「ホッタラケの島」の佐藤監督 「CGアニメーターは役者」 | アニメ!アニメ!

「ホッタラケの島」の佐藤監督 「CGアニメーターは役者」

 10月25日、東京国際交流館にて「最新3Dコンピュータグラフィクス映画『ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~』にみる演出論と制作手法をめぐる葛藤と技術的勝算」が開催された。このトークショーは、10月22日から4日間開催されたデジタルコンテンツエキスポ2009のプログラ

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 10月25日、東京国際交流館にて「最新3Dコンピュータグラフィクス映画『ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~』にみる演出論と制作手法をめぐる葛藤と技術的勝算」が開催された。このトークショーは、10月22日から4日間開催されたデジタルコンテンツエキスポ2009のプログラムの一環である。
 当日は、アニメアニメジャパンの数土直志氏がモデレーターを務め、プロダクションI.G代表取締役社長の石川光久氏と『ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~』で監督の佐藤信介氏がトークを繰り広げた。

hottarake2.jpg 最初にどうして監督が佐藤氏に決まったのかについて石川氏が語った。お話を作れること、CG技術に対して貪欲な技術があること、ハイクオリティなものを作るだけでなく、映画として暖かいものを作る資質を持っていることの3点を理由として挙げた。

 その後に佐藤氏が監督に決まっていった経緯を説明した。実際に話があったのは4年前、CGの面白いものを原作なしでやりましょうというのが発端で、流行などに依拠しない点にシンパシーを感じたという。
 佐藤氏は大学の頃に自主映画を撮っており、ぴあフィルムフェスティバルでも受賞している。ただその頃は、同じ映画仲間が賞を撮りたい、自分のことを描きたいといった理由が多いなか、皆が楽しいと思えるものを作りたいというのを動機とした人は少なかったそうだ。
 『ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~』の企画が来たときに、自身の思い描いていた自主映画の感覚にピタッときて、学生時代を思い出したと述べた。CGに関しては未だに手探り状態で、それは90年代に自身が映画業界に入って感じたことと似ているという。

 CGでの監督をやることに抵抗がなかったのは、これまでゲームのオープニングや幕間のムービーに携わることも多々あったためである。こちらでは同世代か年下だけで制作を行っているのが新鮮であるという。
 実写とアニメーションとの比較において、佐藤氏は実際にマウスを握っているアニメーターを役者に喩えた。これはアニメーションをモーションキャプチャーではなく手付けで行っていることにも起因している。現場の人に個々に話をするというより、演出の方に話をするという風にまとめ、そこから砕いてアニメーターにやってもらうのが今回のスタイルだったため、役者さんと出会ってやっている感じはあったそうだ。

 一方、石川氏は、制作のなかで取った佐藤氏へのサポートについてコメントした。CGより実写の監督の方が遥を可愛く出来るんじゃないか考えたと考えた石川氏は、3Dで日本的に可愛くするというところに敢えて挑戦していくための開発に2、3年かけたことから話を切り出した。
 サポートというのは現場もお金を出すだけではなく、作り手側だけでなく出資者側も現場のキャラクターが出来るまで見守るなどの我慢強さを見せるべきだ、これからこの作品が試金石になって継続的に環境を作らないといけないなどと力説した。

 佐藤氏は次回作で『ガンツ』の実写版制作に取り掛かっている。クランクインの前に前倒ししてカットを分析していかねばならない点では、『ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~』で経験したプロダクション管理のノウハウが生きていることを実感している。
 例えば実写の場合は、ひとところに集めてセットを見れば大体雰囲気が分かるが、CG作品となると、自分の作ったカットは見てても全体像は見ていないので、全貌が見えてる人は本当に少ないからであるという。
 『ガンツ』に関しては、そもそも映画になるのかとか、そういうこと言われれば言われるほどやる気が出てくるという気持ちでやっているそうだ。 

 最後に石川氏は、人に呼び起こさせる感動の度合いは、地味な積み重ねをどれだけ大きく積み上げるかによると締めくくった。これは、実写だからとかアニメーションだからCGだからとかでなく、映画を作るんだという環境を世の中がなかなか用意してくれないという背景も含まれていた。
【真狩祐志】

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