―本作で、改めて佐藤監督ご自身の演出の特徴というものは何か実感されたりしましたか。
佐藤順一監督(以下、佐藤)
そうですね、まず反省点というか、にじみ出るなと思ったのは見せ方の文法です。第1話のコンテでは『ARIA』や『たまゆら』の文法が残っていて、例えば10秒くらいの止めカットを普通にいれてるんです。でも、完成版を見て、やはり『M3』では10秒の止めはキツいんだなと実感しました。
あと、気づいたことで言えば、東映的な血がやっぱり自分の中にあるんだなーって感じたことですね。見せ方が『聖闘士星矢』っぽい。カッコいいところは縦にパンしちゃうんですよ。これ、やっちゃうんだよな~(笑)。
―特に意識されたことや挑戦されたことはあったのでしょうか。
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毎回挑戦のつもりでどんな作品も作ってますが、今回あえて言うなら、岡田さんや河森さんにストップをかけず、自由にやってもらった、ということでしょうか。
例えば、主人公機『アージェント』の変形する途中の段階に、かわいいヒヨコみたいな形態があるんですけど、河森さんが「かわいいロボットはあんまり需要がないのでデザインしない」と言っていたので、あえてやってもらいました。
岡田さんに対しても、一切制限せずに書いてもらって、こっちが受け皿になろうと考えてましたね。何と言いますか、新人監督では難しいことも30年やってきてる僕ぐらいが「いいよ」と言えば通るんですよね。だからできるだけ「くそぉ! もっとはっちゃけたい!」と燻ってる若い人は引き上げたいなとは考えてます。同じくらいのキャリアの監督さんはそういうことをだいたい考えていると思いますけどね。まあ岡田さんは自力でこの位置まで来てますから、大して力になれてないかも知れませんが。
―ありがとうございます。最後に、いよいよ作品はクライマックスを迎えます。ひとことメッセージをいただけますでしょうか。
佐藤
プロセスは紆余曲折を経てきましたが、最後の最後の着地点は当初から強く心に決めていたものです。半年間かけて作ってきた『M3』がどう締めくくられるのか、登場人物たちはどうなるのか、どうか最後まで見届けてもらえたらうれしいなと思っております。
また、次の作品はひとまず黒くないモノをやると思いますが、また機会があれば黒いモノにもチャレンジしたいとも思っていますので(笑)、今後とも、ぜひぜひ期待していただければと思います。
『M3~ソノ黒キ鋼~』
/http://m3-project.com/