国内大手のエンタテインメント会社スクウェア・エニックスが、マンガでの中国進出を本格化させる。スクウェア・エニックスはゲームでよく知られるが、「月刊少年ガンガン」や「ガンガンONLINE」などを通じて人気マンガ多数輩出する。マンガ分野でも存在感の大きなプレイヤーだ。今回は中国の大手ネット企業NetEase(網易)と協業して、2015年10月28日より自社マンガタイトルの電子版の中国向け配信を順次スタートする。作品は全て簡体中国語翻訳版となり、タイトル数は63を予定する。日本のマンガ出版社が中国向けに提供する作品数としては過去最大規模である。タイトル数が多いだけでなく、『鋼の錬金術師』『黒執事』『ソウルイーター』『アカメが斬る!』といった大ヒット作が多数含まれているのも特徴だ。また63作品のうち61作品が、今回、簡体中国語への初翻訳となる。スクウェア・エニックスが今回の中国展開に相当の力を入れていることが伝わる。配信はNetEaseが2015年7月にリリースしたマンガアプリ「網易漫画」での提供となる。NetEaseは6億人のユーザーを持ち、その電子書籍配信サービス「網易雲閲読」は8000万人のアプリユーザーを抱える。これは中国最大規模だという。この配信プラットフォームを使うことで、スクウェア・エニックスは中国で自社タイトルの人気を一挙に高めるチャンスとなる。しかも今回は、配信開始から2年間は無料で作品を提供するという思い切った施策が採られる。スクウェア・エニックスは作品認知度の拡大と正規版の普及のためと説明する。これまでにない取り組みは、これだけでない。現在雑誌で連載している16作品については、日本でのリリースと同時配信を実施する。雑誌掲載された最新話をエピソードごとにデジタル化し、発売同日から数日以内に「網易漫画」にて配信する。英語圏に向けには、日本でのリリースとほぼ同時に翻訳版を配信することは、すでに一部の出版社が試みている。しかし、中国向けにこの規模で行うのは例がない。日本マンガの人気が高いにもかかわらず、正規版の流通が遅れている中国市場で、スクウェア・エニックスは先行して市場を開拓する構えだ。市場開拓の視点から見れば、大判振る舞いにも見える同時配信作品も含めた2年間の無料サービスの戦略も理解できる。現状で日本マンガの人気作は、日本での発表から直ぐに海賊版として違法にネット上に流通している。無料の同時配信でこれに対抗するわけだ。これにより海賊版のメリットは大きく損なわれる。同時にスクウェア・エニックスとNetEaseは海賊版対策を積極的に進める方針だ。市場を確実に掴んだ後に、さらなる展開を進めるとみられる。海賊版対策としてはかなり大胆なやりかたになるだけに、国内外のマンガ出版社だけでなく、他のコンテンツ関連企業から関心を集めそうだ。配信予定タイトル(一部)※2015年10月28日より順次公開予定『鋼の錬金術師』 著者:荒川弘『黒執事』 著者:枢やな『ソウルイーター』 著者:大久保篤「うみねこのなく頃に」シリーズ 原作・監修:竜騎士07『PandoraHearts』 著者:望月淳『繰繰れ! コックリさん』 著者:遠藤ミドリ『アカメが斬る!』 原作:タカヒロ、作画:田代哲也[/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]
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