平成・昭和のレトロアニメを紹介する「アニメ!アニメ!」連載コーナー「平成・昭和レトロアニメのすゝめ」。今回は2006年にテレビ埼玉などで放送された『落語天女おゆい』を紹介したいと思います。
◆“寿限無”でバトル? 美少女×本格落語が融合!
『落語天女おゆい』は、主人公の少女「月島 唯」らが江戸時代にタイムスリップして妖魔と戦う美少女バトルアニメ。おもしろいのはその作品の世界観で、唯が“師匠”に弟子入りしたがるほどの落語好きだったり、落語をモチーフにした敵キャラが登場したり、天女が発する呪文が寿限無(じゅげむ)の一節だったりと、とにかく落語尽くしです。
というのも、原作を担当したのは本職の落語家である桂歌若さん。さらに落語芸術協会が全面協力する創立75周年記念作品として作られており納得の内容に。むしろ美少女バトルアニメであることが不思議なくらい、しっかりと落語を下敷きにしていました。

唯たちがタイムスリップした架空の江戸時代では妖魔や妖怪がはびこっており、それを排除するのが6人の天女と呼ばれる存在です。言葉を使う「言霊天女(2人)」、参謀役の「計略天女」ほか、「神楽天女」「機巧天女」「剣客天女」という種類があります。
その言霊天女が発するのが、寿限無の一節「やぶらこうじの ぶらこうじ」だったり、落語「死神」で死神を撃退するために用いる「あじゃらかもくれん きゅうらいそう てげれっつのぱー」という呪文でした。さらに敵キャラとして、「がしゃどくろ」で有名な浮世絵「相馬の古内裏(そうまのふるだいり)」、古典落語の「抜け雀」や「幾代餅(いくよもち)」、怪談としても有名な「牡丹灯篭(ぼたんどうろう)」などさまざまな小ネタが登場します。
おもしろいのは師匠クラスの落語家が本人役で登場しており、桂歌丸さんと三遊亭小遊三さんがなんとイケオジ化も! そのほか端役としてさまざまな落語家が登場していて、いかに落語芸術協会が本気で関わっていたのかがわかります。DVD化の際には「笑点」で告知をしたほどでした。

落語芸術協会が関わっているとは思えないほど本気の美少女バトルアニメだった本作ですが、なぜそのような作風になったのか? 原作者の桂歌若さんは大のアニメ好きということで、どうやら『サクラ大戦』をきっかけにアニメに興味を持ったとのこと。アニメディアでは『サクラ大戦』の連載コーナーを担当したり、その後も数々の作品に出演・スタッフとして関わったりしたそうです。
そのため本作もどこか『サクラ大戦』を思わせる作風に。平賀源内をレギュラー登場させ、巨大カラクリを活躍させたこともありました。
本作が放送された2006年といえば深夜のアニメ番組がすっかり定着し、「メガミマガジン」が人気を獲得していた頃。3年後には「娘TYPE」が創刊されたような時期です。
アニメといえば美少女アニメのような風潮があったため、おそらく落語芸術協会としては「そういうものか」と思ったに違いありません。それでも今振り返ってみると随分思い切った企画だったと感じます。一般的なバトルアニメとは異なり、「このネタはきっと落語由来なのかも!」と調べる楽しみもありました。
そんな本作で「これいい!」と感じた要素のひとつがオープニングテーマです。「サクラサク」のタイトルで開幕を飾るこの楽曲は、三々七拍子を取り入れた軽快なリズムと、「がんばる人を応援します!」という、元気づけられる歌詞がポジティブな楽曲となっています。作詞・作曲・歌唱は、秋葉原系アニソンバンドの「Little Non」。
ボーカル・永野希さんの透き通るような声が特徴的で、ライブではバンドメンバーの親分福田さん(ベース)、大生伊藤さん(ドラム)、谷島シュン(ギター)の3名が暴走する、笑いがありつつもパワフルな演奏でフロアを沸かせるバンドです。アニメ『こどものじかん』エンディングテーマ「ハナマル☆センセイション」や、アニメ『バトルスピリッツ 少年突破バシン』エンディングテーマ「冒険記録」なども担当しているのでご存知の方も多いはず。
希望溢れるテーマソングから始まる本作『落語天女おゆい』は、『サクラ大戦』のテイストが込められつつ、落語という本作ならではの要素が光っており今だからこそ見たい作品となっています。
「Dアニメストア」など各配信サイトで視聴可能ですから、「笑点」60周年を祝うこのタイミングにぜひいかがですか?






