そんな『クリィミーマミ』は、魔法少女モノの新たな表現を切り拓き、アニメ史上でも重要な位置を占める。また、アニメーション制作を担当したぴえろにとっても、創業期の転換点となった大切な作品である。
ぴえろの創業者(ファウンダー)である布川ゆうじ氏に、『魔法の天使 クリィミーマミ』の誕生の秘密、当時のスタジオの様子などを伺った。
[取材・構成: 藤津亮太]
「魔法の天使 クリィミーマミ Blu-rayメモリアルボックス」特設ページ
/http://mami30th.com/bd.html
■ 魔女っ子ものに新しいラインを
――『魔法の天使 クリィミーマミ』の誕生の秘密をうかがいたいと思います。そもそも『マミ』の企画はどうやって生まれたのでしょうか。
―布川ゆうじ氏(以下布川)
魔法少女シリーズというと、今でも『プリキュア』シリーズなどが継がれていますけれど、東映アニメーションさんの『魔法使いサリー』から始まる定番の路線があったわけです。そこに対して、もうちょっと毛色の変った新しいラインが作れないかと玩具メーカーさんが考えたのがスタート地点ですね。玩具メーカーさんも当時は景気がよかったのでしょう(笑)。
我々の仕事というのは、スポンサーなくしては成立しないものですから。具体的には、広告代理店の読売広告社から声がかかって企画が始まりました。
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―布川
読売広告社は、新しい魔法少女のラインということで、その前に葦プロ(現・プロダクション リード)と『魔法のプリンセスミンキーモモ』を展開していました。その次の企画として、うちに声をかけてくれたのです。
当時、ぴえろは'81年から始まった『うる星やつら』がヒットして、制作プロダクションとしてキャリアアップをしたタイミングでした。そういう勢いを次の魔女っ子シリーズに入れたいということでした。
――具体的な番組内容というのは、どうやって決まっていったのでしょうか。
―布川
そのあたりは30年もたっているので、だいぶ記憶があやしいところもあるんですが(笑)、玩具サイドはあくまで玩具の提案だけで、世界観や設定は全部こちらで作りました。意識したのは上品さ。自分の娘に玩具を買ってあげてもいいな、と思えるような(笑)作品にしたかったんです。
たとえば『マミ』は主人公の優の青緑色の髪や、マミの紫色の髪などは、パステル・カラーを意識した色使いになっています。それは最初からのコンセプトでした。
当時はセル画での制作だったので、使えるセル絵の具の色数も少なく、その中での作業でしたが、マミ・カラーとでもいうべき特徴的な雰囲気が出ていると思います。特に優の髪の色は、キャラクターデザイナーの高田明美さんがこだわっていたところで、優のためにわざわざ新しいセル絵の具を作ってもらいました。美術についても美術監督の小林七郎さんの淡いトーンがキャラクターの色使いに合うだろう、ということでお願いしました。
――色使いだけでなく、キャラクターの私服のファッション性や、優の家がクレープ店という設定などが、当時の時代の空気を巧みに反映していた作品でした。
―布川
クレープ店という設定もこっちで作ったはずです。当時はまだクレープ店も珍しかったですよね。それは当時、まだ若かったスタッフが時代を先駆けてそういう要素を盛り込んだのでしょう。
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