今作では、家族や友人たちが集い、故人に思いを馳せる伝統的な祝日「死者の日」のメキシコを舞台に、死者の国へと迷い込んでしまった音楽好きの少年・ミゲルと、生者の家族に自身のことを思い出させようと奮闘する死者・ヘクターの冒険が描かれる。
1995年に公開された第1作『トイ・ストーリー』以降、多種多様な舞台とテーマの作品を送り出し続けてきたディズニー/ピクサー。同スタジオは『リメンバー・ミー』でも死というテーマや美しくカラフルな死者の国の情景など、ストーリー・映像の両面で新たな表現に挑戦しており、その変わらぬチャレンジ精神には要注目だ。
そんな本作で、リー・アンクリッチ監督と共に作品を手掛けたエイドリアン・モリーナ共同監督に、本作のインスピレーションの源泉や世界観へのこだわりなど、『リメンバー・ミー』の魅力について語っていただいた。
[取材・構成=山田幸彦]
『リメンバー・ミー』
2018年3月16日全国公開
www.disney.co.jp/movie/remember-me.html
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■死は必ずしも恐ろしいものではない
――死という題材は、世界中の誰もが共感できるテーマである一方、丁寧に扱わなければならない難しさもあったかと思います。どう物語に落とし込もうと考えられましたか?
モリーナ
今作のテーマを決める際、私たちもなるべく慎重に死を扱っていきたいと考えました。そこで、必ずしも死は悲しむべきものではないというメキシコの価値観を作品に取り入れることにしたんです。家族が故人を忘れなければ、死者が生者の家族たちと再会できるというお祭り「死者の日」を扱うことで、今作のストーリーはとてもポジティブで活気に満ちたものになりました。
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――死に加え、本作のもう一つの大事な要素として音楽があります。ミゲルとヘクターが初めて舞台に立つシーンでは、緊張から楽しさへと心境が変化していくミゲルの表情など、歌で自身を表現することの喜びが巧みに演出されていると思いました。
モリーナ
この映画の中での音楽の使い方は、上手い演奏で魅せるというよりは、フォークソングのような自身を表現するという意味合いが強いですね。伝統を伝える役割としての音楽の力に重きを置いているんです。
なので、ヘクターとミゲルが舞台上で目を見合わせながら演奏していくシーンの中では、音楽という媒体を使って自分たちを表現していくことと、そこから生まれてくるものを表現できたと思います。
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――モリーナ監督は、楽曲制作・編曲で本作に携わるジャーメイン・フランコ氏と共に3つの曲を書かれたとのことですが、これまでご自身で音楽を制作された経験があったのでしょうか?
モリーナ
自分だけで私的に演奏することはありましたが、誰かのために作るということは今回が初めてのチャレンジです。今まで培ってきたストーリーテリングの経験を活かしつつ、映像のリズムを意識して曲を書いていきました。絵を描くことやストーリーテリングのテクニックと音楽を書くことは、本質的にはそれほど違いのない行為かな? という気がしましたね。
――共に監督を務めたリー・アンクリッチ監督とはどのように共同作業を進められていたのでしょうか?
モリーナ
お互いに補完しあう関係だったと思います。私のバックグラウンドはストーリーアーティストなので、これまで物語を作り、絵を描くことを中心に作品へと関わってきました。
一方、リーは編集として作品に携わってきたというバックグラウンドがあるので、様々なフッテージやシーンを、より良いものにカットする、さらには音楽・効果音を加えるといったことに秀でています。
本作では、私の方から絵やストーリーといった生の材料を提供し、それを彼がキュレーションしていくという形で作業を進めていました。非常に良いパートナーシップが築けたと思いますね。