まず冒頭で、アニメスタジオが実際の場所をモデルにアニメ制作に取り組み始めた背景が語られた。山本監督によれば「リアリティ」を追求してとのことだったという。 アニメは、背景をつくりあげる上で美術設定を示す必要があるが、ビル一棟、道一本の設定をつくるだけでも、非常に大変なのだという。たとえば電柱。一見簡単に見えながらも、美術設定がロケ無しに設定のみを提示すると背景担当が描いてくる電柱には、電線が抜けているという場合もあったという。また、塀の高さが異常に高くなっていたりということも多かったと山本監督。 このような現状を鑑み、当時在籍していた京都アニメーションが元請けをはじめた際、アニメをそこから変えていこうと方針を固めていったとのことだ。ロケハンで写真を集め、それをもとに背景を描いていくという流れの確立だ。これは『フルメタルパニック? ふもっふ』や『フルメタルパニック! The Second Raid』そして『Air』の時代から既にはじめていた。 つまり、この頃から、現実に即したリアルな設定をアニメ作品に反映させようとしてきたのだ。原作者にまず、どの場所を想定して作品づくりをしたか確認し、その場所を実際に作品内に取り入れていくことにした。山本監督はこれを「原作準拠の原則」と説明。原作に可能な限り忠実にしようとすることで「あたかも現実のその世界にキャラクターが息づいているという疑似体験をしてもらいたい」との考えのもとに取材を増やしていくことになったのだ。