“90年代的作家性の強いアニメを目指した”「UNDER THE DOG Jumbled」から見るクラファンの可能性 | アニメ!アニメ!

“90年代的作家性の強いアニメを目指した”「UNDER THE DOG Jumbled」から見るクラファンの可能性

6月23日より2週間限定で上映される映画『UNDER THE DOG Jumbled』より、原作・イシイジロウ氏にインタビュー。既存のTVアニメでは実現しにくい複雑かつ重厚な設定と世界観で観る者を圧倒する本作はいかにして生まれたのか訊いた

インタビュー
(C)2014 Jiro Ishii (C)2014 Yusuke Kozaki (C)2015 Under the Dog,LLC (C)2018 KINEMA CITRUS/EXIT TUNES
  • (C)2014 Jiro Ishii (C)2014 Yusuke Kozaki (C)2015 Under the Dog,LLC (C)2018 KINEMA CITRUS/EXIT TUNES
  • (C)2014 Jiro Ishii (C)2014 Yusuke Kozaki (C)2015 Under the Dog,LLC (C)2018 KINEMA CITRUS/EXIT TUNES
  • イシイジロウ氏
  • イシイジロウ氏
  • (C)2014 Jiro Ishii (C)2014 Yusuke Kozaki (C)2015 Under the Dog,LLC (C)2018 KINEMA CITRUS/EXIT TUNES
  • (C)2014 Jiro Ishii (C)2014 Yusuke Kozaki (C)2015 Under the Dog,LLC (C)2018 KINEMA CITRUS/EXIT TUNES
クラウドファンディングでアニメ作品として当時史上最高額を集めて製作され話題となった『UNDER THE DOG Jumbled』が6月23日からいよいよ劇場公開となる。

本作は、2014年8月にアメリカのクラウドファンディングサイト、キックスターターで立ち上がり制作された『UNDER THE DOG Episode 0』と、実写作品『Overture to UNDER THE DOG』に、新規制作されたテーマソング『少女たちのメロディ』が三位一体となったもの。コミカルショートムービー「アンシアちゃん」も同時上映される。

既存のTVアニメでは実現しにくい複雑かつ重厚な設定と世界観で観る者を圧倒する本作はいかにして生まれたのか。
今回は生みの親とも言える原作者、イシイジロウ氏にインタビューを敢行。ゼネラルプロデューサーの森本浩二氏にも加わっていただき、『この世界の片隅に』や『リトルウィッチアカデミア』などでも利用され、アニメ作品の新たな資金源として注目を集めたクラウドファンディングの可能性と実態、本作の魅力について話をうかがった。
[取材・構成=杉本穂高]

UNDER THE DOG Jumbled


(C)2014 Jiro Ishii (C)2014 Yusuke Kozaki (C)2015 Under the Dog,LLC (C)2018 KINEMA CITRUS/EXIT TUNES
2018年6月23日(土)~7月6日(金)【2週間限定公開】
東京:新宿バルト9、大阪:梅田ブルク7、名古屋:109シネマズ名古屋
http://under-the-dog.com/jumbled/

【あらすじ】
国連管轄の特殊部隊「フラワーズ」に所属する冬月ハナ(大久保瑠美)は、ある日任務遂行のため、海沿いのとある高校に転入する。任務対象は同じクラスの七瀬俊一という少年。同じ頃、一人の中年男性が俊一を訪ねて高校にやってくるが、さらにその男性を米軍が追うようにして高校へ軍事行動を開始。さらにもう一人の少女が戦場と化した高校へと向かう……。

イシイジロウ氏

■90年代的作家性の強いアニメを目指した


――この作品は、元々はイシイさんが97年に26話の2クールのTVアニメとして構想したものだったそうですが、この構想はどのように生まれたのでしょうか。

イシイジロウ(以下イシイ)
最初は僕が作っていたゲームのスピンオフ企画みたいな形で考えていました。『Little Lovers』という美少女育成シミュレーションゲームのキャラたちをベースにしてハードボイルドSFを作ろうという発想でした。
ゲームの基本設定とは全く違うものとして作ろうとしていたんです。実際に制作スタジオさんともアニメ化の話が進んでいました。

