■埋もれないように工夫した『02』
――『02』放送当時のお話もうかがえればと思います。今も心に残っているアフレコのエピソードはありますか?
遠近:『02』も『アドベンチャー』も、デジモンたちはみんなキャラが濃いんです。でも、ホークモンはほかのデジモンに比べるとそれほどキャラが濃くないので……。
一同:ええー!?
遠近:自分では埋もれないようにしないといけないと思っていたんです(笑)。毎回濃くするために演技面でも冒険していたので、当時のことは今でもよく覚えています。
京役の夏樹リオさんに「今の演技大丈夫だった?」と相談したときもありました。

浦和:アフレコではやりたい放題やっていたと思っていました(笑)。
遠近:濃いんだもん、あなたたちが!
野田:そんなことないです(笑)。
遠近:レギュラー陣はもちろん、ゲストにいらっしゃる方々もかなり個性的だったので、普通に演じてはいけない作品なんだと思っていました(笑)。
デジモンはかなり種類が多いので、ほかのキャラクターに似てはいけないし埋もれてもいけない。アフレコは戦いの日々で、声優として成長させていただいたなあ、と感じています。

――高橋さんは、ワームモンを演じていたときに心に残ったことはありますか?
高橋:ワームモンがひどい目に遭ったときは、自分自身も身を切られるような思いでした。
当時、ストーリーの展開を最初から知ったうえで演じていたので、『02』を見ている近所の子どもから「直(なお)にいの役は、悪いデジモンなの?」と聞かれたときはもどかしくて。本当はいいやつだと言いたいのに言えない。「そうだね。哀しいね……」としか返せませんでした。
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――野田さん演じるブイモンは、『02』の象徴ともいえるキャラクターです。『アドベンチャー』のアグモンからバトンを引き継ぐにあたり、意識していたことはありましたか?
野田:『アドベンチャー』で築かれた世界観に入っていくので、とにかく勢いだけは落とさずに演じようと思っていました。ブイモンは文字通りの石頭なので、「壁にぶつかるまで猪突猛進で行ってしまえ!」と。
先輩についていくだけではなく、気持ちだけなら並び立てるようにアフレコに臨んでいました。

――浦和さん演じるアルマジモンは名古屋弁が特徴的なキャラクターです。もともと名古屋弁に詳しかったのでしょうか?
浦和:私の出身は名古屋ではないのですが、名古屋弁のお芝居をした経験はあったのでアルマジモンのセリフにアドバイスをしたこともありました。本作でも「だぎゃ!」が聞きどころです(笑)。
■デジモンを演じていてよかった
――『02』から約20年経ちますが、これまで「デジモンを演じていてよかった」と感じた瞬間はありましたか?
高橋:普通なら密に話せない人とも『デジモン』の話題で距離が縮まって嬉しく思います。最近いろんな現場で「『02』を見ていました」と言われる機会がありました。
世代は違っても、ちょっと進化のセリフを言ってあげると叫ぶくらいに喜んでくれるんです(笑)。
同時に、当時の子どもたちがこんなに大人になっているのか、と時の流れも実感しました。
野田:子どもも大人も世代を超えて話せる作品に関われたのは嬉しいです。甥っ子が『02』世代なので、「今度『デジモン』映画に出るよ」と伝えたらニヤっと笑ってくれました。
あと、普段は近所迷惑になるのでなかなか叫べないのですが、『デジモン』の現場では技名などを思いっきり叫べるのでスカッとします(笑)。
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――技名はやはり叫びたくなるのですね。
野田:叫びたいです! 本作でも気持ちよく叫ばせていただきました。
遠近:僕も技名を叫ぶのは楽しいです。デジモンはたくさん進化するので、さまざまな声を出せたのもよかったと思っています。
ほかの作品に出るときに「シュリモン風に」、「ポロモンっぽく」と台本に書き込むことも多くて(笑)。
『デジモン』で多くのパターンを演じていたからこそ、自分のレパートリーも増えました。『02』を演じている1年間は冒険の連続でしたが、今となってはとても大切な財産になっています。
浦和:『02』と向き合っていた1年間は夢の中にいるようで、常に「デジモンを演じていてよかった」と思っていました。
進化や兼ね役で何役も演じたり、キャラクターとして歌も歌わせていただいたりと、あまりにも濃密な1年間。最終回が近づくにつれ夢から覚めてしまうのが寂しくて泣きそうになった日もありました。
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