日本語吹替版の魅力について、ヒツジのエディを演じている声優の宮野真守さんに話を伺った。アーティストとしても絶大な人気を誇る宮野さんだが、演じたエディは歌うシーンのないキャラクター。しかし作品のどこかに、宮野さんが歌うシーンがあるという。一体どういうことなのだろうか?
[取材・構成:大曲智子]
ヘアメイク:Yoppy(C+)
スタイリスト:横田勝広(YKP)
映画『SING/シング』
2017.3.17[fri]公開
http://sing-movie.jp/
■誠実さとコミカルさ、オドオドした部分もあるエディ
――オリジナル版をご覧になっての感想と、演じられたエディというキャラクターの第一印章を教えてください。
宮野真守(以下、宮野)
「ものすごい作品を見せられたなぁ」と思いましたね。なんてキャッチーで、ポップで、心に響く作品なんだろうと。イルミネーション・エンターテインメントだからこそできる手法がふんだんに盛り込まれている映画。笑いながら泣きながら、声をあげて楽しめる、そんな映画だと思いました。名曲ぞろいなので、音楽だけでもテンションが上がる。まさにエンターテインメントな映画と言っていいと思います。でもそれだけじゃなくて、泣けるところもある。人生頑張ろうって思える作品ですよね。
その中で僕が演じさせていただいたエディは、主人公バスター・ムーンの親友。時にバスターを支えて、意見を出したりもする。しっかり者に見えそうなエディですが、実のところはボンボンで、親のすねをかじって働いていないという(笑)。一癖も二癖もあるキャラクターなので、彼のそんな境遇や心の優しさから役作りをしようと意識しましたね。
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――宮野さんが感じ取ったエディとは?
宮野
バスターに寄り添うかたわら、お金持ちだからこその世間知らず感もある。自分は夢を持っているわけではないので、周りに対して強い意見は言えないし。でも、お金持ちだからといって偉そうにするわけでもないんですよね。バスターのよき理解者として語りかけるところでは、彼の誠実さとコミカルさと、ちょっとオドオドした部分みたいなものが表れている。オリジナル版の俳優さんのお芝居を聴きつつ、そんな解釈で役をふくらませていきました。
――エディに対していい印象を持たれたようですね。
宮野
エディの物語もすごく劇的なんですよね。親のすねかじりで、夢をはっきり持たずに生きているんですが、バスターと一緒に過ごすことによって、友のいろんな紆余曲折を見て感化されるので。
――『SING/シング』は歌が特長的な作品です。エディは歌うシーンはないですが……。
宮野
エディは歌うキャラクターではないので、劇場のオーディションには参加しません。エディとしては歌っていないんですが、スタッフさんたちが「ぜひ宮野さんにも歌っていただきたいんです」と言ってくださって。オーディションでたくさんの参加者が次々と名曲を歌っていくシーンがあるんですが、その中の1人、いや1匹。カタツムリのレイという役で歌っています。本当に短い1フレーズだけ歌っているので、もしかしたら気づかないかもしれないですね。『風立ちぬ(Ride Like The Wind)』(原曲アーティスト:クリストファー・クロス)という曲を歌わせていただきました。もっと歌いたかったなって思えるぐらい、充実したレコーディングでした。
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――エディとして歌えるなら、どんな歌を歌ってみたいですか?
宮野
エディの服装を見ると、実はヒップホップがうまいんじゃないかなと思ってます(笑)。
――ちなみにオーディションのシーンで、他にお気に入りの曲はありますか?
宮野
日本語吹替版、すごいんですよ。セリフだけじゃなく歌まで日本語で吹替えるってなかなかないことだし、これは世界中で日本版だけなんだそうです。もちろん歌詞のやりとりもアメリカのスタッフとすごく密にやりとりして作ったみたいで。その中でたとえばブタのグンターの曲は、レディー・ガガ様の曲に「ブタの~」みたいな言葉にしたり。ラビット3人娘が「お、し、り~♪」って歌うのも、その言葉のチョイスすごいなって思いましたし(笑)。これは僕の勝手なイメージなんですけど、イルミネーション・エンターテインメントの作品ってよく「おしり」って言葉が出てくるなって。ミニオンズはずっと「おケツー!」って叫んでいましたし(笑)。だからラビット3人娘が「お、し、り~♪」って歌ったとき、「イルミネーションだ!」って思いましたよ。
――宮野さんは声優としてオーディションを受けることもあると思いますが、オーディションにはどんな思い出がありますか。
宮野
僕はオーディション苦手です(笑)。緊張感は必要だとは思うんですけど、緊張せずにいられるんだったら緊張しないでいたいですし。子供の頃は、オーディションで自己PRみたいなものをやらされるのが苦手で、うまくいった試しがないですね。声優のお仕事をやっている今も、現場で緊張することは同じですが、緊張の種類がオーディションとはまた違う。この作品に出てくる動物たちは、オーディションで自分を爆発させている。すごいことだと思います。
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