アニメ制作技術の総合イベント「あにつく2018」のセミナー「『SSSS.GRIDMAN』OA直前緊急座談会」が2018年9月24日に行われた。トリガーからは雨宮哲監督と竹内雅人ラインプロデューサー、グラフィニカからは3DCG監督の宮風慎一氏とモデリングディレクターの板橋紗綾香氏が登壇し、2018年秋の新作TVアニメについてトークを披露した。本作は1993年に放送された円谷プロダクションの特撮TVドラマ『電光超人グリッドマン』が原作。2015年には短編映像シリーズ企画「日本アニメ(ーター)見本市」にて『電光超人グリッドマン boys invent great hero』が制作され、このたび完全新作としてTVシリーズ化された。グリッドマンデザインは『ウルトラマンR/B』など、近年の「ウルトラシリーズ」でキャラデザを手がける後藤正行が担当。後藤はアニメーターの経験があり、絵にしたときも芝居を付けやすいデザインを作れる点などがオファーの理由だった。今回のデザインは目の上の「ひさし」が特徴だ。特撮の場合はスーツアクターの視界を妨げてしまうため避けられることもあるが、アニメでは実写の制限や予算を気にせずにデザインできるため、積極的に取り入れてもらった。3DCGでグリッドマンを表現する際には、影を体に貼り付かせて、光源で影が変化しない方針を採用した。それによってセルルックの質感が強まり、アニメらしさが生まれている。怪獣デザインのデザイナーも特撮のベテランスタッフを中心に依頼した。雨宮監督は「怪獣は着ぐるみをイメージしている」とコメント。細部をリアルにすると洋画のクリーチャーの方向性になってしまうため、あくまで怪獣らしさを目指したことを明かす。怪獣によっては、スプレーで吹き付けたようなカラーグラデーションが付いていたり、首のシワの部分に覗き穴があったりと、特撮愛が詰まった遊び心も取り入れた。怪獣の歩き方についても監督は「足が上がらないんですよ」と独特のこだわりを口にする。「初代ゴジラから足は摺るものなんです」と語ると会場から笑い声が起きた。後半はPVの生オーディオコメンタリーに突入。約1分のPVを一時停止しながら、映像に込めた意図をフレーム単位で解き明かしていった。17秒目の電柱は『グリッドマン』の原作においても重要なモチーフであり、背景美術ではなくセルで表現している。監督は「電柱をキャラやメカと同じように、わざと存在感が出るように描いています」とコメント。その理由について、特撮関係者に「特撮パートとドラマパートの地続き感はどうやって生まれるのか?」と聞いたときに「どちらのパートも同じ物を映しているからだ」と教わったからだという。そのため『SSSS.GRIDMAN』でもさまざまな場面で電柱や電線を描いている。背景と馴染ませるのは非常に大変だったが、監督は「描いた分の労力は上手く出ていると思います」と仕上がりに自信を見せた。53秒目に映るパソコン「ジャンク」は原作に登場するアイテムであり、こちらもほぼセルで描かれている。直線が多いので描くのは簡単そうに思えてしまうが、実際は細かい汚れを付けるなど、多くの指示が必要で非常に大変だったという。竹内プロデューサーは「ジャンクはキャラなんです!」と打ち合わせで熱く語り、とくに力を注いでもらったと打ち明けた。さらに47秒目の傘は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』で電柱を大量に描いた田中達也が担当している。「電柱と同じ感じで描いてください」とオファーをしたそうだ。監督は要所にセルを使う理由について「全体的な密度が上がる」ことを挙げる。「セルで描いているということは、きっと何かがあるんだろう」と視聴者に感じてもらえば、ストーリーをより楽しんでもらえると語った。ヒーローや怪獣はもちろん、細かい部分にも注目すれば、作品をより深く味わえそうだ。
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