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魔劇「今日から(マ)王!-魔王再降臨-」新米魔王、再び眞魔国へGO!巻き込まれ大冒険

高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 ■ 有利の新米魔王としての試練の物語■ 原作のリズム感をミュージカルに、エンターテイメント性満載のハラハラ、ドキドキの有利の大冒険

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■ 原作のリズム感をミュージカルに、エンターテイメント性満載のハラハラ、ドキドキの有利の大冒険

原作を読んだことがあるファンなら先刻承知であるが、渋谷有利は友達の村田健と共に銭湯に行く。その物語の導入前に客席からキャラクターが登場する。それから銭湯のシーンとなる。懐かしい富士山の描かれた風呂場で渋谷有利と村田健はのんびりと湯船に浸かっている。これから野球の試合を観る、というなんとものんびりした状況だ。
そして例によって湯船から(前回は水洗トイレから)、違う次元の”眞魔国”に流されるのだが、その前にざっくりと”おさらい”がある。ここで原作を知らない観客はちょっと”お勉強”。やたらテンションの高いギュンターがまどろっこしく説明するのを有利がざっくりとわかりやすく”解説”(舞台だけのオリジナルシーン)。ここで、(マ)王初心者は”この物語はかなり可笑しいぞ”とわかる。それから”お約束”の轟音と共に有利が吸い込まれるシーンにつながる。
それからキャラクターが全員登場し、”ひとかけらの夢を探しに行こう”と歌い踊る。これから渋谷有利の冒険が始まる、といった雰囲気、ここは率直に楽しく、ワクワクするシーンだ。そして全く別の”湯船”にたどり着く。そこは、なんと女性用の風呂だったのだが、よく観ると、筋骨隆々の”お姉様”方が……、有利、いきなりのピンチだ(しかもタオル1枚!)。そして今回の有利の”使命”は魔剣”モルギブ”を手中に収めること。なんでも、もの凄い力を持つ魔剣、ここでのナンバーはドラマチック、ストーリーの期待感は上がる一方だ。

原作の小説は、台詞に躍動感があり、展開もスピード感満載、読者をぐいぐい引っ張る文体、会話もやり取りが面白いが、いわゆる”地の文”もユーモアあふれていて、テンポも良い。
この原作のリズム感をミュージカルにのせる。停滞させずに、ポンポンと場面を展開、初演よりダンス、歌、アクションが多い印象。客席前列に花道を作り、物語をより立体的に見せる。原作の長所を最大限に生かした格好だ。アニメ版やコミック版の視覚的楽しさもそこに盛り込み、飽きさせない。

渋谷有利演じる聖也、初演に引き続き2度目ということもあり、元気よく、コミカルに演じきっていた。脇を固める美形キャラも、もう、面白さ満点だ。
無類の猫好きであみぐるみ制作をするグウェンダル(兼崎健太郎)、有利に付かず離れずのコンラート(輝馬)、ロングヘアーをなびかせ、終始テンションアゲアゲなギュンター(小谷嘉一)、婚約者(一方的だが)でちょっとウザい”わがままプー”のヴォルフラム(樋口裕太)、上腕二頭筋自慢のヨザック(進藤学)、皆、美形キャラだが、個性あり過ぎで笑えるし、個々のキャラクターの見せ場もあって観ていて楽しい。異国に来て最初に渋谷有利が出会った人物・アーダベルト(下村尊則)、鼻で笑うところは”お約束”、出番は少ないが、流石の歌唱力。旅の途中で出会う親子ベアトリス(千紗子)&ヒスクライフ(赤星昇一郎)、なんだか訳ありな少年リック(杉江大志)、皆、きっちりと”仕事”しており、初参加俳優陣と2度目の俳優陣、コンビネーションもいい。渋谷有利は正義感・負けん気は人一倍だが、時にはそれが災いすることもある。そんな彼がラスト近く、勇気を振り絞って魔剣を取りにいくところはちょっと感涙。幕切れは花道の端に村田健(輝山立)がいわくありげに佇む。

とりあえず、物語はいったん終了するけど、渋谷有利の冒険はまだ続く、といったエンディングであった。ミュージカル『忍たま乱太郎』等を演出する菅野臣太朗、エンターテイメント性あふれる脚本・構成、王道なミュージカルでは的確に手腕を発揮する。コミックやアニメの面白さを舞台に乗せる、今後もひっぱりだこになるだろう。
楽曲提供のYOSHIZUMIもキャッチーで躍動感のあるメロディで(マ)王の世界を縁取る。アンサンブルもレベルが高く、ダイナミックなフォーメーション。アンサンブルの一人がソロで歌う場面もあり、健闘。トラブル、試練巻き込まれ型の渋谷有利、次回は何に巻き込まれるのだろうか、シリーズ化して欲しい作品である。

魔劇「今日から(マ)王!-魔王再降臨-」
(C)喬林知・KADOKAWA/NHK・NEP (C) 2015魔劇製作委員会
《高浩美》
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