マッドが語る中国アニメビジネス DCAJビジネスセミナー | アニメ!アニメ!

マッドが語る中国アニメビジネス DCAJビジネスセミナー

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 中国のアニメ市場は、現在、日本企業が参入するには最も難しい海外市場のひとつである。同時に、その大きさ、成長性から、日本企業が最も注目している市場でもある。参入したいけれど難しい、こうした状況を打開する手がかりを提供するビジネスセミナーが、2月3日、都内で開催された。
 財団法人デジタルコンテンツ協会主催によるビジネスセミナー「中国におけるアニメーションビジネスの潮流」である。プログラムでは、森祐治氏による「日本製アニメーションの中国展開方策の事例と検証」、A Go Go社 Steven Ching氏の「中国アニメーション市場参入のための法則」、マッドハウス北京の和泉將一氏の「日中合作『チベット犬』にみる中国におけるアニメーションビジネス」の3つの講演が行われた。そして最後にパネルディスカッション 「中国におけるアニメーションビジネス戦略」が設けられた。

 講演はそれぞれが、「市場分析と戦略」、「進出方法」、「共同製作」といった異なるテーマを持っており、現在の市場を多角的に知ることが出来る。なかでも印象深かったのは、マッドハウス北京の副経理である和泉將一氏の講演だ。
 中国市場が様々な方法で海外アニメーションの制限を取っている現状で、日本企業が取れる最も現実的な可能性が共同製作だからだ。しかし、実際には現段階では、その共同製作すら例が少ない。

 和泉氏が講演で取り上げたマッドハウスと中国電影集団公司との『チベット犬物語』の共同製作はそうした例としては十分過ぎるものだ。今回のビジネスの特徴は、中国の大手メディアとの映画制作というかつてない取り組みである。
 和泉氏は、共同製作におけるビジネス交渉についてはあまり語っていない。企画の実現については、中国、その核になるチベットという題材にあったのではないかと言及したのみだ。しかし、講演で紹介された共同製作のスキームからは、このなぜ?実現がかなり読み取れる。そのひとつは、両国サイドのビジネスの関わり合いが様々な局面に及んでいることだ。

 つまり、『チベット犬物語』は、製作への出資だけ、制作だけ、あるいはライセンスの展開だけにとどまらない多面的な性格を持っている。例えば、中国側は製作出資をするだけでなく、中国語圏の配給、映像パッケージ、テレビのビジネスを行う。さらに、制作の一部を中国で行う。そして、何よりも原作が中国のベストセラー小説だけに、中国のアニメといった旗印には最適だ。
 出資により経済的な利益機会を確保する一方で、日本でも評価の高いマッドハウスの制作工程の一部を行うことによる、産業育成の面もありそうだ。プリプロダクションをはじめとするクリエイティブはマッドハウスが握るとしても、総合的に見れば中国に益の大きなビジネスでないだろうか。

 一方、マッドハウスにとっては、中国電影集団公司とのビジネス実績は今後の展開に大きな力となるだろう。また、今回驚かされたのは、中国国内の商品ライセンスの展開をマッドハウス北京がセールスエージェントして行うことだ。今後、中国のビジネスを展開するうえで、同社にとって大きなアドバンテージになる。そして何よりも、中国の劇場アニメーション市場に風穴をあける意味は大きい。
 和泉氏は、今後は共同製作だけでなく、日本からの輸入にも努力をしたいと最後に語った。それも、中国に足場を築くことで、より効果的に行えるはずだ。
 
 『チベット犬物語』共同製作は、マッドハウスがこれまで中国以外、『チベット犬物語』以外で、積み重ねてきた海外共同製作の実績と経験に根ざすものであることは言うまでもない。講演でも紹介された数多くの、そして様々なパターンの海外共同製作の延長にある。
 しかし、中国側のニーズを知り、それに応えるというビジネスの考え方は、どの企業にも共通する戦略に違いない。難しいとされる中国市場も、ビジネスの基本的な考え方Win‐Win関係の構築で突破出来ることを示した貴重な講演であった。

(参考)
「チベット犬物語」共同製作の日中の役割

[日本]
出資(共同出資)
制作 (プリプロダクション・美術/音楽、原画、ポストプロダクション)
日本語版制作
中国語圏4カ国地域(中国、台湾、香港、マカオ)以外のビジネス
中国における配給、DVD、テレビ以外のライセンスビジネスの代理業務

[中国]
出資(共同出資)
制作 (動画、仕上げ、美術/音楽の監修)
日本語版を基にした中国語版の制作
中国語圏4カ国地域(中国、台湾、香港、マカオ)のビジネス
原作は中国のベストセラー小説
*講演内容と資料より作成

アジア地域におけるコンテンツ産業国際交流事業
専門家交流事業セミナー
『中国におけるアニメーションビジネスの潮流』

日時 2010月2月3日(水)
主催 財団法人デジタルコンテンツ協会

「日本製アニメーションの中国展開方策の事例と検証」
(株)シンク 代表取締役社長 森祐治

「中国アニメーション市場参入のための法則」
A Go Go Corporation President & CEO Steven Ching 

「日中合作劇場用作品『チベット犬』にみる中国におけるアニメーションビジネス」
マッドハウス北京 副経理 和泉將一

パネルディスカッション 「中国市場におけるアニメーションビジネス戦略」
モデレーター: 森祐治
パネラー: 
 マッドハウス北京 総経理 小原和夫
 慈文紫光数字影視有限公司 国内区域発行主管 潘姍
 Steven Ching 
 浙江大学影視與動漫遊戯研究中心(コンテンツビジネス研究センター)夏瑛

財団法人デジタルコンテンツ協会 /http://www.dcaj.org/
マッドハウス /http://www.madhouse.co.jp/
《animeanime》
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