リコリコ、おにぱん!、アキバ冥途戦争…2022年「オリジナルアニメ」に潜む“4つのキーワード”とは?【2022年アニメを振り返る】 | アニメ!アニメ!

リコリコ、おにぱん!、アキバ冥途戦争…2022年「オリジナルアニメ」に潜む“4つのキーワード”とは?【2022年アニメを振り返る】

間も無く2022年がまもなく終わる。今年も多くのアニメが僕らを楽しませてくれた。まずは、アニメを届けてくれた制作現場の方々に心から感謝の意を表したいと思う。ありがとうございました。

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間も無く2022年がまもなく終わる。今年も多くのアニメが僕らを楽しませてくれた。まずは、アニメを届けてくれた制作現場の方々に心から感謝の意を表したいと思う。ありがとうございました。

今まさに「今年どんなアニメがあったっけ?」と振り返っている人も多いだろう。中には自分なりの2022年ベストアニメを決めようとしている人もいるかもしれない。今回はそんな今だからこそ振り返りたい、今年放送された“オリジナルアニメ”の総括をお送りできればと思う。

原作が存在しないオリジナルアニメ。そこには“今だからこそ届けたいアニメの形”がある。それらを総括することによって、今年のアニメの“全体像”がぼんやりと浮かび上がってくると思う。
今回は筆者が考える、今年のオリジナルアニメの傾向を4つのキーワードでまとみた。そこに2022年のアニメのあり方を見てくれたら光栄だ。

■凸凹女性バディが難題に立ち向かう『リコリス・リコイル』『ユーレイデコ』

2022年放送のオリジナルアニメを語るにあたり、触れないわけにいかない一作を挙げるとしたらそれは『リコリス・リコイル』だろう。治安維持組織「DA」に所属する錦木千束と井ノ上たきなの2人は、時に反目し、時に協力しあいながらも目の前に立ちはだかる難題を解決していった。2人が物語を通して絆を深めていく姿に涙した人も多いだろう。
今まさに話題となっている“ウーマンパワー”がアニメの世界でも感じられたのではないだろうか。

この“ウーマンパワー”の流れを感じさせたオリジナルアニメは他にも多くあった。今回はその中から一作『ユーレイデコ』を挙げておきたいと思う。情報都市トムソーヤ島を舞台に、ユーレイ探偵団の活躍が描かれる本作。主人公ベリィは、ユーレイ探偵団のメンバー・ハックと出会い、後にはユーレイ探偵団のメンバーとなる。ハックと共に数々の難事件を解決していくこととなるのだ。

2作に共通するのは価値観の違う、いわば凸凹バディの2人が難題に立ち向かっている点だ。これまで全く異なる道を歩んできた千束とたきな、ベリィとハックは、相反するとすら言える価値観の持ち主。それでも、2人は互いを認め合い、お互いの欠点を埋め合うことで難題に挑んでいく。他人を認めることで彼女たちに成長を促しているのだ。

■頼りない主人公が仲間を動かしていく『機動戦士ガンダム 水星の魔女』『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』

主人公のあり方として、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』におけるスレッタ・マーキュリーと『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』における結愛せるふにも共通した一つの潮流を見ることができる。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の主人公・スレッタ・マーキュリーは内向的でコミュニケーション下手、話し方はおどおどとしており頼り甲斐のある人物像からは程遠い。同じく『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』の主人公・結愛せるふもマイペースでどこか抜けている、同じく頼り甲斐とは無縁の少女だ。

そんな見ていて危なっかしい2人は、各々にコミュニティの中に居場所を見つけていく。そのコミュニティとはスレッタにとっての「株式会社ガンダム」、せるふにとっての「DIY部」なのだが、果たして彼女たちはその中でいかなる立ち位置を築いたのだろうか。
2人の立ち位置を一言で言い表すならば、それは“潤滑油”である。2人は決して器用ではないが、それでも常に前に進もうという姿勢を崩さない。その姿勢に感化されるように、周囲の仲間たちは各々やれることを見つけ、各々に自ら行動を起こす。その結果、コミュニティは目標に向けて一歩ずつ前進していくのだ。

