■悪役を演じるうえの心得
――悪役を演じるに当たっての心構えってあるのでしょうか?
中尾
フリーザはもう、悪の権化みたいに言われてますからね。でも、悪役って演じるのが楽しいんですよ。
収録スタジオで野沢さんから「ホントにフリーザは嫌いっ!」って言われるくらいで、それは自分の中では最高の褒め言葉だと思っています。
やはり悪役は嫌われてナンボなので。嫌われ方と一口に言っても“いい嫌われ方”ができれば最高ですね。
――今回の映画ではフリーザの幼少期も描かれます。
中尾
フリーザだけではなくて、悟空、ベジータ、ブロリーと、それぞれの時間軸と関係性が描かれていきます。それがうまく交わり合っているのが面白いですね。
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――パラガスは、その関係性をつなぐ“かすがい”のような立ち位置です。
宝亀
演じていて、親子の関係性を考えましたね。子どもが非常に高い能力を持っていたとして、うまく育て上げて立派な人物になってくれればいいんだけど、力があったばかりに親の方がよくないことを企んでしまって、どツボにハマっていく。そういう悲しさを感じていました。
電撃が流れる首輪を着けてまでブロリーを制御する姿を見ると、復讐のために徹底して利用しつくそうとも思える。
でも、もしかしたら心の中では泣きながらスイッチをオンにしていたのかな、という思いもありましたね。
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島田
ブロリーにしても、もしかしたら戦っているうちに悲しい気持ちが目覚めているではないかと感じました。
眼の前の敵を倒そうという戦闘民族の本能みたいなものはあったと思うんですけど、あれだけ激しい戦いが続くと「戦うってことは何なのだろう」という気持ちが目覚めてきてもおかしくないだろうと。
そういった感情が、今後のブロリーの命題になっていくのではないかという気すらします。
――フリーザもブロリーも、今後も悟空のライバルとしての存在感をさらに増す可能性がありそうですよね。その一方で、ドラゴンボールらしいコメディ色あふれるシーンも用意されています。
中尾
フリーザのドラゴンボールへの願いが「そんなことかよ!」ってツッコミを入れたくなりますよね。第二形態のままでいいじゃないかって。なんなら私自身も、その願いを叶えてほしい(笑)。
シリアスな中にもクスッと笑えるシーンがポンポンと入ってくるのが、鳥山先生の世界観ですよね。後半にもフリーザが“割を食う”シーンがあるのですが、そこは見てのお楽しみということで。
島田
容器に入った液体の飲み方がわからなくて開けてもらうシーンは、楽しくもあり物悲しくもあります。しかもゴクゴクと飲み干して「うまい、これはなんだ?」と聞いたら、実は水だった。
それってブロリーがそれまで生き抜いてきた過酷な環境には、水という存在がなかったということですよね。きっと自分で倒した、怪物たちの肉や体液を口にして生き延びていたんでしょう。翻って、地球には水が豊富に溢れていて本当にありがたいなと。
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