そんな「隠れた名作」を、TVアニメ編、映画編に分けて5作品ずつ紹介。
そのうち今回は前編となる「TVアニメ編」をお届けします。
有名作品だけでは飽き足らない、そんな貪欲なアナタにオススメいたします。何本知っているかチェックしてみてください。
【灰羽連盟】『lain』の安倍吉俊のもう一つの傑作

『serial experiments lain』で知られる安倍吉俊の同人誌『オールドホームの灰羽達』を原案に、同氏がキャラクターデザインを手掛けた2002年のTVアニメ。
『lain』も隠れた名作と言われる作品ですが、こちらも負けず劣らずの良作です。
繭から生まれる、灰色の羽を持つ「灰羽」と呼ばれる少女たちの共同生活を、セピア調の映像でやさしく綴った物語。
牧歌的な街の外れで人々と交流しながら暮らす不思議な少女たちの日常生活を美しく描いています。
灰羽はなぜ繭から生まれるのか、そもそも灰羽とは何なのかといった謎よりも、少女たちのささやかな生活や仕事、街の人々との交流にフォーカスし、支え合って生きることの大切さと素晴らしさを謳い上げた、癒し効果抜群の作品です。
【Ergo Proxy(エルゴプラクシー)】海外で人気の高い哲学的ダークSF
![Ergo Proxy(C)manglobe/Geneon Universal Entertainment./GENEON[USA]/WOWOW](https://animeanime.jp/imgs/zoom/336420.jpg)
2006年、WOWOWで放送されたディストピアSF作品。加入者だけが視聴できるスクランブル放送であったため、視聴できる人が限られていました。
監督は『虐殺器官』の村瀬修功、チーフライターに『交響詩篇エウレカセブン』の佐藤大、キャラクターデザインは『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズの恩田尚之など実力派スタッフが参加。
主題歌にはイギリスのロックバンド、レディオヘッドの曲を採用しています。
焦土と化した世界の中で、唯一人間が豊かに生きられるドーム型の都市ロムドで人々は「オートレイヴ」と呼ばれるロボットとともに従順な「良き市民」として生きています。
ある日、オートレイヴが自我を持つウイルスに感染する事件が発生、さらに謎の怪物の襲撃事件も起き、捜査官リル・メイヤーは2つの事件の真相を追います。
その過程で、気弱な青年ビンセントが事件に関わっていることを突き止め、ロムド上層部が隠す世界の秘密や怪物の正体を突き止めるため、荒廃したドームの外に旅に出るという物語です。
クールなキャラクターデザインに緻密な世界観、哲学的な物語展開で、海外で高く評価されている作品です。
【カイバ】湯浅政明監督が手塚治虫タッチに挑んだ意欲作
日本アニメきっての個性派監督で海外での評価も非常に高い湯浅政明監督のオリジナルTVシリーズ。
2008年にWOWOWでスクランブル放送された作品で、難解な内容ながら中毒性の高いアニメーション映像でコアなファンを魅了しました。

舞台は記憶をデータ化し、肉体を乗り換え可能になった異世界。記憶を失った主人公のカイバが、自分が何者かを探るために宇宙を旅して様々な人と出会っていく物語です。
違法な記憶改ざんや肉体の売買もされている混沌とした世界で、人間の存在の本質に迫るハードな内容ですが、それを手塚治虫風のキャラクターデザインとメルヘンチックなビジュアル、縦横無尽に変化するアニメーションで描く意欲的な作品でもあります。
流行にとらわれず、多彩な作風とテーマに挑戦する湯浅監督の実験精神に溢れています。
【半分の月がのぼる空】名作ライトノベルをアニメ化

実写映画&ドラマにもなった、橋本紡の傑作ライトノベルを全6話でアニメ化した作品。
不治の病に侵された少女と同じ病院に入院することになった少年との切ない恋模様を静かなタッチで描いています。
短い話数に原作の重要なエッセンスをしっかりと取り込み、的確にまとめています。
SFでもファンタジーでもラブコメでもなく、平凡な少年少女の過ごす日常を淡々と描いていますが、迫りくる死が物語に緊張感を与え、限りある命の中で大切なものを求めて生きることの大切さを訴えかけてきます。
主な舞台は病院内ですが、原作者の地元である伊勢の名所である砲台山も重要な場面で登場し、聖地巡礼も盛んな作品です。
【GOD EATER(ゴッドイーター)】革新的照明技術でアニメ映像を刷新

バンダイナムコから発売されている同名ゲームを原作に、ufotableが革新的な映像作りに挑んだSFアニメ。アラガミと呼ばれる謎の生命体に脅かされる人類の戦いを描いています。
1クールの放送中に何度も特別番組を挟んで本編の放送延期が繰り返されたせいか、最後まで視聴できた人は少なかったかもしれません。
特徴は、一般的なアニメとは違った、照明の設計です。実写映画のようにメインのキーライト、メインの反対に設置するフィルライト、トップライトの3点照明を基本として、キャラクターの陰影が深く、背景により馴染んだ緻密なビジュアルに。新たなアニメ表現に挑戦しています。
その意欲的な試みだけでなく、ストーリーも非常にエキサイティングで、放送時は度重なる延期でしっかりストーリーを追えなかった視聴者も多かったかもしれませんが、改めて通して観ると脚本も完成度の高い作品です。