阿部記之監督×西尾鉄也氏 『NINKU-忍空-』対談―20年の時を超えて―前編 2ページ目 | アニメ!アニメ!

阿部記之監督×西尾鉄也氏 『NINKU-忍空-』対談―20年の時を超えて―前編

『NINKU-忍空-』のBlu-ray BOX発売を記念して実現した阿部記之監督とキャラクターデザイン・作画監督を務めた西尾鉄也氏の対談を届ける。

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■ 走りながら作り上げていった『NINKU-忍空-』

―ストーリー構成についても伺わせてください。第1話の冒頭で風助のお母さんがさらわれる時に敵の手首に入れ墨が見えます。それが一年後の放送時にキチンと伏線として回収される。ああいった物語はどうやって作られたのでしょうか。

阿部 
結構昔だから憶えてないなあ……(笑)。原作のテイストはそのまま使いました。ただ連載がまだあまり進んでなかったこともあり、「旅をする風助」など要素は限られていました。
僕が話をいただいた時には「最初から作りましょう」と。製作のフジテレビと読売広告社の方からは「戦後すぐの世界」「敵側である官軍を作って物語を進める」「敵との再決戦となるような話にする」とお題をいただきました。

abesan―物語のゴールを設定してから作り始めたのでしょうか。

阿部 
走りながら作っていきましたね。今だから言えますが、戦争ものにするかロードムービーにするかでいろいろせめぎ合いもあったんです。
当時僕は30歳ぐらいで、戦争ものがやりたかった。ただ人情話としてのロードムービーをやりたいという声もあり、毎週ぶつかりながら作っていったのは憶えています。だからこそいろんなバリエーションのエピソードができたんです。

―西尾さんもキャラクター表を各話ごとに全て作っていったと伺いました。

西尾 
やってましたね。ロードムービーだからエピソードごとに村が変わるんですよ。新しい村の群衆キャラが必要になって、毎週のように傾向を変えて描きました。ネタが無くなるのにね(笑)。
面白いのは阿部監督と僕の想定していた世界観が全く違ったところでしたね。監督はヨーロッパを、僕はアジアの中国とか大陸っぽい泥臭い感じを想定していたんです。おかげでしょっちゅう監督からリテイクを食らいましたが、そのズレがいい化学反応になって不思議な世界観になっていますよね。

阿部 
普段はぴえろのスタジオにいないから、西尾くんがどれだけ苦労してひねり出していたか見てないんです。シナリオもコンテも読んでから描いているのに、上がってくるのはこちらから発注するより先なんです。今考えたらものすごくありがたい事ですね。

萩野P 
西尾さん自身は「そんなことない」っていうけど当時は怖ろしく上げるのが早かったんですよ。

西尾 
デザインという作業が楽しかったんでしょう。その代わり本編にあまり関われなかったのが少し心残りです。

―本編で作画監督として担当された回は15話と50話、“双堂健”名義でも7話を担当されていると思います。

abesan西尾 
3回ですね。あとは『ナイフの墓標』と劇場版。原画は他にもぽつぽつやってます。デザイン作業でいっぱいいっぱいだったんですよ。子どもの頃はテレビを観ながら「キャラクターデザインの人にもっと作監やってほしいなあ」なんて思っていたんですけれど、「ああ、こういうことか。できんわ」と(笑)。

阿部 
そう考えると最初に『ナイフの墓標』をやれたのがよかったんだと思うんですよ。「西尾くんの『忍空』はこういうもんだ」と出せたし、みんなの共通認識、方向性としてちゃんと「西尾流の絵と世界」にもっていけたので。

西尾 
ありがたい話です。

後編に続く(6月26日アップ予定)

「NINKU-忍空-」 Blu-rayBOX 公式サイト

http://www.ninku-box.com/

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左)阿部記之監督、右)西尾鉄也氏
《細川洋平》
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