本作で監督を務めるのは、『カンフー・パンダ』(08)で熱いアクションとユニークなキャラクターを描き切ったマーク・オズボーン氏。自身も敬愛する『星の王子さま』のアニメ化に挑戦したマーク監督だが、一度はアニメ化のオファーを断ったという。
「あの本は、詩、ポエムみたいなものなんです。つかみどころがない。本を傷つけてしまうのがいちばん嫌だった。だから最初は映画化は無理だと思っていたんです」
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そんなマーク監督だが、なぜ映画化にチャレンジしようと思い至ったのか?
「もちろん最初は怖かった。あまりにも有名な作品だし、わたしにとっても想い入れが深い本だったので。でも『だからこそ自分がやるべきなんじゃないか?』という葛藤もあって。そこで思いついたのが、本を傷つけることなく中核に置きながら、その外郭に別の世界をつくる。そうしたら成り立つのではないか? そう前向きに捉えました」
この映画で『星の王子さま』の物語は、母の言いつけで勉強に明け暮れる女の子を主人公にして、かつて王子と出会った飛行士の老人から語り継げられる形で描かれる。王子の物語はもちろん、女の子と飛行士の温かい交流も見どころのひとつだ。
「最初に浮かんできたのは、星の王子さま女の子が手をつないでいるイメージでした。さらに女の子が飛行士と出会って、温かい関係が生まれていく。そうした人間的なつながりを描けるといいなと思いました」
また本映画ではふたつの異なったアニメーションスタイルが採用されている。女の子と飛行士が交流する現実世界は3DCGで描き、原作の王子の物語は昔ながらのストップモーションで描く。これにより原作の空気感を損なうことなくアニメーション化を実現する。3DCGとストップモーション、ふたつのアニメーションスタイルを採用した理由をマーク氏はこう語る。
「いろんな技法をミックスさせて自分の表現を広げる。そういうことをいつも意識しています。むかし、僕が通っていたカリフォルニア美術大学で『あらゆるテクニックを使いこなしなさい』と教えこまれました。違うテクニックやフィーリングを衝突させると新たな面白さが生まれるわけです。本作でも王子さまの世界はストップモーションで描き、対称となる現実世界は3DCGで描こうと思いました。結果的に良いコントラストとなりましたね」
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前作『カンフーパンダ』では大手スタジオ、ドリームワークスのもと見事なアクションを映画を完成させたマーク氏。だが本作ではスタジオを新たにし、内容も詩的なものとなる。作品づくりの感触も違ったのだろうか?
「やっぱりスタッフが違ったというのがいちばん大きかったですね。『カンフーパンダ』はスタッフはみんなアクションが上手い人だった。対して『リトルプリンス』は詩的かつセンシティブな映画なので、繊細な表現が得意なスタッフに集まってもらいました」
さらに3DCGでこだわった点をこう語る。
「キャラクターの表現ですね。細かい演技だけど、細かいニュアンスまで伝えること。それに尽きます。なんでも分かるような大げさな表現はしないで、繊細な芝居で見せようと。最先端のテクノロジーや優秀なアニメーターのスキルがそれを可能としています」
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「作品の解釈はすべて観客に預けるという姿勢でつくりました。決して押し付けるような映画ではありません。友だちと一緒に観に行って『僕はこう思ったんだけど』『いやいや違うよ!』とディスカッションしてほしい。それがいちばん欲しいリアクションですね。やっぱりお客さんにすべて説明してしまう映画はつまらない。原作にも不透明な部分があるでしょ。でも、それが味になってる。映画もそうあるべきだと思ってつくりました」
またマーク氏は、クリエイターとして宮崎駿監督に多大な影響を受けたと語る。そのうえで日本のアニメファンへアピールの言葉を届けた。
「アニメファンがつくった映画なので、日本のアニメファンの方もきっと気に入ってもらえると思います。優秀なスタッフが心をこめてつくっているので、映像的な美しさや芸術性があります。そういった部分をお楽しみに、ぜひご覧ください」
[取材・構成:沖本茂義]
『リトルプリンス 星の王子さまと私』
2015年11月は3D・2D全国ロードショー
http://littleprince.jp/
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