北海道電力オリジナルアニメMV「365日の明日」はいかにして作られたか―「メガミマガジン2月号」にて実施された制作スタッフインタビューを特別掲載 | アニメ!アニメ!

北海道電力オリジナルアニメMV「365日の明日」はいかにして作られたか―「メガミマガジン2月号」にて実施された制作スタッフインタビューを特別掲載

「メガミマガジン2月号」にてW表紙を飾った、北海道電力グループオリジナルMV「365日の明日」について、メガミマガジン誌面で実施されたスタッフインタビューをアニメ!アニメ!でも特別に掲載!ハイクオリティなMVはいかにして作られたのか、どのようなこだわりが込められているのかなどをうかがった。

インタビュー
PR
注目記事
北海道電力オリジナルアニメMV「365日の明日」はいかにして作られたか―「メガミマガジン2月号」にて実施された制作スタッフインタビューを特別掲載
  • 北海道電力オリジナルアニメMV「365日の明日」はいかにして作られたか―「メガミマガジン2月号」にて実施された制作スタッフインタビューを特別掲載
  • 北海道電力オリジナルアニメMV「365日の明日」はいかにして作られたか―「メガミマガジン2月号」にて実施された制作スタッフインタビューを特別掲載
  • 北海道電力オリジナルアニメMV「365日の明日」はいかにして作られたか―「メガミマガジン2月号」にて実施された制作スタッフインタビューを特別掲載
  • 北海道電力オリジナルアニメMV「365日の明日」はいかにして作られたか―「メガミマガジン2月号」にて実施された制作スタッフインタビューを特別掲載
  • 北海道電力オリジナルアニメMV「365日の明日」はいかにして作られたか―「メガミマガジン2月号」にて実施された制作スタッフインタビューを特別掲載
  • 北海道電力オリジナルアニメMV「365日の明日」はいかにして作られたか―「メガミマガジン2月号」にて実施された制作スタッフインタビューを特別掲載
  • 北海道電力オリジナルアニメMV「365日の明日」はいかにして作られたか―「メガミマガジン2月号」にて実施された制作スタッフインタビューを特別掲載
  • 北海道電力オリジナルアニメMV「365日の明日」はいかにして作られたか―「メガミマガジン2月号」にて実施された制作スタッフインタビューを特別掲載

「メガミマガジン2月号」にてW表紙を飾った、北海道電力グループオリジナルMV「365日の明日」について、メガミマガジン誌面で実施されたスタッフインタビューをアニメ!アニメ!でも特別に掲載!ハイクオリティなMVはいかにして作られたのか、どのようなこだわりが込められているのかなどをうかがった。

本インタビューを読んで、ぜひ「365日の明日」への理解を深めていただきたい。また、メガミマガジン本誌では、インタビュー以外にも本MVのストーリーやキャラクター紹介を掲載中。こちらもぜひ読んでみてほしい。

◆総監督・キャラクター原案/古澤旅人×監督・絵コンテ/山元隼一×キャラクターデザイン・作画監督・カラリスト/橋本治奈×美術監督/今村優美


広告ディレクターやコンテンツプロデューサーとして幅広く活躍する古澤旅人が、総監督・キャラクター原案として指揮をとった本MVには、様々なアニメを手掛けた気鋭のクリエイターが携わっている。監督・絵コンテの山元隼一は、『夫婦以上、恋人未満。』や『彼女が公爵邸に行った理由』の監督として知られ、キャラクターデザイン・作画監督・カラリストの橋本治奈は、『彼女が公爵邸に行った理由』でキャラクターデザイン・総作画監督として山元とタッグを組んだ。美術監督の今村優美も、『ウマ娘プリティーダービーROADTOTHETOP』『アイドルマスターシンデレラガールズU149』に参加している。そんな制作スタッフ陣にスポンサーである北海道電力の企画担当者を交え、本MVについて、様々な話をうかがった。

◆北海道の将来を担っていくZ世代に向けて制作がスタート

――北海道電力(ほくでん)グループがアニメのミュージックビデオ(MV)を制作した経緯を教えてください。

森田(ほくでん企画担当者・森田英俊)グループのテーマ楽曲「365日の明日」を使った新たな企業ブランディングを進めるに際し、ターゲットをより明確にしようという方向性を打ち出しました。そこで、いわゆるZ世代に焦点を当てることとなり、この年齢層になじみ深いアニメが採用されました。

――Z世代をターゲットにした理由は?

