今期アニメが始まってから1カ月。初回の手探りを越え、各作品が掲げるテーマやキャラクターの輪郭が見えてきた。
群雄割拠のラインナップの中でも、今期は「人と人の距離の取り方」に温度のある物語が目立つ。
今回は、ジャンルは異なりつつも、他者へのまなざしや思いやりが物語を前へ進める3作品を取り上げる。和風ホラーの肌ざわり、義姉弟のホームドラマ、恋と変身の青春譚まで、多様さの中に通底する“優しさ”に注目した。
◆怪異と子どもが紡ぐ、恐怖と可笑しみの同居『令和のダラさん』

今作は、民間伝承が語り継がれる地方を舞台に、山の禁足地に住む女性の怪異・ダラさんこと屋跨斑と、彼女に全く怯えることなくフランクに接する日向と薫の三十木谷姉弟の日常を描くホラーコメディアニメである。
ダラさんは、かつて霊能力を駆使し山を守っていた巫女が、姉や村人からの裏切りに遭い殺されかけ、復讐心から悪霊である大蛇の怪異と合わさってできた存在。現代では、山に封じられてはいるものの、生真面目な巫女がベースになっているため常識的な性格だ。
屋跨斑の住む山を管理する一族の子どもである日向と薫は、そんなダラさんと出会うと物怖じすることなく距離を詰めていく。特に、ダラさんの蛇と混ざったような姿をスマホゲームに登場するナーガのようだと言い、意気揚々とコスプレさせようとする薫にはダラさんも毒気を抜かれている。
薫の周囲には薫の頼みでダラさんに合う服を作るコスプレ衣装制作が得意な薫の担任教師・筆木直道や、小学生の薫を性的に見ながらも自重し友好関係を築く近所の漫画家・五十子美和などが登場。危うい人物のように見えながらも筆木の実直さや五十子の男性恐怖症という側面などを提示し、うまくバランスをとっており、また保護者としてのダラさんを描くことで彼らとの関係が受け入れやすい。
従来ならば隔たれていた怪異と子どもの交友関係を中心に据え、タイトルに「令和」を冠する本作では、サブキャラクターにおいても一見受け入れにくい関係性が多く描かれている。

姉弟に振り回されるダラさんが描かれる現代パートは非常にコミカルである一方、巫女が怪異と合わさり今のような姿となるまでを描く過去回想は徹底してシリアスだ。暴力と人の悪意が渦巻き、グロテスクな描写もあるなど、きちんとホラーとしてとしての面目を保つ。
また現代でも、姉弟が登場しないパートで、オカルト系YouTuberが冷やかしのために禁足地に踏み入り呪物による呪いで苦しんだ際には、助けることもせず畏れられる怪異としてのダラさんが描かれている。
このように和風ホラー文法を押さえた描写を挟むことで、ダラさんにとって二人の存在の大きさがいっそう際立つ。

◆義姉弟が“家族”になるまでの、ぎこちない優しさ『うちの弟どもがすみません』

姉弟の主人公を描く今期アニメといえば『うちの弟どもがすみません』も欠かせない。母親の再婚により主人公の糸は源・洛・柊・類の成田四兄弟と義姉弟関係になるところから物語は始まる。
元々父の不在により働く母を支え、生活力を養うことを余儀なくされていた糸は、不器用ながら姉として弟たちに接しようと奮起する。培ってきた家事能力を活かし、弟たちに姉として認められるべく働く姿は健気で、かつ空回りする姿は微笑ましい。
一方で、四兄弟の長男・源は、母親を失った際に自立を意識しており、他人に頼ることが下手。引きこもって顔を見せない柊を除いて洛と類は糸を姉として受け入れているものの、源は兄として振る舞ってきた経緯から、突然現れた姉である糸とうまく接することができない。
すれ違いはありながらも、双方拒絶することはない。シングルマザーの元で育ち家族に憧れる糸も、母の死の影響を強く受けている四兄弟も、共に寂しさを抱えており、同じ家で時間を過ごすうちに家族としての絆が芽生える。互いに思いやり、優しく接し合う関係を構築し、ぎこちなさはありながらも、家族になっていく。
家族としての関係が進展する一方で、糸と源の間には同年代ということもありその距離感の近さから、互いに自覚は薄いものの恋愛感情に似たものが生まれていく。姉弟であるためにその感情をごまかし、他の感情にすり替えながら進んでいく二人の描写は緊張感を孕む。
原作が『別冊マーガレット』に連載中の少女漫画ということもあり、源が糸に非常に近い距離感で接する場面も多く、常に義家族としての関係にはとどまらないことを意識させる作劇が印象的だ。
ホームドラマでありつつ、ラブコメディとしての要素も着実に積み重ねていく『うちの弟どもがすみません』から目が離せない。

◆ 恋が暴く「自分らしさ」と、受け止め合う強さ『乙女怪獣キャラメリゼ』

今期の少女漫画原作アニメで注目すべき作品として『乙女怪獣キャラメリゼ』も挙げたい。原作は「月刊コミックアライブ」掲載とレーベル的には必ずしも少女漫画ではないが、作劇と描写は少女漫画のものに則っている。
感情が昂ると怪獣に変身してしまう病の女子高生・赤石黒絵が、イケメンで女子からの人気も高いクラスメイトの男子・南新汰に恋に落ちる物語だ。
その病から、黒絵は人との交流を避けてきた。しかし黒絵の媚びない芯のある態度と、新汰の太っていたかつての姿も肯定する強さから新汰に好かれ、黒絵自身も暗い性格であるとされ周囲から距離を置かれてきた自分に真っ直ぐ向かってくる新汰に惹かれ始める。
しかし、その恋愛感情によって自身を抑えきれなくなった黒絵は、巨大な怪獣に変身してしまう。それまでは部分的に変化する程度に留まっていた黒絵の病だが、新汰への恋心によって暴走してしまい恋の障害として変身が立ちはだかる。
その中で新汰が黒絵と変身の関係に徐々に迫り、黒絵が新汰の過去を肯定したのと似たような形で、新汰もまた病も含めて黒絵を肯定しうるような進展を見せていく。
また、本作はサブキャラクターも充実しており、怪獣を愛し黒絵を怪獣の巫女と思っている人間の友里真夏や、メイクでゴリラのような素顔を隠す河野来夢などが登場する。真夏は人間でありながら怪獣に恋をしており、怪獣と人間の間に存在する溝に、新汰と黒絵よりも前から悩まされてきた存在でもある。来夢はバカにされてきたゴリラ顔という自身のコンプレックスを化粧という努力で乗り越え、自分らしい姿・自分がなりたい姿を実現するキャラクターであり、自身の病に振り回される黒絵やかつて肥満に悩まされていたが克服した新汰に重なる。
新汰と黒絵の抱える問題と近しい属性を持つ彼女たちがどのように今後物語に関与し、本作のテーマを深めるのかも注目だ。思春期のコントロールできない衝動的な感情や、容姿によって変化する周囲、理想と実際の自分との距離など普遍的なテーマを含む本作の展開は見逃せない。

今回は障壁がありながらも、互いに歩み寄っていくキャラクターたちが魅力的な作品した。不器用ながらひたむきに関係を構築していく姿は、きっと観ているひとは心を動かされるだろう。
(C)ともつか治臣・KADOKAWA/令和のダラさん製作委員会
(C)オザキアキラ/集英社・「うちの弟どもがすみません」製作委員会
(C)蒼木スピカ/KADOKAWA/乙女怪獣キャラメリゼ製作委員会









