『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』元永慶太郎監督インタビュー後編
[インタビュー取材・構成:野口智弘]
―― キャラクターについて、主人公たちは「ザンネンファイブ」と呼ばれていますが……残念なんですか?
―― 元永慶太郎監督(以下元永)
残念ですねえ(笑)。かっこいいんだけど残念な人たち。そこはやっぱり身近なキャラクターにしたかったということですね。
もともとヒーローだってウルトラマンは3分間しか戦えない欠点があるわけで「あそこがなければ完璧なんだけど……」という人間味というか、どこか完璧にはいかないキャラクターにしていきました。
遺伝子操作がある世界という設定なんですけど、たとえ遺伝子操作したとしても、そうそう完璧な人間はいないだろうと。あとザンネンファイブの子たちは背負っているものがものすごく大きいので、うつむいた瞬間に鬱展開しかないアニメ になっちゃう。だからそれを気にしてるんじゃなくて、どこかそれを受け入れて楽しんでいるところもあるんじゃないかなと、常に前を向いている子たちにしました。
――「残念」という言葉も最近意味合いが変わってきた言葉ですね。欠点であっても楽しんじゃおうというか。
―― 元永
みんなそれなりに欠点は持ってるんだし、それを劣等感で固めるんじゃなくて、欠点って思わなければいいじゃないと。
もしかしたらいつか自分の武器になるかもしれない、という願いもありますよね。
―― 元永監督が自分自身で「残念だなあ」と思うところはありますか?
―― 元永
……俺? 俺ねえ、全部(笑)。
――いやいや(笑)。
―― 元永
基本人間としてダメだなあと。この歳になっていまだにおもちゃ集めちゃうしね。好きなことはとことんやっちゃうというか、そういう我慢できないところがあって。それもわかってくれる人からすれば武器になるんだろうけど、わからない人から見ると、きっと残念に見えるんだろうなあと思っています。

―― 元永
これまでテレビで見てきた作品もすべてヒーローですし、自分の心が折れそうになったときに支えてくれるものは何でもヒーローじゃないかな。
いまヒーローだなと一番感じるのはアニメの現場のスタッフですよね。べつにいい話じゃなくて(笑)、単純に監督のわがままを受け入れてやってくれてるのは彼らなので、それに関してはまさに彼らがヒーロー。
監督って『MJP』で言うと、だいたいシモン司令ぐらいの立場で、作画の人とかそれぞれの部署の人たちがアッシュに乗ってる人たちですからね。それに対して無茶な司令をガンガン出すのが僕の立場なので、平 気で無茶ぶりして「あとはよろしく」とお願いすると、ああいういいデザインや動きが生まれてくるという。現場に対してはとにかく縛りたくないというのはありましたね。「これしかやっちゃいけない」というのはないので「いろんなことをやってよ」とお願いしています。
――シリアスな面も、そうでない面もある作品とのことですが、作品の方向性を少し詳しく教えてもらえますか?
―― 元永
2クールなのもあってメリハリをつけるために、戦闘がある話、ない話とかなり幅広くなっています。そもそも戦争って常に戦ってるわけじゃないので、考証の鈴木さんに聞いた上で、いろんな戦争の歴史から参考になるものを劇中に組み込んでいる形です。
日常だけの話もあるので、そこら辺は『パトレイバー』っぽく見えるかもしれないですね。リアルロボットとしてのハードなメカ戦闘も、その逆の部分も描いているので、ある種のバラエティ感というか、てんこ盛りな作品だと思います。
(C)創通・フィールズ/MJP製作委員会