ガンダムブランドを支えるDNAとは? サンライズ設立46年の歩み、今後の展望 小形Pが語る【インタビュー】 2ページ目 | アニメ!アニメ!

ガンダムブランドを支えるDNAとは? サンライズ設立46年の歩み、今後の展望 小形Pが語る【インタビュー】

アニメサイト連合企画「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」の第8弾は、サンライズの小形尚弘氏にインタビュー。サンライズとはどんなスタジオなのか? その強さの秘密は?話を聞いた。

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■メカ作画の強さ、CGへの挑戦


――いまサンライズ全体でスタジオの数はどのぐらいですか?

小形
CGスタジオも含めて9つですね。

――それはバンダイナムコピクチャーズ(※1)も含めてですか?

小形
いや、含めずに9つのスタジオです。スタジオによっては複数作品をやっている場合もあって、例えば第1スタジオは2ライン(※2)に近い感じです。

いまサンライズでは、9つのスタジオを第1企画制作部と第2企画制作部に分けて、第1のほうを私が、第2のほうを『ラブライブ!』のプロデューサーの平山(理志)がゼネラルマネージャーとなって企画制作しています。
ちなみに、バンダイナムコピクチャーズはA、B、C、D、E、Fの6つのスタジオと、デジタル動画を手掛ける大阪スタジオがあります。

(※1)バンダイナムコピクチャーズ:2015年にサンライズから分社化。ファミリー向けのキャラクターマーチャンダイジング中心の作品を得意としている。

(※2)アニメーションスタジオでは作品ごとに制作チームが組まれており、チームごとに“ライン”と呼ばれている。


――スタジオごとの特徴はあるんですか?

小形
かなりあります。もうほぼ10年間、10ぐらいのスタジオが常時稼働していますが、それぞれがしっかりと特徴を出しています。
プロデューサーがプロジェクトのトップになって主要スタッフを決めたり、経営を独立採算のかたちでやっているので、プロデューサーの色がかなり出やすいです。

――各スタジオの結束は強いのでしょか?

小形
良い意味で皆ライバル同士ですね。他のスタジオの作品のことを意識して、俺のほうがすごいものを作ってやると。
これが『ガンダム』から『ラブライブ!』まで、いろんな幅広いジャンルをやっていける強さじゃないかなと思います。

それと一番大きいのはバンダイナムコグループの一員ということで、グループ会社と連携してゲームにもなるし、マーチャンダイズも進む。ビジネスに大きな広がりを持てます。
自分たちが作ったものを世界に広げる可能性があるのも含めて、僕らにとっても非常にやりがいがあります。


――業界全体でCGの導入が進んでいますが、サンライズのスタジオの中ではどのようになっていますか?

小形
作品によって違いますね。D.I.D.スタジオというCGに特化したスタジオは『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』やバンダイナムコピクチャーズの『アイカツ!』や『バトルスピリッツ』シリーズのCG全般を担当しています。
その他にも、『UC』、『NT』ではスタジオの中にCGのスタッフが常駐してもらっていたり、『ラブライブ!』は他のCG会社さんと組んだり。作品の方向性によって、組む相手を変えながらというのが現状です。

――例えば11月30日に公開された『NT』ではどの程度がCGなのでしょうか? メカのシーンなどは?

小形
これもサンライズの特徴ですけど、フル3Dの戦闘シーンは『THE ORIGIN』ぐらいです。
1スタ(第1スタジオ)の『UC』から『ガンダム Gのレコンギスタ』、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』、『NT』に続くライン。3スタ(第3スタジオ)の『ビルドダイバーズ』、『オルフェンズ』はほぼ9割が手描きです。

『UC』では、ユニコーンガンダムの変形シーンは3Dにしましたが、それ以外は全部手描きです。
自分で頼んでおきながら、よくこんなメカを描けるなって思うぐらいです。『NT』も当初は半分ぐらいを3Dと考えましたが、結局手描きになってしまいました。

――その理由はこだわりですか?

小形
クリエイターから手描きでやりたいと。世界を見廻しても手描きでこのクラスのロボットアニメをやれるのは、サンライズしかないはずです。あとは数社だけ。
メカを描く若い人はそんなにおらず、仕事が随時あるところも限られますから。

個人的にも、手描きのメカは見ていて気持ちいい。それで手描きにしたいんですけど、ただ最近の問題点は皆さんが年齢を重ねてきているので、体力的な問題もあります。
あとはメカ作画の動画を割れる人(※3)が少ない。年々メカを手描きでやるのは難しくなって、考えないといけない頃合いにきています。

今後は3Dを取り込みながら、ここぞというところに手描きのリソースを使っていくというのが流れになるんじゃないかと思っています。

(※3)アニメーションの制作では原画アニメーターの描いた絵に、動画アニメーターがさらに細かい動きの絵をつけていく。これを動画を割るという。


――先ほどから出てくるCGスタジオのD.I.D.は、どういうスタジオで、いつ頃から立ち上げたものですか?

小形
もともとはサンライズのデジタル部門として1990年代に立ち上げました。
作品としては『機動戦士ガンダム MS IGLOO』が始まりで、あとはサンライズの作品に出てくるモニター類だったりCGカットを担当していました。

――そうした取り組みをさらに進めてフルCGをやるといった構想はあるのですか?

小形
僕は旧い世代なので手描きのアニメーションを見て、グッとくるものがあるのですが、今の世代は3Dに対するハードルはない状態です。
うまくバランスを取りながら世界展開をするようなマス向け作品はフル3Dを積極的にやっていくべきだと思います。

ただ逆を返すと、ディズニーさんは手描きのメカアニメは絶対やらないと思うんですよね。ニッチな部分ですがトップを取れる、そんな強みがあると思います。

――手描きのメカ作画で人がいないとありました。そうしたところの対策はあるのですか?

小形
サンライズが過去にやっていた作画塾を今年から再開しています。作画監督やキャラクターデザイン、原画クラスをどんどん育てようというプロジェクトで、第1期からの卒業生はすでに現場で活躍していて、『NT』のキャラクターデザインの金(世俊)くんや、『ラブライブ!』のキャラクターデザインの室田(雄平)くんも作画塾出身です。

――作画塾のもともとのスタートは?

小形
2005年から2011年まで6年間続けて、人材輩出と成果が出ました。
そこで一度、落ち着いたのですけど、昨今の人手不足や、育てる環境の必要性を再認識して、第2企画制作部の平山を塾長として再開することになりました。
塾生たちが再び会社の基盤になってくれるのは大事なことですから。会社としてもそこに支援したいと。

1年間勉強してもらって、原画マンとしてしっかりやっていけるような育成を目指しています。

――環境を整えば、人が育ってくということでしょうか?

小形
才能自体を育てるのはなかなか難しいです。ただサンライズはスタジオ数や作品が多いので、才能のある人には様々なチャンスが転がっています。

――腕があれば、作画塾に参加して、将来が開ける。

小形
新人の作画マンはなかなか食べていくのは大変ですから。そこを含めて一人前になるまでのサポートをし、さらにサンライズの作品でチャンスを得てというかたちです。



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《数土直志》
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