森田企業ブランディングは時間を要するものなので、北海道の将来を担い、弊社としても末永くお付き合いしたい年齢層ということでZ世代が選ばれました。また、各種アンケートの結果、弊社に無関心なZ世代が増えているという課題があったのです。

ただ逆にいえば、無関心ということは、いい接し方ができれば、その後も好印象を抱いていただける可能性が高いということ。そして、「いいコンテンツを提供するならば、やっぱりアニメでしょ」となったわけです。

――MVの内容はどのように決まったのでしょうか?

森田この企画には「応援」というメッセージが込められています。応援という軸の中で、Z世代にとって人生の大きなハードルである「受験」にひたむきに努力する主人公を描きたいと考えました。ただ、多くのZ世代に自分を投影してもらいたいという狙いから、受験勉強一辺倒にするのではなく、学生生活の大きな要素として「部活」もピックアップしました。

部活をバスケにしたのは、ちょうど某バスケアニメ映画がヒットし、女子日本代表が躍進したこともあって注目を浴びていたから......というのは表向きの理由で、じつは私の趣向です(笑)。「ひたむき」といえば「女の子」。これも私の趣向です(笑)。そして、アニメ制作をスタートするに当たり、いつもお世話になっている広告代理店さんを通じて古澤さんをご紹介いただきました。

――古澤さんはほくでんさんから広告プロモーションのオファーを受け、どのように作業に入ったのですか?

古澤当初、ほくでんさんから「女子高生」「バスケ」「受験」といったキーワードや企画コンテ的な草案をいただきました。ただ、ひと口に「アニメ」といっても多種多様なので、リアル調からデフォルメ調まで、頭身の高さなどを含めてビジュアルを詰めることに大きな時間を割きましたね。テーマが「受験」という実際にあるシチュエーションだけに、ビジュアルもリアルを基本としつつ、デフォルメ感やキャラ性について細かくチューニングしながら方向性を絞っていきました。

また「女子高生」「バスケ」「受験」といった点と点を、既存の歌をベースに進行する物語でどう結びつけて線にするのかも苦労した部分です。点と点に整合性を出すため、劇中では描かれないであろうキャラクターのバックグラウンドなども会議を重ねて企画コンテを制作しました。ただ、舞台がリアルに存在する北海道であり、北海道出身者をメインターゲットとしたプロモーションなのに対し、僕は北海道出身ではないという問題もありました。そこで「北海道らしさとは?」「北海道の方に刺さる見せ方とは?」という基本的な部分を、ほくでんさんからいろいろアドバイスをいただいて世界観をすりあわせた後、おおまかな流れのコンテやキャラクター、アレンジの足がかりとなるベンチマークを整理して、ほかのスタッフの方々に打診しました。

◆「光」にこだわった演出とレンズを感じさせる表現に注力

――山元さんはどのような作業を担当されたのですか?

山元僕はアニメーション部分の現場の仕切りなどを担当しました。古澤さんとほくでんさんの綿密な事前準備のおかげで、アニメ制作スタッフはスムーズに作業に入れましたね。参加時点で作品の方向性やキャラクター像に加え、元々バラード調だった「365日の明日」をアニソンテイストにアレンジしたバージョンもありましたから。

それらを踏まえて、企画コンテをアニメコンテに落とし込み、現場からの視点でスムーズな制作や作品の魅力向上について提案、相談しながら作業を進めました。

古澤山元さんには、実写畑で広告コンテンツ側の立場である僕では気づけない、アニメならではの演出をご提案いただき、大いに助けていただきました。たとえばキャラクターの心情と背景がリンクした演出とか、実写だとなかなかない表現なので山元さんに委ねました。

山元「自分のこととして感じてほしい」という作品コンセプトが明確だったので、感情移入してもらうために望ましい映像、アニメとして一番魅力あるアングル、ライティング、影のつけ方など、思いついたことを口にしたり調整しただけですよ。電力会社のプロモーションですから、さりげなくシーリングライトを映しこんだりして、「なかなか気づかないけど、生活の隣にはいつも電気が見守っているんだよ」感も出してみました。

――映像のなかでとくにこだわった点を教えてください。

山元本作は「2つの光」がポイントで、「電気の光」に加えて「陽の光」の演出にも心を砕きました。短編映像は感情移入のストロークが短いため、受け手の記憶をいかに引き出すかが重要なんです。MVを見ている人が、心のなかで映像とは別に「自分の高校時代はこうだったな~」とか自身の物語を再生してもらいたいと思って、記憶にリンクするカギになる朝日や夕日といった太陽光にこだわりました。

また実写ライクというか、レンズを感じさせる表現、画面をパキッと見せるのではなく、ちょっとソフトフォーカスっぽい絵にしたいなと。橋本さんのキャラクターデザインが上品だし、今村さんの美術も美しいので、そうした魅力を生かすうえでもフワッとした表現がふさわしいと考えて取り組みました。

――本作の魅力的なキャラクターを生み出した橋本さんですが、デザイン時に苦労はありましたか?

