■ 親分肌の今 敏 監督
― アニメ!アニメ!(以下、AA)
先ほど今さんと意気投合されたとの話があったのですが、どういうところが馬が合ったのでしょうか?
― 本田雄さん(以下本田)
今さんが合わせてくれてたのもあるんです。とにかく親分肌なんです。後輩のような慕ってくる人間にはすごい優しいんですよ。
もともとはすごく好戦的な人なのに。(笑)
― AA
講演会とかトークショーとか何回か取材させて頂いたことがあるんですが、ざっくばらんな物の言いが魅力でした。
― 本田
そうなんですよね。あの自信がまた羨ましいなぁとは思うんです。
― AA
今さんとは絵を描く者同士通じ合うところはあったのですか?
― 本田
今さんのマンガは好きで読んでいたし、ああいうリアル系なものをいっぺんやりたいなと思っていたんです。
『PERFECT BLUE』の原画をやっていた時に、芝居をまじめにやっていたのがすごく気に入ってもらえたんです。
「すごく原画がわかりやすいよね」とか、「ジメジメしてなくてカラッとしてる部分がいい」とすごく褒めてもらった記憶があります。
(C)2001 千年女優製作委員会
■ 『千年女優』だから1000カット
― AA
『PERFECT BLUE』の時は、何カットぐらい描かれたのですか?
― 本田
30カットぐらい描いたと思います。その時は『エヴァンゲリオン』と掛け持ちだったので、そのぐらいしかできませんでした。
― AA
『千年女優』のときは何カットぐらいですか?
― 本田
『千年女優』では、作画監督だったので、原画自体は描いてません。
― AA
絵の動かし方で何か特に気をつけた点はありますか?
― 本田
突出した部分をなくすことですね。いろんな人が原画を描いているとやっぱり、動かし方とか絵も描く人によって変わってくるので、そこを平たく持っていくという作業には気を付けたつもりで。行き過ぎている動きはちょっと抑えるという感じですね。
― AA
『千年女優』はゆるやかに動き続けるという印象があります
― 本田
自分では、止めたりしているつもりです。ただ今さんは映画の流れからテンポで見せようと、無意味に止めないように考えていたかも知れないですね。
『千年女優』は、枚数もそんなにかかっていないんです。今さんのやった中では多分一番少ないのではないのでしょうか?
― AA
全体のカット数はどのくらいですか?
― 本田
『千年女優』だから1000カットを目指していたんですよね(笑) 実際には1000とちょっとあったんじゃないでしょうか。今さんの中にも、それ以上は無理だろうというのはあったみたいです。
(C)2001 千年女優製作委員会
■ 『千年女優』から『妄想代理人』まで
― AA
『千年女優』の後は、『東京ゴッドファーザーズ』があり、『パプリカ』は参加されていないですね。
― 本田
今さんが『パプリカ』をやってるときは、自分が『電脳コイル』をやっていたころなんです。
― AA
そうすると『東京ゴッドファーザーズ』が、今さんとの仕事では、最後になりますか?
― 本田
『妄想代理人』も少し手伝わせてもらいました。
― AA
忙しい中でも、今さんのためにはあえてやろうという気持ちは常にあったのでしょうか?
― 本田
今さんの作品はやっていて楽しいんです。ご一緒出来ませんでしたが、『パプリカ』のときは仕事場には遊びに行ってました。『電脳コイル』も同じマッドハウスでやっていたんです。訪ねに行くと冷蔵庫からビール出してきてくれて(笑) 忙しいのに付き合ってくれたりしたんです。
後編に続く
[本田雄(ほんだ・たけし)アニメーター、キャラクターデザイナー]
1968年生まれ、石川県出身。スタジオカラー所属。
1987年のOVA『レリックアーマー・レガシアム』で動画デビュー。22歳で作画監督として『ふしぎの海のナディア』に参加。『新世紀エヴァンゲリオン』ではOP作画や作画監督を、同劇場版『Air』ではEVAシリーズのデザインやメカ作監などを担当。
OVA『青の6号』や映画『東京ゴッドファーザーズ』『イノセンス』などで原画を担当。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』ではメカニック作画監督、『:破』では作画監督及びデザインワークス、そして『:Q』では総作画監督を務める。
『千年女優』ではキャラクターデザインと作画監督を担当。
(C)2001 千年女優製作委員会