2016年の「あにめたまご」ではいったいどのような作品たちが生み出されていくのだろうか。アニメ!アニメ!では、「あにめたまご2016」の4作品の監督、プロデューサーらに、作品づくりを通じて得たものを伺った。4回にわたりこれを紹介していく。第1回はSTUDIO4°Cが制作する『UTOPA』、田中孝弘監督に話を聞いた。
[取材・構成=細川洋平]
あにめたまご2016 アニメ!アニメ!特集ページ http://animeanime.jp/special/424/recent/
■ 『UTOPA』
“今から数百年後、地球は6度の大量絶滅“ビッグシックス”を迎えた。人類は空中都市を建設し、絶滅寸前の動物を移住させ種の保存を試みる。やがて、動物たちが進化を遂げるほどの年月が経つ。空中都市で生きる彼らは、まだ見ぬ外の世界へと飛び出していく――。
映画『ベルセルク 黄金時代篇』、映画『マインド・ゲーム』や映画『鉄コン筋クリート』で知られるSTUDIO4°Cが、映画『ハーモニー』でキャラクターデザイン・総作画監督を務めた田中孝弘氏を監督に迎えて贈る作画アニメーション作品。“
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――『UTOPA』の企画の成り立ちをうかがえますか?
田中孝弘監督(以下、田中)
もともと少年冒険ものを作りたかったんです。主人公が外に出て行くような、それによって広い世界観を見せていけるような作品です。また、ファンタジーやSFを表現する映像媒体としてアニメが力を発揮すると思っていました。あとは、普段リアル系作品が主戦場なので、頭身の低いキャラクターをやりたいと思い始めていまして、そういうのが集まって『UTOPA』になっています。
キャラクターも、色々なパターンで作りましたが、子ども向けのデフォルメされたキャラクターであれば、「あにめたまご」の企画で若手を育てるのに、作業しやすいのではと考えました。
――当初の企画ではキャラクターのデザインは異なっていたんですね。
田中 そうですね。頭身も高いし、もう少し動物の要素が強いキャラクターのパターンもありました。
――アニメーターのみなさんへ気を配られた点は何でしょうか。
田中
頭身の低いキャラクターでの芝居づけですね。昔の東映長編のようなアニメでは、頭身の低いキャラクターでも丁寧に芝居をつけていますよね。でも最近のテレビシリーズでは、動きがパターン化してしまっているので、こうしたキャラクターでも深く考えてお芝居させることができますよ、ということを伝えたいと思って指導しました。
――実際に若手アニメーターの成長はありましたか?
田中
何年か原画経験のある人から初めて原画をする人までいます。最初はコンテで求められる最低ラインで満足しているような印象がありました。それは時間などの制約が多い現場に関わっているからなのかも知れません。今回の作品に関わることで、「やりたいものを考えて出せる」ことができるようになったと思います。
――「やりたいもの」とは、どういったものですか?
田中
自分が持っているカットの中で自分が表現したいものは何なのかを自分で知ることです。その時にキャラクターたちはどう思っているのか、何が起きてどうリアクションするのか。「あにめたまご」は作画枚数もかなり使えるので枚数的な制約も少ないですから、そこで自由に考えたものを提示してもらいました。
――自分の意志を入れ込むということですね。
田中
そうですね。だから前半は作業が早かったんですが、後半はみんな考えるようになったので、逆に仕上がる時間も遅くなっていきました。そのおかげでよく画が動いていますね。
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――制作で苦労した点を教えていただけますか?
田中
作画内容は重くはないのですが、会話が長く続くところがあるんです。緊張感を持たせ、キャラクターの芝居やテンポで見せたいシーンだったのですが、新人さんですと「立っているだけ」「口パクだけ」になりがちでした。そこはみんな苦労していましたね。直接「このキャラクターだったらこんなリアクションをとるんじゃない?」とアドバイスしました。
――キャラクターのお芝居はやはり大事なんですね。
田中
そうですね。原画は自分の持っている仕事だけを見てしまうことも多くて、何をやるのかに特化しがちなんですよね。
それよりも、「何のためにこのカットがあるのか」「キャラクターたちはどんな気持ちなのか」から、さらに「作品作りとは」にまで踏み込んでもらいたかったんです。
――本作を観る時に注目すべきポイントはありますか?
田中
エフェクト類がほとんどないんですよ。「あにめたまご」は動画を一万枚以上を使用しなくてはいけないことになっているんですが、通常のアニメで考えるとかなり多いです。これを爆発や煙といったエフェクトで枚数を稼ぐこともできますが、本作はそれをせずに、ほとんどお芝居に枚数をかけています。
――相当絵が動いているわけですね。
田中
はい。でも「ずっとただ動いてる」とか「目立てる」といったカットがなく、自然なお芝居として見られるんじゃないかと思います。『UTOPA』はキャラクターの持つパッと見の印象と、見終わった後の感想がかなり違ったものにしたくて作ってきました。
見てる人がキャラクターと一緒に旅をし、その世界に浸れる作品になったと思います。
――ありがとうございました。
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『UTOPA』
(C)Beyond C./文化庁 あにめたまご2016