『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』キービジュアル(C)IMAGO/avex pictures・DIY!!製作委員会

強い牽引力で人を突き動かす、それだけがコミュニティを前進させるための方法ではない。この2作は新しいコミュニティのあり方を提示し、そこにいる新しい主人公像を提示したのだ。

■“異形”なるものに向けられる優しい眼差し『おにぱん!』『ちみも』

“異形”として恐れられてきた存在が、人間界で過ごす日常を描いた作品も多く見られたように思う。オリジナルアニメとしては、『おにぱん!』と『ちみも』がそこに該当するだろう。

『おにぱん!』に登場したのは“鬼”、そして『ちみも』に登場したのは“地獄からの使者”や魑魅魍魎……ともに旧来日本で“異形”と呼ばれ恐れられてきた存在だ。しかし、彼らは人々が暮らす世界から排斥されることはなかった。両者共に、地域に認められ共存していくこととなったのだ。

『おにぱん!』ビジュアル(C)2022 おにぱん!製作委員会

『おにぱん!』に登場したのは鬼ヶ島に住む鬼の子ども“おにっ子”たち。彼女たちは鬼のイメージアップを目的に人間界の中学校に転校し、人間たちとともに学校生活を営むこととなる。一方の『ちみも』では、「人間界地獄化計画」を実行するべく人間界に“地獄からの使者”として遣わされた地獄さんとそのしもべ・ちみもが登場する。彼らは人間界を地獄化……する前に自らの生活を成り立たせることに奔走することとなる。

異なる目的で人間の住む世界にやってきた2組。しかし彼らに対して向けられる視線は一貫して優しいものだった。人間たちは異形である彼らを決して排斥をしない。同じ仲間として扱い、別れが訪れた時には涙を流す。
多様性を認めていこうという現代の社会のあり方がそこに表れているように思う。

■主人公を支えるOVER30が大奮闘『リーマンズクラブ』『アキバ冥途戦争』

主人公の頼れるパートナーとして登場するサイドキック。彼らの持つ特性にも一つ特徴を見ることができた。その特徴、それはOVER30であるということだ。

社会人バトミントンチームの面々による仕事とスポーツの両立を描いた『リーマンズクラブ』。本作で主人公・白鳥尊と仕事・バトミントン両方面でペアを組んだのが宮澄建。営業としては成績トップ、バトミントン選手としても白鳥尊の欠点をカバーする力強い存在だった。

『リーマンズクラブ』キービジュアル(C)Team RMC/サンライトビバレッジ広報部

もう一作、「萌えと暴力について」をテーマに、秋葉原のメイドカフェをまるで極道映画のような切り口で描いたのが『アキバ冥途戦争』。本作で主人公・和平なごみをはじめとしたメイドカフェ・とんとことんを支えたのは万年嵐子。彼女は二丁拳銃を操り、高い格闘能力を誇る凄腕のメイド、その活躍なくしてはとんとことんは物語序盤で消滅していただろう。

宮澄建は32歳、万年嵐子は35歳(作品途中で36歳を迎える)。故に彼らの能力にも納得感が生まれる。言うなれば「亀の甲より年の功」、人生経験こそが彼らの能力の高さを裏打ちしているのだ。
アニメを見ることが一般化し、視聴者層の年齢も拡大した昨今。人生経験豊かなOVER 30がもっと活躍するアニメも増えていくことになるだろう。

以上、4つのキーワードから今年のオリジナルアニメを描写した。もっともっと多くの切り口から作品を描写していくこともできるだろう。今回の記事を一例として、今年のアニメを振り返ってみるのも面白いかもしれない。

《一野大悟》
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