日々、制作されるアニメーション作品の中で、車などのCGが得意とする無機質なオブジェクトから、メインキャラクターに至るまで、CGで描かれるものは拡大している。2015年1月より放送されたTVアニメ「暗殺教室」ではメインキャラクターであるクラスメート26人全員のCGモデルを作成したほか、OP映像をはじめ随所にCGが組み込まれた。作画とCGの融合レベルの高さから、誰にもCGであると気づかれないまま終わったシーンもあったという。そんな話題が9月19日(土)に秋葉原UDX GALLERY NEXTで開催された「あにつく2015」で挙がった。「あにめ業界の歩き方」と題されたトークセッション内でのことだ。ラークスエンタテインメントの奈良岡智哉氏、チーム・ディルドーンの岸誠二監督、ラルケの比嘉勇二氏が登壇し、TVアニメ「暗殺教室」でのCG作画の秘話を語った。TVアニメ「暗殺教室」を制作したラルケはスタジオ雲雀(ひばり)内に結成されたアニメ制作チームだ。また、ラークスエンタテインメントは同じくスタジオ雲雀の3DCG部門が分社化した形で作られた会社である。印象的だったのは「暗殺教室」第1期OP映像だ。岸監督による絵コンテを、奈良岡氏は「3DCGを熟知していないと切れない」と評した。OP終盤にクラスメート全員が右手を挙げてダンスを踊るシーンが出てくるのだが、岸監督はまず“カロリーの高い”このシーンを発注することから始めた。次に3Dでカメラワークを決めることとダンス作画のひな形を決めることを同時に行った。その後、ひな形を除くクラスメート25人の作画を、25人のアニメーターに同じポーズ、同じ作画枚数でそれぞれ発注。効率化を図りつつダンスにおけるキャラクターの個性も実現した。通常1ヶ月かかるOP映像を2週間で完成させた。トークセッション後半はアニメ業界における問題点でもある「収入」に及んだ。ゲストとしてサンジゲンの松浦裕暁代表も飛び入り参加し、かなり突っ込んだ話題を展開した。スクリーン上にTVアニメにおける1話の標準的な予算が示された後、「原画」「動画」「仕上げ」「美術」「CG」「撮影」各セクションの平均収入が示された。奈良岡氏がネットから拾ってきた数字とのことだが、それによると「原画(30カット/月)」の収入は「美術(60カット/月)」の半額、「CG(40カット/月)」「撮影(600秒/月)」の2.5割~3割である(※ もちろん「原・動・仕」はそれぞれ個人事業主となるため、収入の多寡には大きな幅が生じる)。「美術」「CG」「撮影」部門は会社として仕事を請ける。その点が大きな違いとなっている。会社は個人事業主と異なり、定められた最低賃金を支払う義務がある。業界は今後、デジタルがより普及する、というのが登壇者全員の見通しだ。デジタル作画やCGが主流になっていった時に、会社などの組織に入っていないと生き残るのは厳しいのではないかといった意見が出ると同時に、アナログ作画はこの先、廃れるのではなく貴重な技術として価値が上がっていくだろうという意見も出た。そのような流れを体感する登壇者らだが、CG業界は需要に比べて人手が足りていないと話す。最後はラークスエンタテインメントの奈良岡氏、サンジゲンの松浦氏ともに「みなさんの入社、ぜひお待ちしています」とコメントし、静かに熱いトークセッションは締めくくられた。日々進化するデジタルツールと共に、アニメーションの大きな変化を内部から体験していくというのは、おもしろそうだ。[/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載記事]
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