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アニメライター4人が語る「がっこうぐらし!」の魅力とは? 

7月に放送開始したTVアニメ『がっこうぐらし!』。可愛らしいキャラクターに対しシリアスな世界観、「日常もの」に対するメタ的な視線など、語りたくなる要素が満載である。そこで今回はアニメライター4人による座談会を実施した。

レビュー
■ 「終わりなき日常」ではない

藤津 
原作マンガでも「日常もの」の良いところが上手く描かれていたんですが、アニメではさらに際立ってましたね。キャラクターデザインが『たまゆら』の飯塚晴子さんなのでなおさら(笑)。

宮 
飯塚さんのデザインはほんとうに素晴らしいと思います。手首と肩、腰回りの細い感じとか。

藤津 
最先端の日常系のルックでこの物語をやるところにすごく意味があると思うんですよ。

――近年とくに人気の「日常もの」ですが、何故私たちは日常ものを求めてしまうのでしょうか。

前田 
そうですね……。これは一般論として話しますけど、学生さんも社会人も、いまどきは大変な生活を送ってらっしゃるので、「せめてフィクションのなかではユートピアを味わいたい」ということなんじゃないかと。我が身を鑑みてもそう思う(笑)。
そういう意味では、『がっこうぐらし!』ではまさにその構造が、作品世界の中に織り込まれている。「なぜ『日常もの』を求めるか? それは平穏な日常がすでに……」というわけで、『がっこうぐらし!』をよく見れば、わかります!

藤津 
そこに答えがあると(笑)。

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宮 
「日常もの」と呼ばれる作品はたくさんつくられてきたし、前田さんがおっしゃるように、『あずまんが大王』や『ひだまりスケッチ』といった作品が形作ってきた流れはたしかにある。でも「変わらない日常が繰り返される」というフォーマット自体はいくらでもあって、70年代のホームドラマもそうだし、あるいはシットコムなんかもそう。そこに萌え美少女の絵を乗っけているうちに「日常もの」と呼ばれるようになったということじゃないかな、と個人的には思います。
もう少し付け加えるなら、自分たちが過ごしている人生とは別の「日常」が、フィクションのなかでも営まれている。そこには、もしかしたらある種の心地よさがあるのかもしれない。

数土 
まぁ『サザエさん』だって言ってしまえば「日常もの」ですからね(笑)。

宮 
『がっこうぐらし!』が面白いのは、それらをベースにしながらもドラマを描こうとしているところにある。というか、むしろその「日常」が終わるかもしれない、というところにドラマのポイントが置かれているわけでしょう。ざっくり言えば、「日常」というモラトリアムをいかに脱出するのか? が物語の焦点にある。まあ、これは『(うる星やつら2)ビューティフル・ドリーマー』をはじめ、みんなやっていることではあるんですけど。

数土 
「終わりなき日常」ではないんですよね。日常の雰囲気をまといつつ物語はどんどん進行していくわけで。

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――キャラクターに関していかがですか?

宮 
みーくん、良いキャラですよね。もちろん、ほかのキャラも魅力的だと思うけど……。

藤津 
僕の解釈では、アニメではみーくんが実質的な主人公なんだろうなと。『ドラえもん』ののび太と同じポジションです。『ドラえもん』は、ドラえもんが世界観を象徴していて、ドラマそのものを牽引するのはのび太です。『がっこうぐらし!』も由紀というキャラクターが「世界観」を象徴しているのに対し、みーくんがのび太のように葛藤する立場になっていくんじゃないかと。

前田 
だからアニメではみーくんを前倒しして第1話から登場させてるんでしょうね。

宮 
何はともあれガーターベルトですよ。あれを見た瞬間、この子が主人公に違いないと確信した(笑)。

一同 (笑)。

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前田 
あとこの作品、海外のリアクションがすごく気になる。

藤津 
受けるんじゃないかな。

数土 
うんうん、間違いなく受ける。

前田 
もちろん受けるとは思いますよ。ただ僕らは感覚がマヒしているはずなので。日本でも「こんな可愛らしいキャラで、こんな設定の話をやるはずがない!」というサプライズはあったでしょうけど、海外だとそもそも、この設定をこういう絵柄でやるのは、設定と物語のあいだで世界観の整合性がとれてない、って発想になると思うんですよ。
仮に海外でライターが「崩壊した世界の中で女の子たちがゾンビに囲まれて生きる」という設定を用意したら、ペンシラーにはもっと写実的でリアリティのある絵柄を選ぶはずなんじゃないかと。ところが千葉サドルさんの絵は、これで普通の「日常もの」やって欲しいぐらい可愛らしい。海外の人からするとコンセプト段階で謎すぎるんじゃないかと。

藤津 
文脈のないところにどう受け止められるかという話ね。

数土 
ハイコンテクストの問題はありますよね。「日常もの」というコンテンツが海外でどのぐらい根付いているのか。ディープなアニメファンなら理解しているはずですが……。

宮 
ちょっと話はそれるんですけど、先日、ある雑誌で新房昭之監督に取材したんです。そのとき「美少女ものをどう捉えていますか?」という質問に対して、新房監督は、「昔は“美少女とメカ”がアニメの得意分野だったんだ」と。そこから、いつの間にか「メカ」が抜け落ちて、「美少女」だけ残ってしまった。ある時期から日本の商業アニメーションはそういう状況にあって、今はまず「美少女」ありきで考える。むしろ自然に「美少女と何を組み合わせたら面白くなるんだろう?」という発想をしているんだ、と。
たしかに『がっこうぐらし!』も海外から見ればフリーキーなことをやってるんだろうと思いますけど、つくってる側としては自然なことなんだろうな、と思うんです。

前田 
まぁ、さっきはあえて問題提起っぽく言ってみましたけど、正直言って、べつに観てるときにはそんなに違和感はないですからね、僕も(笑)。
《沖本茂義》
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