橋本事前に古澤さんからキャラクターの原案イラストや性格、好きな食べ物といったプロフィールをいただけたので、そこからアニメ用のデザインを起こしました。原案イラストもバリエーション豊かだったので、キャラクターごとの個性を拾っていく作業はやりやすかったです。

古澤主人公がチーム競技のバスケに取り組んでいるということは、チームメイトもいるんだろうな......ということで、主人公の設定とあわせて周囲の友達もイメージしました。とはいえ、このMVだけで人物像を捉えてもらわないといけないので、橋本さんにお渡しする資料ではわかりやすいキャラクターづけに注意しました。

橋本明日架の髪は「セミロングで、子供っぽくなり過ぎないようにトレードマークのサイドテールがある」というデザインは原案時点で決まっていましたね。原案全体からアニメ愛が伝わったので、それに応えるべく、既存作とは被らないながら、アニメ好きに刺さる、ベタといえばベタなデザインにしたいと考えました。

古澤僕とほくでんさんの間でデザインをかなり固めてから作業をお願いしたにも関わらず、僕が考えていたキャラクターの要素をバッチリ抽出し、かつ原案から見違えるデザインに昇華していただき感動です!

橋本自分のなかでなにかを変えようとか無理してデザインしようというのはなく、好みの絵柄で描いただけなんですよ。デザインの方向性、リアリティラインとデフォルメラインのバランスを教えていただき、1回自由に描かせてもらおうと作業したところOKをいただけました。だから、本作は私の趣味がかなり出ている推し面が勢揃いしています(笑)。

本編では描かれていませんが、「明日架たち仲良しグループ内でいろいろなトラブルや友情物語があるんだろうな~」と妄想を膨らませ、その出会いや友達の家族構成、誰と誰は幼なじみといった関係性も勝手に設定していましたね。劇中よく見ていただくと、さりげなくキャラクターが視線を交わすカットがあったりするのですが、それは私の脳内設定が反映されたものです(笑)。

――橋本さんはキャラクターデザイン以外に、作画監督やカラリストなどを兼務されていますね。

橋本作画部分でも普段と違うことはしませんでしたが、心持ち画角が寄り過ぎないように、全体的に落ち着いたレイアウトになるよう意識しました。山元さんとは何度もお仕事させていただいていて、レンズ感をリアルに取りたいという意図も「ああ、わかりますわかります」という感じ(笑)。だから、アニメ的な狙い過ぎたアングルは避け、ノーマルや望遠レンズで撮ったような落ち着いた見た目で、キャラの配置もそれに合わせて背景が生きる配置にしました。

また、背景をしっかり見せたいカットでは、モブの色を仕上げさんに落としてもらうなど、全体的なバランスがキレイに見えるように調整しました。

山元本作は「北海道もひとつのキャラクターである」という思いがあり、その部分もしっかり表現したいと考えました。一般的なアニメの会話シーンを実写に置き換えると、カメラが人物のかなり近くで撮影している状態のことが多いのですが、電気が我々の生活を見守ってくれているのと同じで、本作も、ちょっと遠くからみんなががんばっている姿を優しく見ているようなカメラ目線がふさわしいのかなと。

――引いたカットが多いとなると、今村さんが担当された美術の役割も大きいですよね。

今村ロケハン資料や、山元さんや橋本さんからいただいた設定に基づいて背景を描きました。ただ、私が北海道の気候や生活に無知なうえ、資料の季節が夏だったり時間帯が違ったりという齟齬があったので、「この場所で雪が降ったらどんな積もり方するのかな?」とか「この画角ならばこちらから夕日が差すな」とか、自分で想定したり情報収集を繰り返しました。

山元今村さんには、明日架の部屋の設定もしていただきました。同性だからこそ気がつく、女子高生らしくていかにもありそ自分の青春を投影してジンワリした気持ち
うな部屋になっていて、「男のスタッフではこうはいかないな」と感心させられましたね。

今村参考資料があった屋外と異なり、明日架の部屋はいちから試行錯誤して美術設定を起こしただけに思い入れが強いですね。明日架の部屋の間取りや、「バスケ好き女子高生で関連グッズやトロフィーが置いてある」という設定があったので、そこから思い出の写真を貼ったコルクボードを追加し、受験生らしく参考書をたくさん置いて......と、私なりに要素をつけたしました。

