そんなシリーズの最新作『第3章「告白」』は、全6章で送られる本作にとって前半の大きな山場となる。波乱を予感させるPVは発表から物議をかもし、公開を心待ちにしているファンも多いのではないだろうか。
前編に続き、アニメ!アニメ!編集部のタカロク、インサイド編集部の栗本、ライターの半蔵門アラタ、キャプテン住谷の4人で座談会を敢行。本稿では、その座談会の模様を引き続きお届けする。
[聞き手:タカロク 取材・構成:キャプテン住谷]
『デジモンアドベンチャーtri.』
2016年9月24日(土)2週間限定上映
http://digimon-adventure.net/
■今だから分かる『デジモン』シリーズの取り組み
―ここまで『デジモンアドベンチャー』について話をして、今だから気付いたことってありますか? あの頃の子ども向けアニメって、“大人が作っている感”を見せなかったと思うんですよ。
栗本:
色んなものが詰まってますよね。家族愛や兄弟愛、さっき話題になったネットの話も。
―シリーズは今までに…
住谷:
『アドベンチャー』『02』『テイマーズ』『フロンティア』『セイバーズ』『クロスウォーズ』ですね。
栗本:
『クロスウォーズ』は3期までありましたよね。
―その流れを見ていて『デジモン』はどういう風に変わっていきましたか?
住谷:
『アドベンチャー』だと、人間のパートナーがデジモンを進化させた後って基本的に応援することしかできないんですよね。人間をどうバトルに関わらせるかっていうことは、かなり考えられてきたと思います。『テイマーズ』ではバトル中にカードを使ってデジモンをサポートしたり、究極体に進化する時には一体となったり。次の『フロンティア』だとデジモンに進化するのは人間だし、『セイバーズ』ではパートナーを進化させるために主人公が敵を殴りますよね(笑)。
栗本:
初代と『02』って、極端な話をすると人間側は気持ちの面でしかバトルに貢献できなかったんですよ(笑)。子どもたちが色んな課題に直面して、それを乗りこえるとデジモンがより進化できるんですけど。
―心がシンクロしてるんですね。皆さんがシリーズの中で一番好きな作品はどれですか?
半蔵門:
『テイマーズ』です。
住谷:
どれが好きかって言われると僕も『テイマーズ』ですね。僕自身が結構『デジモンカードゲーム』にハマってたからなんですけど。
栗本:
実は何だかんだ僕も『テイマーズ』なんですよね。ただこれって凄く甲乙付けづらいんですが、初代→02→テイマーズという順番で見たからこそ『テイマーズ』が一番だと感じるんだと思います。『テイマーズ』は初代と『02』で盛り上がった気持ちを昇華させてくれたんです。
―「自分も何かしたい!」みたいな気持ちを?
栗本:
それもあるし、初代と『02』が描いた良い部分をちゃんと引継ぎつつ、新たな要素を加えて面白く仕上げてくれたので。これもアツい作品ですよ。
住谷:
『テイマーズ』はそのタイミングがちょうど良かったんだと思いますね。カードを通して参加することで「僕も何かしたい」っていう欲求が満たされた、みたいな。
半蔵門:
ちゃんと下地があってこその『テイマーズ』ですよね。過去作のオマージュもあったりして。初代だとアグモンがスカルグレイモンになっちゃうじゃないですか。それと同じく、ギルモンがメギドラモンになっちゃって。
栗本:
そうですね。レオモンがレオモンだったりね(笑)。でも、レオモンが一番活躍した作品でもありましたかね。
半蔵門:
パートナーデジモンになりましたもんね。
栗本:
レオモンっていう、どの作品でも死んじゃうデジモンがいるんです。『テイマーズ』でも死んじゃうんですけど。
住谷:
『テイマーズ』だと、ラストまでレオモンの死が影響するんですよ。レオモンがパートナーだった女の子が、レオモンを殺されちゃったことで闇を抱えてしまって、ラスボスがその闇につけ込んで大変なことになるという……。
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―その後の作品にも出てくるんですか?
住谷:
『セイバーズ』にはバンチョーレオモンというキャラが出て来ますね。でもレオモンの宿命からは逃れられなかった……。
―では、シリーズ作品の劇場版についてはどうですか?
