――短編作品ですが登場人物が非常に多いですよね。
新井監督
本来は生徒たちみんなの群像劇がやりたかったんです。ただ、主人公である東シュウイチと西条ケンタの関係を見せる上で邪魔になってしまうという意見があり、個々のエピソードはカットすることにしました。僕としてはクラスメイトの子たちをもっと描きたかったのですが、今回は二人の友情の物語を見てもらえればいいなと。
そのためにノルダというキャラクターも、ケンカした二人を動かすキッカケとしての役割に重きを置いています。それこそ女の子ではなく不思議な精霊のようなキャラでもよかったんです。
――しかしノルダはヒロインとしても魅力的に表現されていますよね。とくに東とのファーストコンタクトの場面は驚きました。
新井監督
はじめは東とノルダが出会うシーンはまったく存在していなかったのですが、途中であの場面が思い浮かび、これならインパクトを出せるだろうと一番最初に持っていきました。それに「少しエッチなシーンも入れたいよね」と企画の段階から話していたんです(笑)。もちろんそれだけではなくて、ノルダがあの格好をしているのもちゃんとした理由があるんですが……。
――そこはスクリーンで確認してもらうことにしましょう(笑)。石田さんのキャラクターデザインは、新井監督がこれまで関わってきた作品に比べると少し大人っぽい仕上がりです。
新井監督
僕が最初に作ったジブリ美術館の短編『たからさがし』(2011)は線がシンプルで丸っこい感じのキャラクターでした。スタート地点がまずそこにあったので自然と柔らかい感じの絵を描いてきましたが、新しいものに挑戦したかったこともあって石田君にキャラクターデザインを担当してもらいました。
『ノルダ』を描いていると次第に慣れてくるもので、今では『アオシグレ』を見ると「ずいぶん丸っこい絵を描いてるなぁ」と違和感を覚えてしまうぐらいです。キャラを見る自分の目もどんどん変わってきていますね。
――『ノルダ』と『アオシグレ』は同時上映されるので、その違いも見所になりそうです。
新井監督
僕だけでなくコロリドがこれまでもやってきた作品も、頭身の低いキャラがメインのものが多かったんです。そのため『ノルダ』を制作することで、スタジオ全体のスキルの向上にも繋がるだろうとも考えました。やはり小さな子供向けの絵柄だけではなく違った方向性も目指していきたいと思っています。
今後はスタジオ4°Cのようにアート寄りの絵柄だったり、そういった方向性にも誰かチャレンジして欲しいですね。僕には無理ですけれど(笑)。でもコロリドだからこそできることが絶対にあると思うんです。
――若いスタッフが集まっているスタジオコロリドですが、その強みとは何なのでしょうか?
新井監督
手を挙げればチャンスを与えてくれるところに魅力があると感じています。そこには責任が生じますし、お金を生み出さなければならないので難しいことなのですが……。ちゃんとお金を稼いだ上で、若い人たちに機会を与えることができる場所って少ないじゃないですか。そこはコロリドだからできているのだと思いますし、これからもそうありつづけて欲しいですね。