「ガンダム」を描いた“職人”大河原邦男のメカニックデザイン論 「重要なことはいつの時代も同じ」【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

「ガンダム」を描いた“職人”大河原邦男のメカニックデザイン論 「重要なことはいつの時代も同じ」【インタビュー】

4月16日まで東京・3331 Arts Chiyodaにて開催されている展覧会「ラフ∞絵」。 秋本治さん、天野喜孝さん、高田明美さんと共に参加するのは、メカニックデザイナーの大河原邦男さんだ。

インタビュー
大河原邦男
  • 大河原邦男
  • 「ラフ∞絵」内覧会の模様(撮影:編集部)
  • 「ラフ∞絵」内覧会の模様(撮影:編集部)
4月16日まで東京・3331 Arts Chiyodaにて開催されている展覧会「ラフ∞絵」。
秋本治さん、天野喜孝さん、高田明美さんと共に参加するのは、メカニックデザイナーの大河原邦男さんだ。

『機動戦士ガンダム』や『装甲騎兵ボトムズ』、『タイムボカンシリーズ』をはじめ、数多くのメカニックデザインを手がけてきた大河原さんは、どのよう経験や環境を経て多彩なデザインを生み出すに至ったのか?

その原点やデザインを生み出すプロセスなど、パーソナルな部分を語ってもらった。
[取材・構成=石井誠]

■幼い頃から触れて来たミリタリーメカニックとメカに対する好奇心


――大河原さんのメカ好きとなる原体験は、どんなものだったのでしょうか?

大河原
私は1947年生まれで、生まれる2年前までは日本は戦争をしていたんです。
そんな環境なので、幼い頃には本物の兵器を見る機会がたくさんありました。

うちの近くに米軍基地があり、進駐軍の姿を良く見ましたね。
ちょっと離れたところにある多摩川の北側は調布の飛行場でしたし、近くを通る府中街道から少し入ったところに旧陸軍の弾薬庫があって、それを米軍が接収して利用していたということもあって、弾薬を運ぶ軍用車や道路整備に使われた米軍の重機も子どもの頃には相当見ていたんです。
そういう環境がメカ的な原点になります。

当時は、空を見上げると、ロッキードのF-104という戦闘機が厚木基地と横田基地を行き来している姿が見えて、米軍兵が乗るウィリスMBというジープが走り回っている。
『装甲騎兵ボトムズ』の監督である高橋良輔さんと話をすると、同じような原体験があるからかメカの感性が似ているんですよね。

――そうした環境は後にミリタリーテイストのメカをデザインするのに影響していそうですね。

大河原
そうですね。デザインという部分では、小学校時代から図画よりも工作が好きな子どもでした。
小学校時代と言えば、今からもう60年くらい前になるんですが、その頃に教えてくれていた先生がレジンなどの当時としては珍しい、特殊な素材を工作に使わせてくれて、授業でブローチを作るというような立体造形を体験させてくれたのも影響しているのではないかと。

また、うちの蔵にあったアナログの蓄音機や電気蓄音機なんかの機械をいじっているうちに、内部構造などが気になって分解しちゃうんです。

その後、今度はその部品を使って何かを作ろうとしたりと、そんな感じで遊んでいたのでメカに対する憧れや親しみというのは子どもの頃からずっと持っていましたね。

――デザイン的なものでは、どんなものに魅力を感じていましたか?

大河原
ミリタリーものは、製造しやすくて丈夫というような、機能からくる美しさに魅力を感じましたね。
現在主流の樹脂をメインとした感性ではなく、溶接したりネジ留めしたりという金属的な要素が好きで、それが後に金属加工に目覚めていくことに繋がっているんじゃないかと思います。

■「アーティスト」ではなく「職人」であるというこだわり



――今回参加されている「ラフ∞絵」展では、デザインの工程が展示されるわけですが、普段はどんなプロセスでデザインをされるんでしょうか?

大河原
作業としては、赤鉛筆を使って大まかな形を描いて、そこからデザインを詰めていくのが主流ですね。
今回、一緒に参加される秋本治さん、天野喜孝さん、高田明美さんたちと、それぞれが描く代表作をモチーフにイラスト化する「チェンジ・アンド・チャレンジ」という企画がありまして。
私は、自分の描きやすいようにメカに置き換えてみようという形でイラスト作成しています。

私の場合、ロボットなどのメカは民族衣装や仏像などからヒントを得てデザインしていくので、キャラクターも同じような感覚でメカに置き換えるという形で描かせてもらいました。
作業していて一番楽しかったのは、高田さんの『魔法の天使 クリィミーマミ』ですね。

「ラフ∞絵」の模様(撮影:編集部)
――どういった部分が楽しく作業されたポイントですか?

大河原
私には、こういう色味のデザインのオファーというものがほとんどないんです。
だから、マーカーも金属的な色味を使うことがあっても、こういうパステルな色はほとんど使ったことがなくて。

今回は、『クリィミーマミ』のいくつかの要素をまとめて1枚の絵にするというイメージで描かせてもらいました。

――大河原さんは、よくご自身のことを「アーティストではなく職人だ」と仰っていますが、仕事のスタイルに関してもそういう姿勢が出ているのでしょうか?

大河原
私の場合、この業界に入ったのは生活のため、仕事をしてお金をいただくということが根底にあるんです。
私が業界に入った1970年代から80年代にかけては、アニメの企画が立てばそのほとんどが放送されてしまうような勢いのある時期で、1週間に4本や5本の作業をするのは当たり前でした。
そういう状況の中で合理的に仕事をして、1本の仕事のギャラは安くても、4本やれば4倍になる。そういう生き方をして来たんですよね。

このスタンスは、アーティストではなくて、職人なんですよ。
アーティストだったらそうした作業の仕方を許せなくなると思うんですが、私はそうした割り切った仕事が許せてしまう。
ちゃんとギャランティがいただけるオファーという形でなければ自分の趣味で絵を描くことはないので、今回「ラフ∞絵」展に参加する4人の中では最も異質かもしれないですね。

絵を描くより立体として作る方が好きなので、今回の展示では絵だけではなく、自分で作った立体物も展示しています。

「ラフ∞絵」の模様(撮影:編集部)
――普段のお仕事は、イラストやデザイン画といった完成したものが、納品形態であり到達点であるわけですが、こうした仕事の工程を見せるということに関しては、どのように感じますか?

大河原
納品したものがフィニッシュになるわけですから、こうしたものを見せることはほとんど無いですよね。ラフに関しては廃棄処分にされることがほとんですから。

今回展示するデザイン画に関しても、『科学忍者隊ガッチャマン』などの70年代前半からの仕事は、ラフなどは何も残っていないんですよね。
他の作品でも、フィニッシュにつながるラフや企画したけど放送に辿り着けなかった作品の絵などが残っていたので、そういうものを展示しています。

それらもプロデューサーの布川ゆうじさんがこういう企画を立てなければ、日の目を見ないものばかりですね。

――本展覧会の見どころはどこにあると思いますか?

大河原
一緒に参加する秋本さん、天野さん、高田さんはみなさん名の通っている方で、過去の作品を背負っているわけですから、かなり面白い展示になっていると思います。
一度で4人分のバラエティ豊かな展示を一度に見られるような展覧会はなかなかありません。2週間という短い開催期間ですが、ぜひ多くの方に見に来ていただきたいです。


→次のページ:大河原流のデザイン完成までのプロセス

《石井誠》
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