半蔵門:
やっぱり細田守監督の『ぼくらのウォーゲーム!』は今見ても面白いですよね。
栗本:
何回見ても良い。TVシリーズだとインターネットが舞台であるものの、結局は異世界なので、あまり現実味がないんです。ヴァンデモンが現実世界に攻めてくる話も、宇宙人が地球を侵略するのと大差ない。ところがですね、『ぼくらのウォーゲーム!』は違うんですよ。デジモンが現実世界に与える影響がめちゃくちゃリアルに描かれているんです。いまだに見てますよ。
―初代だと、もうひとつ劇場版がありますよね。
住谷:
パロットモンと戦うやつですね。テレビシリーズの前日譚になっていて、実はデジタルワールドに行く前にデジモンに出会ってたという話です。
―個人的に、すごく衝撃的だったんですよ。「デジモンってこんな生々しい感じなの!?」って。
栗本:
ゴジラみたいなね。
―それを当時の子どもが見てたんだって。『ぼくらのウォーゲーム!』はデジモンについて何も知らなくても面白いですよね。
栗本:
さっき言ったようにリアルなんですよ。メールを敵に送りつけて動作を鈍らせるとか。
住谷:
光子郎がウーロン茶を飲みまくるんですけど、そんなウーロン茶好き設定が『tri.』にも活かされてたり。
半蔵門:
ちょっと強調し過ぎな気はしたけどね。「しつこいな!」って。
一同:
(笑)
■『デジモンアドベンチャー tri.』発表当時とその公開後
―そろそろ『tri.』の話題に移りましょうか。まず発表された時はファンとしてどんな気持ちでした?
住谷:
泣いた気がします。まさか続編が作られるとは。嘘だと思いました(笑)。デジモンネットワークってご存知ですか?
栗本:
聞いたことはあります。実際に見たことはないんですけど。
半蔵門:
全然分からない……。
住谷:
当時、バンダイが運営していた公式の掲示板で、アニメの感想とかオリジナルの小説とかを載せてファンが交流するサイトがあったんです。僕はそこに入り浸ってて……。
栗本:
ええー。いいですね。
住谷:
それで『tri.』が発表された頃に、何となくそこを思い出して検索してみたんですね。元のサイトはなくなっちゃったんですけど、同じことを思ったのか昔そこにいた人たちが新しく掲示板を立ち上げていて。当時交流していた人たちがメッセージを残していたので、僕もその時に使っていたハンドルネームで書き込むと「覚えてますよ」って返してくれたり。
3人:
へぇー。
住谷:
すごく懐かしかったですね。
半蔵門:
第1章「再会」……。
一同:
(笑)
住谷:
やっぱり、デジモンファンにとってはそういうネット上での交流というか、やりとりが根底にあるんですよね。
栗本:
デジモンっていっぱいシリーズがありますけど、やっぱ初代への思い入れってすごく強くて。新シリーズじゃなくて、『デジモンアドベンチャー』の続編ってところがすごく大きいですね。
―『02』の時は中学生で、『tri.』では高校生。
栗本:
発表の段階では「そうそう、求めていたのはこれだよ」と期待100%でした。
―当初は新作をやるって話だけで、テレビアニメかどうかとかは一切分からなかったんですよね。
栗本:
まさか劇場6作品とは思ってなかったですよね。
半蔵門:
僕は深夜アニメなのかなって思ってました。1クールくらいの。
―実際に第1章を見てどうでしたか?
住谷:
僕はキャストさんの発表を見た時に、キャラの成長した姿と声のイメージがすぐに結びつきました。すんごい上手いことキャスティングしたなと。
半蔵門:
1章を見て、本当にピッタリでしたもんね。
栗本:
実際に作品を見てイメージが変わった人は多いと思いますね。僕も結構半信半疑で見に行ったんですけど、ちゃんと『デジモンアドベンチャー』でした。発表当初は「こんなのデジモンじゃねぇ!」みたいな反応がすごかったですよね。
―特にキャラクターデザインに対する反響が大きかったですかね。
半蔵門:
そこは確かに不安でしたけど、見てみると全然気になりませんでしたね。
―ファンとして嬉しかったポイントはありましたか?
栗本:
いっぱいありますよ。まず、ナレーションが平田さん。第1章は過去作のオマージュというか、ファンが喜ぶ要素がたくさん入ってましたよね。導入部分で太一の部屋が写るんですけど、机の上に置かれている教科書の名前が……
住谷:
「One Vision」!
栗本:
そう、「One Vision」! 他には最初の敵がクワガーモンだったり。
半蔵門:
『デジモンアドベンチャー』第1話と同じですね。
―すごくリスペクトが込められた第1章でしたよね。主題歌も「Butter-Fly」で。
半蔵門:
和田さんが新しく歌われた「Butter-Fly」を聞いて感動しました。
栗本:
後は進化シーンもよかったですね。元からCGが使われていて、当時の水準から見るとクオリティが高かったんですけど、そこもパワーアップしていたな、と。あと演出が『02』の劇場作品である『黄金のデジメンタル』(※)っぽいなって思いました。あの丸っこくなる感じが好きですね。
※2000年に劇場公開された映画『デジモンアドベンチャー02 前編・デジモンハリケーン上陸!!/後編・超絶進化!!黄金のデジメンタル』のこと。ロイヤルナイツの一員であるマグナモンが初登場した。
栗本:
高校生になって選ばれし子どもたちのキャストさんは変わりましたけど、デジモン側が全く変わってなかったのも嬉しかったですよね。
―語り出せばキリがない……(笑)。
(次ページ:第2章「決意」で動き出した『tri.』の物語)