岡田麿里インタビュー:「M3~ソノ黒キ鋼~」(シリーズ構成)後編 “中二病っぽさは求められると逆に逃げる” 2ページ目 | アニメ!アニメ!

岡田麿里インタビュー:「M3~ソノ黒キ鋼~」(シリーズ構成)後編 “中二病っぽさは求められると逆に逃げる”

『M3~ソノ黒キ鋼~』インタビュー後編では、岡田麿里にとっての「ホラー」の原体験や、この作品ならではの制作過程、佐藤順一監督とのやりとりを伺い、これから少年少女たちが向かっていく先を語ってもらった。

インタビュー
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―アニメ!アニメ!(以下、AA)
インタビューなどを読むと、佐藤さんは「岡田さんの中二病を引き出しました」というようなことをおっしゃっていますが……。

―岡田麿里(以下、岡田)
個人的には、そこは悩みつつの作業なんです。中二病っぽさって、求められると逆に逃げていくものなんだなと(笑)。むしろ、佐藤さんのほうがうまくハマッている印象があります。最初は佐藤さんがすごく中二病っぽいことを言おうとしていて「……無理してる!」と思っていたのですが、最近だんだんナチュラルにそういうことをおっしゃるようになってきて(笑)。
ただ、佐藤さんの良さはやっぱり別のところにありますね。1話でアカシが少女マンガ方向の「壁ドン」をするところが出てくるんですけど、私はこれまであまり書いたことなかったんです。ただ『ヴァンパイア騎士』のとき、佐藤さんが絵コンテを担当された回で、シナリオには「女の子を抱きかかえてベッドの上に押し倒す」と書いたのに、できあがったものを見たら、女の子をベッドの上にドーンと放り投げていたんですよ。「まさか!」と思って(笑)。あの興奮を、「壁ドン」で再び味わいたいなと。ヤング顔負けの突破感と、人生経験を重ねたところでのねちっこさをかねそなえているのも、佐藤さんの面白さだなと思います(笑)。

―AA
「壁ドン」は案外さらっとしていましたね(笑)。

―岡田
ちょっと残念でした(笑)。今回わりと激しいシーンがあると思うんですが、佐藤さんから出たアイデアがかなり多いんですよ。他のライターさんに渡す発注メモなどを読み返してみても、自分で書いたはずなのに、意外と私っぽさの少ない作品になっていると思いました。佐藤さんの影響を受けつつ、自分自身の出し入れという意味では、これまでと違う形でやっている印象があります。

―AA
シナリオの枚数も少なめなんですよね。

―岡田
最近のアニメは1話あたり73枚から78枚あたりが普通で、枚数を多めにするぶん、話のスピードを早くして畳み掛けるような展開をするんです。起承転結の「起承」で終わったり、「起転」となったりして、それで「結」がなくて次の話数がまた「起」で始まっても許される。「話数ごとのパッケージ感」がそこまで求められてないんですよね。
でも、佐藤さんはいつもそれを死守している。この作品は1話あたり68~9枚以上はいかないでくれと言われていて、佐藤さんの作品らしく演出や間尺で雰囲気を出しているのですが、そのなかでも各話ごとのパッケージ感がきちんと出るように心がけています。

―AA
やはり構造としては、佐藤監督らしさがあるんですね。

―岡田
すごく分かりづらいと思うんですけど、佐藤さんのこれまでの暗くないアニメと、組み立て方はそんなに違ってはいないんです。変わった作品ではあるのですが、やはり佐藤さんの作り方はすごく基本がしっかりしているんですよね。
最近のアニメと比べると「ここはきちんと説明すべき/ここは説明しなくても大丈夫」というポイントが微妙に違っているし、人間関係でも「ここは掘り下げる/掘り下げない」のジャッジが独特で。上に乗っているものが全然違うので、見え方も違うと思うのですが、佐藤さんの考える土台が骨太で、だからこそ微妙な違和感につながっているのが面白いと思います。

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―AA
さて、物語では無明領域の番人「躯」の唄を聴いたものが死亡し、それに対抗する手段としてアカシは「死神」とも呼ばれるマヴェス「アージェント」に乗り込んで戦い始めました。今後、彼らは何を目指していくのでしょうか。

―岡田
8人の少年少女は目的のはっきりしないまま集められたとはいえ、このちょっと異常な世界で生きている以上「やるしかない」という状況に追い込まれていきます。これから先は、一緒にいる人たちを思いやるなかで<「躯」に対抗する>という構図がどんどんはっきりしていきます。
こう言うと、すごくシンプルな話なんだけど、シンプルにはいかない。逆に、変わった話なんだけど、オーソドックスなところもすごくある。そこが、独特なんですよね。

―AA
最後に、久々に佐藤さんと組んでみていかがでしたか。

―岡田
なんだかんだいって『ARIA』のころから、佐藤さんのことを「ああ、かなわない大人っているんだな」と、今よりまだ多少若かった私は思っていたんです(笑)。答えは佐藤さんの中だけにしかなくて、そこにひたすらぶつかっていくしかない感覚。それが今、佐藤さんが同じ目線で「考えてよ」とか、「こういうこと考えたんだけど、なんとかしてくれない?」と言ってくださるのは、やっぱり嬉しいですね。でも、どんなに私が足掻いても、結局は佐藤さんの世界になっていく。これは、河森さんに対しても持ったことのある感情なんですけど、悔しいなぁって思いながらも燃えますね(笑)。
でも、イキイキしているサトジュンを見ているのは楽しいし、一緒に作品を作っていけるのはとてもありがたいことだと思っています。今後の展開も、ぜひ楽しみにしていてください。

fd

『M3~ソノ黒キ鋼~』
/http://m3-project.com/

Blu-ray<初回限定版> 定価: 7500円+税
DVD<初回限定版> 定価: 6500円+税
発売日: 2014年8月2日(土) (共通)
《animeanime》
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