■タクヤはドM? ふたりが捉えるキャラクター像
――演じるにあたって、この世界観やこのキャラクターならではの意識したポイントは?
花澤
ユキは、彼女が何かアクションを起こしてしまうと、世界すらも変えてしまうかもしれないポジションにいる。そんな彼女ならではの心の動きを大事にしながら演じさせていただきました。
スタッフのみなさんとも、ユキちゃんの弱さも強さも、ロストに向かうまでの人間の本質みたいなモノが出てくる部分をみんなで共有しながら演じました。ユキに憑依したような感覚でしたね。
それぐらい現場の一体感があったので「終わったらちょっと乾杯しません?」みたいなノリでしたよね。
杉田
でも、この人(『消滅都市』シリーズディレクターの下田翔大さん。インタビューに同席していた)、自分が執筆した「1度目の消滅」と「失われし世界」までの収録が終わったら帰っちゃいましたからね。
なのでタクヤが憤っているときの声が、本気で怒っている。
花澤
そうだったんですか(笑)。
――(笑)。
杉田
それはさておき、本気だからこそ引き出されるタクヤのニュアンスもありますし、花澤さんの声を聴いて「そうくるか」と思わされ、引き出された部分はあります。
――謎が多いストーリーなうえ、キャラクターが本音を口にしないこともあり、芝居がすごく難しそうです。
花澤
そうですね。セリフでの説明が本当になくて、思っていることとは別のことを言ってばかり……特にタクヤとユキのやり取りは、一向に心の距離が縮まらないんです。
ゲームでは喧嘩できるほど仲が良い感じになっていきますが、アニメでは(もう一度出会いから描かれるので)それすらお預け状態だったのが辛かったですね。油断すると仲良くしたくなっちゃうんですよね。
杉田
タクヤは元カノのユミコ(リサーチャー)に“バブみ”を感じてすぐ甘えはじめますしね。
リサーチャーとなんで別れたのかを中恵(光城)さんと話したことがあるんですけど、僕の結論は「ふたりともドMだから、互いに譲り合ってうまくいかない」。
一方、ユキはドSですね。当初はタクヤが“本能”でユキが“理性”なのかと思ったら、実はどっちも“本能”に忠実だった。
なのでタクヤは、そのMっ気をいかに出さないように演じるか考えましたね。
――(笑)。
花澤
タクヤは、セリフの字面だけを見るとすごく冷たい男なんですけど、杉田さんの声が入ると、「本当はいい人なんだろうな」って優しさがにじみ出るんですよね。
なのでユキも安心してしゃべれるのかなって。そう思わせるのがスゴイですよね。
杉田
実は主人公らしいのってアキラなんですよ。かっこいい容姿、かっこいい声、見守りスタンスと、主人公要素が揃っているので「うわっ、敵わねぇ!」って思っています。
花澤
たしかに守ってくれる感じありますよね(笑)。
杉田
そういったキャラクターの性質が映像ではにじみ出てくると思うので、ゲームでは描かれない日常会話のシーンは必見ですよ。
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