――当時もアニメ化に向けて具体的な動きがあったんですね。その企画が実現しなかったのはなぜだったのでしょうか。

イシイ
当時は、ゲームをベースに、ゲームメーカーとアニメ会社が真剣に動いて成功した事例があまりまだなかった、ということだと思います。
今ならゲームメーカーがアニメ化を考えるのは当たり前の動きですが、当時はそういう発想はあまりなくて、アニメとしてパッケージが売れるかどうかで企画を考える時代だったんだと思います。

――当時の構想と今回実現したものとでは相違点はあるのですか。

イシイ
大きくは変わってないのですが、変更点はいくつかあって、初めは主人公のアンシアとハナが一人のキャラクターだったんです。当時は、少女がリアルな銃を構えて大人たちをバッタバッタと倒すだけで十分新しかったんです。『レオン』のマチルダみたいな女の子が銃を持ってギャングや軍と戦う……そんなリュック・ベッソン監督のようなイメージをアニメにしたかった。それに加えて、97年は『新世紀エヴァンゲリオン』の影響が強かったので、エヴァ+リュック・ベッソンというイメージでした。

ただそういったイメージのものは、それ以降たくさん作られて、97年には新しかったですが、2010年代には再構築する必要がありました。アメリカのOTACONで企画発表した時も「ああ、そういうのよくあるよね。Gun and Girlね」みたいな反応もあったほどです。
当時は刺激があったけど、どんどん量産されていって、じゃあ『UNDER THE DOG』で今なにができるか考えた時に、ハナとアンシアを分けたわけです。
アンシアは、草薙素子のような兵器としての説得力があるキャラですが、ハナは“アンチGun and Girl”メージで、普通の少女が銃を持たされている感じなんです。そこが97年版と2016年番の一番大きな違いですね。

――19年経ってそのジャンルがやり尽くされた結果、違いが現れてきたということですね。それとこの作品は、2020年の東京オリンピックがテロで中止になったという設定が導入されていますが、これも現代を意識しての変更点ですか。

イシイ
97年度版の頃から、元々この作品が持っている要素として、米国の影響力が異常に強い日本というのがありました。それと主人公たちの所属するフラワーズという組織も、そこに属しているキャラクターはみんな第二次世界大戦の敗戦国出身という設定だったんです。戦勝国が国連の下で、敗戦国でフラワーズ実験というのをやっていて、その影響を引き継いだ子どもたちなんですね。

日本では米国占領下の沖縄でその実験が行われていて、ソ連領だった東欧でもそれが行われていたという設定でした。それを日本が国連の名を借りて集めて、部隊を作っているという複雑な設定が97年版にはあったんです。
で、そういった米軍の影響が大きくなる状況が生まれるとしたらオリンピックのテロかなと。日本で9.11のようなことがもし起こったら、しかもそのテロが米国にも影響するようなものであれば、米軍が日本に介入してくるだろうと。

(C)2014 Jiro Ishii (C)2014 Yusuke Kozaki (C)2015 Under the Dog,LLC (C)2018 KINEMA CITRUS/EXIT TUNES
――政治的にかなり複雑な設定ですが、これをもしテレビでやるとなると、なかなか難しい面があったのではないかと思うのですが。

イシイ
当時はTVアニメもいろんなチャレンジングなことをしていましたが、今の環境だと難しいかもしれませんね。

――今回、クラウドファンディングで今のテレビでは難しい企画が成り立ったというのがすごく意義深いと思います。

イシイ
そうですね。『UNDER THE DOG』を今の深夜アニメで人気が出るパターンに改変するのではなく、海外の、特にアメリカのアニメファンが喜ぶ形のリアリティ改変だけで済んだというのはキックスターターの良い点だったと思います。

僕は今のテレビアニメも好きですけど、90年代のアメリカ人が熱狂していたい時の日本のアニメーションというものは、最近日本で人気がなかったり、尖りすぎていて放送できないとか、いろんな要素でメジャーではなくなっている。そういう作家性の強いものが作れたというのは大きな意味があると思いますね。

――バイオレンス描写などもかなり攻めてますよね。

イシイ
そうですね。その辺りの描写もできるだけ思いっきりやろうと。

――今回製作されたものはエピソード0となっています。

森本
元々、TVシリーズ26話で構想していたものを、どう1本にまとめるかというところからスタートしたんですけど、やはりそれはなかなか難しい。なので『UNDER THE DOG』が持っている構造をわかるものにして、続きを観たいと思ってもらえるようなものを作りましょうということになりました。
《杉本穂高》
【注目の記事】[PR]
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集