「空の青さを知る人よ」は秩父三部作の集大成――長井龍雪監督が「あの花」「ここさけ」経て新作に込めた想い | アニメ!アニメ!

「空の青さを知る人よ」は秩父三部作の集大成――長井龍雪監督が「あの花」「ここさけ」経て新作に込めた想い

超平和バスターズが送る新作アニメ映画『空の青さを知る人よ』より、長井龍雪監督にインタビュー。本作のアプローチと超平和バスターズが貫くキャラクター作りの信念を聞いた。

インタビュー
長井龍雪監督
  • 長井龍雪監督
  • 『空の青さを知る人よ』(C)2019 SORAAO PROJECT
  • 『空の青さを知る人よ』(C)2019 SORAAO PROJECT
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  • 『空の青さを知る人よ』(C)2019 SORAAO PROJECT
  • 『空の青さを知る人よ』(C)2019 SORAAO PROJECT
TVアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(以下、『あの花』)、『心が叫びたがってるんだ。』(以下、『ここさけ』)の超平和バスターズが送る新作アニメ映画『空の青さを知る人よ』が10月11日に全国ロードショー。


過去2作はアニメファンに限らず多くの視聴者を獲得し、特に『あの花』は2011年放送にも関わらず、今でも「泣けるアニメ」の代表格として名が上がるほどの人気作となった。

そんな2作と舞台を同じくする本作は、高校2年生の女の子・あおいが主人公。
彼女の姉で親代わりでもあるあかね、若き日のあかねと恋人同士だった慎之介、そして突然あおいの前に現れた18歳の慎之介“しんの”の4人が絡み合い、人生の岐路に立つそれぞれの心境が生々しくも鮮やかに描かれる。

「リアル」というひと言でくくるのは簡単だが、それでも超平和バスターズが描くキャラクターは作品を追うごとに人間味が増し、どんどん複雑でリアルになっていく。
本作のアプローチについて、長井龍雪監督にお話をうかがうと、超平和バスターズが貫くキャラクター作りの信念が見えてきた。
[取材・構成=奥村ひとみ]

■映画とは「削ぎ落とす」作業である


――アニメーターの田中将賀さん、脚本家の岡田麿里さん、長井監督の制作チーム・超平和バスターズの3作目に当たる本作。まずは着想となったアイデアを教えてください。

長井:最初に田中さんが絵にしてくれたイメージは、ベースを持って古いお堂の前に立っている女の子でした。それが、本作の主人公のあおいです。

――ヒロインをベーシストの女の子としたのはなぜですか?

長井:僕がベースを特集するTV番組を見て「カッコいいなぁ」と思いまして。あおいがベーシストなのはそれだけの理由だったりします(笑)。


――これまでの2作は、『あの花』が岡田さんの企画で、『ここさけ』は田中さんのアイデアがスタートにあったとうかがいました。とすると、順番的に『空青』は、長井監督が企画を先導する心積もりだったのですか?

長井:そんな気は全然なかったです。3人でしゃべっているときは「アイデア出し会議」みたいな堅い感じではなくて、ダラダラと「それいいねぇー」とか「えー?」とか、茶化すような雰囲気で。ベースも、その中で出た断片的な要素でした。

ただ、今回は僕が「空を飛びたい」とひたすら言っていまして、そこに向かってお話を作るかたちになったので、結果的には僕のアイデアを汲んでもらいましたね。


――「空を飛びたい」という欲求はどこから?

長井:そこも「アニメ映画といえば空を飛ばなくちゃでしょう!」といった単純な思考です(笑)。

――「アニメ映画といえば」とおっしゃいますが、本作はキャラクターたちの悩みや考え方が非常に生々しく、アニメというより実写の映画を見ているような気分になりました。

長井:そうかもしれませんね。今回は「映画とはどういうものか」をこれまで以上に強く意識しました。

前作の『ここさけ』はTVアニメの延長に近い考え方で作って、2時間で収めるのがとても大変で反省が残りました。
だから今回は、お話を広げるよりも閉じることを意識したので、それがアニメらしくないと思われるゆえんかもしれません。

――TVアニメと映画、それぞれ作品づくりのアプローチが違うかと思いますが、大事にされていることはなんですか?

長井TVアニメは、ディティールを細かく突き詰めて情報量を増やすことで作品世界を広げていく。それに対して映画とは、2時間という決まった尺の中でどれだけ伝えたいことを残して、他を削ぎ落せるかが大事だと気づきました。

『ここさけ』は、ストーリーやキャラクターの関係に折り合いを付けようとし過ぎてしまった反省があるのですが、本来、伝えたいのは設定ではないんです。

もともと僕ら3人はキャラに寄り添ったつくり方をする性分なので、とくに今作では、ストーリーや関係性をうまくまとめるよりも、キャラが好きに動けることを意識しました。結果は見てくれた人がいろんなふうに受け取ってくれればいいんだ、と。


――『とらドラ!』()から数えると10年以上のお付き合いになりますが、やはり3人での作品作りは特別な感覚がありますか?

※『とらドラ!』……竹宮ゆゆこによる同名小説のアニメ化。2008年に2クールに渡って放送された。超平和バスターズの3人はこの作品を通して出会い、意気投合した。


長井:そうですね。僕達はお仕事を受ける側なので、やりたいと言ってやらせてもらえるわけじゃないですから、今回もまた3人でやれてとても嬉しかったです。

ただ、ふたりの存在がどんどん大きくなっていくので、「ちゃんとついていけるのか」「見捨てられないかな……?」と喰らいついていくのに必死です。


――コンスタントにヒット作を手がけられてきた長井監督ですが、そのように思われていたのはちょっと驚きです。

長井:だからこそ、緊張感もあって楽しい仕事にもなるんですけどね。ふたりとは付き合いが長い分、隠し事も誤魔化しも全部バレちゃうんです。なので本当に全部を振り絞らないと……。
それぞれ別々の現場にいるときでも、やっぱり気になって作品を見ちゃうから、あえて口に出したりはしませんが、「あっちはあんなにすごいんだから僕も頑張らなくては!」と励みになりますね。


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《奥村ひとみ》
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