高浩美のアニメ×ステージ&ミュージカル談義[取材・構成: 高浩美] ファンの人たちが愛している『銀河英雄伝説』を舞台版として、原作、アニメを飛び越えて同じ線上になければいけない■ “いちファン”として原作、アニメのヤン・ウェンリー像を逸脱することなく、舞台に持っていけたらいいなと思っていた。舞台『銀河英雄伝説』がいよいよ今年の2月にファイナル公演を迎える。シリーズ化されて既に9作、ファイナルは10作目となる。多面的な物語故、いろいろな側面から描いてきたこの舞台、スタッフと俳優が一丸となって取り組んできた。その中でもヤン・ウェンリーを演じる河村隆一、一昨年の春の公演『銀河英雄伝説 第2章 自由惑星同盟篇』から参加、このファイナルで4回目となる。河村隆一は、「僕自身が『銀河英雄伝説』のファンだったので、当然ですが、ヤンとラインハルトに関してはよく知っていました。ただ、ヤン役に決まった時は……あまりテンパってないっていうか、体温が上昇しない、カーッとしない、もの静かでちょっとけだるいような芝居をどう舞台に持っていたらいいのかなっていうことを凄く考えましたね。ヤンは戦時中でもなんだかのんびりしているように見えて、実は遠い未来を考えているみたいなところがあるから……それを舞台で演じるのは凄く難しい……つまり一番難しい役なんじゃないかなと、ずっとそう思っていましたね」帝国軍のラインハルトは年齢的にも若く、“銀河を手に入れる”と口にして実現に向けて邁進するが、ヤンは全く逆のタイプ。意に反して軍人になるが、皮肉にも戦術・戦略に長けた人物である。「『三国志』で例えるとヤンは諸葛孔明みたいな立ち位置だと思うんです。ひらめきの人で、戦術の人だし……彼は歴史から学んでいますから“この時、人はどう動くのか”っていうふうに相手の心理を凄く巧みに利用するタイプだと。高揚してガッツポーズするとか、自分で声を荒げて誰かを叱咤激励するタイプでは決してない……エネルギーを出していい役は比較的楽なんじゃないかな?っていう気がします」とはいえ一昨年の“初ヤン”はまさに“ヤンがいる”と思わせるほどの存在感を示した河村隆一。「思いのほか『銀英伝』ファンの方から“ヤン・ウェンリーのイメージのまんまだったよ”っていうふうに評価をいただいたので……自分もやっぱり“いちファン”として原作、アニメのヤン・ウェンリー像を逸脱することなく、舞台に持っていけたらいいなと思っていたんで、その辺は凄くよかったなと。あと、難しさを解決する方法としては、他の役者さんがエネルギッシュに芝居をして、それに反比例するかのようにヤンが“まあまあ、落ち着いて”って言ってみたり、なんか、ずっこけるようなことを言ってみたり、そういった“温度感”っていうのを、初めてやらせていただいた時に演出家の西田大輔さんに創っていただいたので、その辺は凄くやりやすかったですね」
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