作品を海外に展開する上でぶつかる“モヤモヤポイント”とは? ドワーフスタジオ・岡田由里子氏が解説 | アニメ!アニメ!

作品を海外に展開する上でぶつかる“モヤモヤポイント”とは? ドワーフスタジオ・岡田由里子氏が解説

『海外に作品を展開するための手法を学ぶ』のセミナーが開催。株式会社FIELD MANAGEMENT EXPAND ドワーフスタジオ プロデューサーの岡田由里子氏、株式会社アスラフィルム代表の望月重孝氏が登壇した。

イベント・レポート
注目記事
作品を海外に展開する上でぶつかる“モヤモヤポイント”とは? ドワーフスタジオ・岡田由里子氏が解説
  • 作品を海外に展開する上でぶつかる“モヤモヤポイント”とは? ドワーフスタジオ・岡田由里子氏が解説

10月17日に『海外に作品を展開するための手法を学ぶ』のセミナーが開催。株式会社FIELD MANAGEMENT EXPAND ドワーフスタジオ プロデューサーの岡田由里子氏が海外との交渉における“モヤモヤポイント”について語ったほか、株式会社アスラフィルム代表の望月重孝氏が海外からの制作受託からみえてきたことを紹介した。

本セミナーは、世界で活躍したいアニメクリエイティブに関わる人材を支援したいと、東京都が実施しているもの。東京には独自性があり質の高いアニメーションを制作する会社等が多数存在しているが、その多くは海外における知名度が高くないのが現状。東京都はそんな会社の海外展開を促進し、アニメーション産業の振興を図るために「Tokyo Anime Business Accelerator事業」を実施。本セミナーはその一環となる。

■岡田由里子氏の経歴、そこで出会った“モヤモヤポイント”とは

岡田氏が在籍するドワーフスタジオは、どーもくんやこまねこ、ミドすけなど様々なキャラクターを生み出した、コマ撮りを得意とするアニメーションスタジオ。活動は映像コンテンツだけでなく、キャラクター開発、TVCMなど多岐にわたり、今年20周年を迎える。

ドワーフスタジオに関わる以前は、権利を運用する側にいたという岡田氏。数多くのキャラクターのライセンスを版権元とやりとりしていたそう。海外の有名なIPを二次利用する際に必ずぶつかるのが、市場の違い。どういった販売アプローチが好まれるのか、理解し合うのが難しく当時はモヤモヤしていたとのこと。その経験から、今は海外に公開するときのことを想像し、パートナーの言い分に耳を傾けることを大切にしていると語る。

その後、映画配給会社へ。海外の映像マーケットに行って版権を持つ世界中の会社と話す中でぶち当たったモヤモヤポイントは、わかりやすいキーワードの必要性。知名度、実績、個性的な特徴などで作品の価値が決まってしまう。面白い作品を発見したとしても、買ってくれるパートナーを見つけるためには“わかりやすい何か”が必要だと語った。アニメでいうと、「強烈なメッセージ性」「今まで聞いたことのない設定」、それでいて「万人受けする切り口」などが求められてくるという。

さらに別会社へと移り、海外アニメ専門チャンネルの編成・番組購入・日本語版制作を担当。ローカライズが作品の人気を左右するため、オリジナルの面白さを活かしながら、日本の視聴者に一番良く伝わるところを探る作業が重要に。日本の作品が海外に紹介される際も同様。海外のパートナーがしっかりローカライズしてくれるのか、後々のモヤモヤになってしまわないためにおさえておくことが重要だと語った。

その後、ドワーフスタジオに参加。これまで海外の作品を日本で展開するための仕事に就いてきたが、初めて作品を海外に発信する側に立つこととなった。

■海外に作品を発信する上でのモヤモヤ、その解消法は?

ドワーフスタジオでは、既存作品の欧米化に挑戦。こまねこの米国AMAZON版『ワクワクこまちゃん』(パイロットシーズン)ではキャラクターデザインの変更、セリフ有へのシフト、脚本・音楽担当に欧米人を採用した。またオリジナル自主企画『モリモリ島のモーグとペロル』を手掛けたほか、『リラックマ』初の映像シリーズは2019年4月よりNetflixで190ヵ国にて独占配信がスタート。2022年の第2弾『リラックマと遊園地』は「国際エミー賞キッズアワード」にノミネートもされた。

こうした作品を担当する中、日本以外の会社や担当者と取引する上で向き合わざるを得なかったモヤモヤポイントについて語った。1つ目は「言語の壁」。地域によって違う英語の癖があるため、書き取りによるRECAPの確認が重要であること。2つ目は「商習慣の壁」。決裁までのプロセスや関わる人数の違い、担当者変更、補助金の有無、時差があるMTGの設定、翻訳疲労などがあるという。3つ目は「ゴール設定」。何を海外のパートナーに求めるか、企画をそのまま売り払う覚悟とその値付けはあるか、これらのプライオリティの整理ははっきりしておくことで機を逸しないで済むと話した。

それと同じく、「相手のニーズ」をわかっておくことも必要。その時、その地域、その立場で相手は作品や企画に何を求めているのか。自分の企画をどこまでそれにチューニングするべきかが重要となる。

最後は「テンポ」。ドワーフスタジオの作品は欧米のプロデューサーなどから「ゆったりしすぎ」と言われることがあるが、こうした際に、相手国の好みに合わせるのか、オリジナルをキープするかは重要な判断どころ。その作品を海外でどう育てていくかに関わるポイントなので、日本以外で人気の作品をよく見て知っておくことも大事だと力強くアピールした。

セミナーの最後は、株式会社アスラフィルム代表の望月重孝氏が海外からの制作受託からみえてきたことを紹介。アスラフィルムは、STUDIO4゜Cにて『鉄コン筋クリート』や『デトロイト・メタル・シティ』のアニメ制作を務めた望月氏が2013年11月にデジタルアニメーション撮影の会社として設立。今年で設立10周年を迎える。

望月氏はこれまでの海外の経験を写真と共に面白おかしく振り返ったほか、セミナー参加者からの質問を中心に進行し、海外進出を狙う参加者たちのモチベーションを上げていた。

《米田果織》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集