また、明日架はまじめで友達思いですが、さらにかわいらしいフレッシュさも出したいと考えて、ベッドの端に寒い北海道っぽいということでペンギンとかシロクマのぬいぐるみを置いてみました。画面には映っていないのですが(笑)。

橋本明日架のぬいぐるみ設定がすごくかわいいから、作画監督としてなんとか使えないか考えたのですが、入れられるカットがなくて泣く泣く断念したんです......。

今村あと、感情を感じさせるような絵作りを意識し、背景の色味はキャラクターの心情に合わせて微妙に変化をつけています。たとえば明日架の部屋の明かりは、光で見守っている感じを伝えようと考え、普段の明かりは黄より赤に近い暖色に微調節しつつ、明日架が模試の試験の結果が悪くて落ち込んでいるシーンでは、対比として思いっきり夜色の鮮やかな青に変えることで印象的な場面になるよう意識しました。

山元先ほど「光」をポイントに挙げましたが、私が何もいわなくても、今村さんもキャラクターの感情に合わせて背景美術の色味を工夫してくださり、頼もしかったです。今村さんからイメージ通りの背景美術が次々と上がってきて、「すごい!なかなか出会える美術じゃないぞ」と衝撃を受けました。夕日と夜が混ざりあった複雑な夕景の色使い、朝日のなかの学校など、とくに空が印象的で。部屋のシーンも、単純な蛍光灯の光に温かさを感じたりとか、光が映像に与える影響をすごく考察されて描かれたことがわかりました。

今村普段携わるテレビシリーズアニメは1話約20分ですが、今回は約3分。その短い時間で物語を見せるため、夕日を強調したり、シンとした空気が伝わるように色を強調したりとか、背景面でもドラマティックになるように試行錯誤しました。

山元おかげで、撮影処理も含めて「光」に関しては、うまく表現できたかなと。完成時はキャラの豊かな表情やステキな歌の力もあり、すばらしい作品になったと思います。

◆北海道らしさがつまったみんなでがんばる優しい世界に

――劇中で季節が移り変わっていますが、約3分の映像で物語を見せるのは大変だったのでは?

古澤歌のタイトルに「365日」とありますし、受験は定期試験の一夜漬けと違って長いスパンをかけて取り組むものなので、劇中の時間経過が大きくなるのは必然ですよね。それをMVに収め、かつ印象に残る物語とするため、たとえば、日々が経過しているシーンはカットごとに時間帯を変えることで、違うイメージを与えるような工夫を施しました。

山元あとは、1カット1カットがスチール写真というか、1枚絵として成り立つようなレイアウトで、その前後のシーンがなんとなく想像できるようにとか。

橋本作画面でも印象に残りやすくするため、明日架はオーダーより表情変化の芝居を多めにつけ、カラオケで熱唱するあかねの腕の振りを大きくしたように、友達も動作や髪の揺れなどをちょっとだけオーバー気味にしました。あと、明日架と千星が一緒に勉強しているカットでは、当初2人が視線を合わせるような芝居はなかったんですよ。でも、真剣に質問する明日架に対し、千星が感心している顔からフッと「やるじゃん」みたいに微笑むという変化を加えました。「千星はきっと明日架ががんばっている姿をずっと見ていて、その努力を認めて応援している」という心情を表現したかったんです。

表情や動きのちょっとした機微から、私が描いた人間関係やキャラクター性がにじみ出ていたらいいなと。個人的には、歩、あかね、千星がカラオケで遊んでいるシーンで、千星が無表情でマラカスを振っている姿がお気に入りです!

古澤MVは「こういうキャラクターがいたらいいな」という僕の理想が具現化されています。カラオケでの千星も、当初のコンテでは違う動きでしたが、現在の形に修正されてより魅力的になりました。受験は孤独な戦いですが、MVでは「みんなでがんばっていると励まされる」というキャラクター同士の仲良し感を、山元さんたちがステキに描いてくれました。

山元明日架たちと同年代の方々は、コロナ禍のため学校にも通いづらく、みんなで部活に打ち込むことが難しい時期が続きました。だからこそ、MV内ではチームメイトが団結している「優しい世界」で、「誰かを非難するのではなく、みんなでがんばろうよ!」という理想を描くことで、少しでも元気になってほしいと考えました。

