佐藤順一監督インタビュー後編 『M3~ソノ黒キ鋼~』、ばらまかれたピースをはめる岡田麿里にビックリ | アニメ!アニメ!

佐藤順一監督インタビュー後編 『M3~ソノ黒キ鋼~』、ばらまかれたピースをはめる岡田麿里にビックリ

いよいよクライマックスとなる『M3~ソノ黒キ鋼~』、佐藤順一監督インタビュー後半は、本作における創作の秘密を語っていただいた。

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監督・佐藤順一×シリーズ構成・岡田麿里×メカデザイン・河森正治によるテレビシリーズ『M3 ~ソノ黒キ鋼~』がいよいよクライマックスとなる。ハイセンスなメカニックと岡田麿里の個性満載のストーリー、そして佐藤順一監督の演出のフィナーレはどこに向かうのか?そして、それはどうやって作られているのか?
佐藤順一監督インタビュー後半は、本作における創作の秘密を語っていただいた。
[取材・構成:細川洋平]

『M3~ソノ黒キ鋼~』
/http://m3-project.com/

■ ばらまかれたピースが次々とハマっていく、驚きの体験

佐藤順一監督(以下、佐藤) 
実は『M3』は、当初の予定よりも放送が大きく前倒しになったんですね。設定などもさっき話した「無名領域」から「無明領域」に変えたり、「では無明領域とはどういうものか」と考えはじめたくらいの段階、メインのメカもどういう戦い方ができるか決まっていないのに1話を作らないといけなくなった。岡田さんにはできる範囲でとにかくいろんな部品を揃えてもらって、あとで理屈付けしていく方向にしたんです。
『M3』はSHIROBACO(※)という阿佐ヶ谷にあるイベントスペースで毎週先行上映会を行っていて、何度かゲストとしてコメンタリートークに出演したんですが、物語序盤で何を聞かれても、決まってないので「伏線です」としか答えられない。
第1話では「入ると精神状態がおかしくなる謎の領域」ということしか決まっていない状態だったので。そんな中で出してもらったもののフィックス(意味づけ/伏線回収)が、例えば話数が進んでいったときに果たしてうまく行くのかは賭けでしたが、このフィックスがものすごくうまく行くんですよね。これが驚きの体験でした。
(※ 阿佐ヶ谷アニメストリートにあるアニメコラボカフェ・イベントスペース)

―「この作品は伏線の回収が丁寧だな」と第13話を見ながら思っていたんですが、話を伺いながらそれを思い出しました。
印象的だったのは、「アカシの笑い」についてです。序盤で、兄の死を聞いた主人公アカシがニターッと笑っている、というちょっと不気味なシーンがあるんですが、第13話で、その笑いが、深い悲しみや涙を堪えるための彼なりの自己防衛の方法だった、ということがわかるんです。

佐藤
「そうだったのか!」が、どんどん出てくるんですよね。アカシのあれは、岡田さんと電話しているときでしたね。岡田さんが、「わかった! 佐藤さん、あれ泣いてたんですよ!」って急に言い始めたんです。彼女の中でピースを見つけたんでしょうけど。「え、今!?」って(笑)。

―笑っているシーンから、カメラはずっと回っていて、第13話で、初めて彼が泣き出すまでカットが続く。時間軸をちょっとズラすだけで人に対する見え方はこんなに変わるんだ、と思いました。

佐藤 
そうなんです。実際物語も「彼は泣いていた」ということがわかったことで、後半の話がぐわーっとできあがっていったような感じです。
その他のフィックスでいうと、脚本の後。コンテや、アフレコ中にも見えてくるものがあるわけです。そこでシナリオになかったシーンを入れたり、コンテチェックをしながら繋がりを発見して絵を入れていく。後半に行くにつれてどんどん膨らんでいきましたね。放送が早まったおかげで、ある意味ライブ感覚で作ったような感じですが、恐ろしいくらいピースがハマっていくので何ごとかと自分でも思います(笑)。これは終わってからじっくり研究したいところですね。

abesan■ 佐藤×岡田のガチバトル

―最終話が放送されるまでにまた新たなピースがはめられる可能性もあるということですね。

佐藤 
そうですね、23話まできて“躯”が“骸”ではない理由がやっと判ったところですしね。特に、第23、24話は脚本を岡田麿里さん、絵コンテは両方とも僕がやっているので、絵コンテができてみないと何がどうなるかわからないです。

―おお、ガチバトルですね。

佐藤 
そうなんですよ。岡田さんに「何でこうなったんだ!」って言われて取っ組み合いになるかも知れない。「脚本と全然違うじゃねえかよ!」「だってしょうがないだろ~!」って(笑)。

―ガチンコの取っ組み合いに(笑)。

佐藤 
でも真面目な話、お互いに忙しくなってしまって、この作品に関して、ちゃんと岡田さんと話をする機会も作れなかったので、終わったタイミングで「どうだった?」って話ができたらなあと思っていますね。
《細川洋平》
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