんが生まれ育った頃と環境が違う、ということはありますか。

小林:大きいですねぇー。何もなかった時代ですから。ゼロから何かができあがっていくことの嬉しさがありました。何かやってみる、できてきた、嬉しい、です。

今の日本の商業アニメはちょっと所帯が大きくなり過ぎてしまいました。個人の意志ではどうにもならないことが増えすぎてしまった。
私自身も仕事でそれを目の当たりにした時、この業界から距離を置こうと思ったんです。……今のアニメは、このままでは良くならない。いっぺんやり直すしかない。私はそう見ている。

――どんな活路があると思いますか?

『赤いろうそくと人魚』
『赤いろうそくと人魚』
小林:もう一度「絵本」に戻ればいいんです。一枚の絵である「絵本」をひとつの基準として考えるんです。
アニメは、ひとりでは動かせないということで、セルのキャラクターと背景が分業制で別々なものとして発展してきた。これは本来のあり方ではないんです。やっぱり一枚の絵で、一枚の世界でなきゃあ。

できればひとり、または少数の作家が、お互いに共通点を持ち合って作っていく。個人による映像づくりがこれからの将来に対して何らかの希望となると思います。

――なるほど。絵本の世界といえば、『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』(原題:TOUT EN HAUT DU MONDE(世界の頂点))という、背景とキャラクターが一体化したフランスとデンマークの合作作品が、日本のファンに支持されているという状況もあります。また、今は個人や少人数でアニメを制作して、webの動画配信などで発表する形も増えてきました。


小林:ああ、その方向、それは希望がありますね! ひとつのカラーで統一する。そこには新しい可能性がありますよね。そういう時代になっていくと思います。
少数の気があった、意気込みがあった者が良いと思います。アニメの魅力は、お互いの活かし合いにあるはずです。

――今は、ご自身の絵を描き始めたのですね。

『赤いろうそくと人魚』
『赤いろうそくと人魚』
小林:そうなりますね。それ以降もフランスでアニメの仕事を頼まれたり、自主制作のような形で『赤いろうそくと人魚』を映像化しました。子どもの頃から一度は描きたいと願った絵本の世界を描いています。
絵本作家になるにはもうタイミングを逸してますが、本来のやりかけた、子どもの頃、絵描きになりたいと思ったその夢を、再びやろうと思って今も描き続けているわけです。

『アニメ美術から学ぶ《絵の心》』
2019年8月29日発売
A4横判 160ページ
定価:本体3,000円+税
《渡辺由美子》
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