――MVは明日架が受験に向かうシーンで締められますが、演出意図について教えてください。

古澤そこは、予備校のCMではないので(笑)。受験が主軸ではありますが、あくまでこの年代が抱えている思いを表現することが大切で、受験に限らず、立ち向かわなければいけない壁に対し、どう向き合い、どんな気持ちで臨むかがテーマ。そのため結果を描くのではなく、明日架が受験に挑む姿勢に焦点を当て、あえて結果を描いていません。本作は「わかりやすさ」を重視していますが、最後は視聴者の想像に任せる形としました。

――本プロジェクトを振り返っての感想を聞かせてください。

古澤ステキな歌にステキなビジュアルが加わり、作業中、僕のなかでイメージがドンドン膨らんで「明日架たちに声をつけたいな」という願望がムクムクとわき上がりました(笑)。試写会終了後、ほくでんさんと「このキャラクターはこの声優さんで!」みたいな話題で盛り上がりましたが、関係者間でキャストイメージがかなり一致してビックリでしたね。

山元僕の脳内ではアフレコ済みで(笑)、MVを見ていると自然と声が聞こえてきましたよ。橋本さんが表情や口の動きまで丁寧に描いてくれているから、自然とイメージがわいてきました。また、いちアニメ制作者としては、プリミティヴな表現ができてうれしかったです。

テレビシリーズでは作業量を抑えるためキャラクターに寄った絵を多用したりするのですが、本作は劇場版に近い作りで1カット1カットに注力でき、質感や撮影処置、エフェクトも含めてギリギリまでこだわれたので制作者冥利に尽きました。

橋本個人的に、この世界に関して誰にも言っていない勝手な妄想がいっぱいあるので、明日架たちをもっとたくさん描きたいです。みんなの私服も見てみたいし、今村さんの美術で夏の北海道も見たいし、今回は冬の制服がメインだったけど夏制服もかわいいんだろうな......とかいろいろ想像が膨らんでいます(笑)。

今村リアルな生活感があり、しかもどこか温かみのある作品にしたいという思いから、タッチなどを工夫したのですが、完成MVを見ると納得のいく表現ができたと思います。私はこれまで背景美術としてアニメに携わってきましたが、美術監督は今回が初めてで。こんなステキな作品で初の大役を任せていただき、とても思い入れのあるものとなりました。

個性豊かな女の子たちで、受験というひとつのゴールに向けて支え合いながら切磋琢磨する姿は、改めて見てもステキ。クリスマスに勉強している明日架に母親がケーキを差し入れるところとか、何度見てもウルッとします。もし続編があるならば、私も春や夏の北海道も描きたいし、明日架のこれまで、これからも個人的に気になりますね。

山元明日架たちがどう出会ったのかとか、ビギニングストーリーもいいですね!高校入学直後、食堂の焼きそばパンを巡って明日架とあかねがバスケのシュート対決をするとか、前日譚が作りやすそう(笑)。

――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

山元「365日の明日」は「祈り」のような楽曲で、MVもそれにふさわしい、誰かの励みや勇気になるような「祈り」のような映像を目指しました。その思いが皆様少しでも届けば幸いです。また「メガミマガジン」という誌名の本に掲載されるのにふさわしく、本作はかわいいヒロインがいっぱいですので、ぜひ推しのメガミを見つけてください!

橋本私も「365日の明日」を初めて聞いたとき、「この空はいつも明日へ繋がってる」というステキな歌詞に感動しました。その思いをもとに、自分の高校時代に心を戻しながら、キャラクターの関係性や明日架の家族描写を心込めて描きましたので、自分の青春を投影してジンワリした気持ちになってくれたらうれしいです。

今村私は本作の制作を通じて、美大受験に向けて励んでいた頃を思い出しました。当時は孤独にがんばっていると感じていましたが、本作を通じて、家族や友達に支えられていたことを感じ、同時に、当たり前だと思っていた人や存在に気づかされる作品でした。私のように、本作が周囲への感謝を思い出させてくれるキッカケになってくれたらこれ以上の喜びはありません。

古澤僕はMV制作作業の最終段階で北海道に伺ったのですが、「アニメの世界が目の前にある!」という、スタッフなのに聖地巡礼をしているような不思議な感覚を覚えました。それくらい本作には北海道らしさがつまっています。

たとえば歌詞に歌われ、MV内にも描かれている「雪虫」。ニュース映像などでの知識はありましたが、大量の虫ということで嫌悪感を抱くかもと思いきや、実際に目の前で舞う雪虫は圧巻!本作をキッカケに北海道への興味を抱いていただき、実際に行く機会がありましたら、北海道らしさを作品と比較してもらえたらうれしいです!

《メガミマガジン編集部》
【注目の記事】[PR]

特集