作中で鍵となるのは、東ドイツ軍最強の部隊 “黒の宣告(シュヴァルツェスマーケン)”とあだ名される第666戦術機中隊である。彼らは強力なレーザー照射を行う光線級BETAに対抗すべく、戦術「光線級吶喊(レーザーヤークト)」を駆使し、これに対抗していた。
吉宗鋼紀氏の手によって、『マブラヴ』からはじまった一連の作品群は、一つの世界観からいくつもの物語を紡ぎだし、大きなうねりの中で生きる人々を描いている。『シュヴァルツェスマーケン』もそんなマブラヴ・ワールドに名を連ねる。原作小説を執筆したのは内田弘樹氏。
アニメのクライマックスを前に『マブラヴ』の生みの親でもある吉宗氏と小説『シュヴァルツェスマーケン』の著者・内田氏の対談が実現。二人の本作へかける思いなどを聞いた。
[取材・構成=細川洋平]
アニメ『シュヴァルツェスマーケン』オフィシャルサイト
http://schwarzesmarken-anime.jp/
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■ さまざまなクリエイターが、作品の世界を広げる
―『シュヴァルツェスマーケン』の企画の立ち上がりの経緯をうかがえますか?
吉宗鋼紀(以下、吉宗)
元々『マブラヴ』は、私たちが「世界観ビジネス」と呼んでいる『機動戦士ガンダム』や『スター・ウォーズ』のような一つの世界観をいろんなクリエイターが広げていく、いわゆる「シェアードワールド」のベースを作るために始めた企画でした。その第二弾『マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス(以下、TE)』ではアメリカを舞台にし、日本だけが特別ではない、世界各国のキャラやロボットが主人公たり得る土台を固めました。その次に欧州を舞台に、東西ドイツを中心に描こうと考えていました。
―どうしてドイツだったのでしょうか。
吉宗
ドイツはその外連味や言葉の響きなど非常に厨二的で、一般からミリタリー系まで広いオタクにリーチする国で、『マブラヴ』世界の日本と色々な意味で対比ポジションにあります。歴史的にも二つの大戦のキーになり、冷戦下の東西分断を経ていて、当時、EUの中心になることが予見されていたため、欧州編の舞台には最適でした。西ドイツ軍が舞台の『DUTY -LOST ARCADIA-(※)』の展開は既に決まっていたので、東ドイツを描くなら内田先生しかいないなと。当時、架空戦記小説家だった内田先生に軍事面のアドバイスや設定本の短編小説をお願いしていたので。偶然なんですが、同時期に内田先生からも、ドイツを舞台にしたミリタリー学園企画の提案がありまして。
(※ 欧州連合軍にいる西ドイツの衛士たちを中心に描かれた物語)
―学園ものですか。
内田弘樹(以下、内田)
最初はそうでしたね。『マブラヴ』の世界で、東西ドイツの共同の訓練校を舞台に展開していく物語を考えていました。東西ドイツの学生たちが集められた学園の明るい話からはじまって、厳しい戦いへ展開していくという感じでしたね。
吉宗
とてもキャッチーな印象でしたが、『DUTY』と被る部分もあったので、「内田節ゴリゴリのリアルな東ドイツ戦が見たい」と口説いて、こちらで考えていた東ドイツ企画素案に乗っていただきました。政治や陰謀に翻弄される弱者という要素は『マブラヴ』の大きなテイストのひとつですので。
内田
東ドイツは社会主義国家で厳しい世界ですが、彼らがBETAとの戦争に放り込まれたらどうなるんだろう、というところから話が膨らんでいきました。
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