「今までが日本アニメにとってのボーナスタイム」識者が語る中国アニメ市場のリアルは? | アニメ!アニメ!

「今までが日本アニメにとってのボーナスタイム」識者が語る中国アニメ市場のリアルは?

中国アニメ市場のリアルを、中国オタク事情に精通している百元籠羊氏にインタビュー。実際のところは中国のアニメ愛好家にとって日本のアニメはどういう位置づけなのかを訊いた。

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  • (c)2015 October Animation Studio,HG Entertainment
海外においても人気な日本のアニメですが、作品の売り上げに大きく貢献しているのがお隣の中国です。日本動画協会による「アニメ産業レポート2017」では、「ビリビリ動画」などの中国大手プラットフォームによる日本のアニメ爆買いが報告され、国別海外展開状況でも中国が1位を記録しています。

しかし一方、日本でも公開された中国国内興収192億円を記録したアニメ映画『西遊記之大聖帰来』(邦題:『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』)に代表されるように、近年では中国国産アニメの人気ぶりが取りざたされるようになりました。
4月5日から6日まで東京ビッグサイトで開催された国内最大規模のコンテンツビジネス総合展示会「コンテンツ東京2018」のセミナー「中国アニメ配信事業の最前線と未来」(http://www.animeanime.biz/archives/44680)においても、中国アニメ市場規模の拡大と国産アニメの作画などのクオリティーが高まっていることが報告されています。

国内から見ている限り、「日本のオタクイベントにもやって来るぐらい、中国の人は日本のアニメが大好き」というイメージが強くなりがちですが、実際のところは中国のアニメ愛好家にとって日本のアニメはどういう位置づけなのでしょうか。
中国でオタク文化が形成され始めた1993年頃から2006年まで中国に滞在し、長年中国のオタク文化を見てきて『オタ中国人の憂鬱 怒れる中国人を脱力させる日本の萌え力』を出版、ブログ「『日中文化交流』と書いてオタ活動と読む」で中国オタク事情を発信している百元籠羊(ひゃくげん・かごひつじ)さんにお聞きしました。
[取材・構成=乃木章]

百元籠羊さん

■中国におけるアニメ視聴の環境



――中国でアニメはどのように広まったのでしょうか?

百元籠羊(以下、百元)
中国アニメは子ども向けの娯楽として長年続いてきましたが、近年は青少年向けの娯楽としてオタク要素も含んだ作品が増え、2次元と呼ばれるジャンルがいよいよ確立されてきました。環境的な面ではアニメの放送はテレビから動画サイト配信に移行しまして、現地の制度的な障害も少なくなって配信ペースも上がり、商業的に扱える若者向けコンテンツとして存在感が増しています。

さらに、近年はビジネス的に成功させようという意図を持った企業からの金銭的な後押しも増え、良質な作品を作ろうという動きが活発になっています。

――そういった環境の中で日本のアニメはどういった立ち位置なのでしょうか?

百元
現在の中国における日本のアニメ配信ではiQIYI・YOUKU・ビリビリ動画が、国産アニメでは多くのスタジオを有するテンセントが活発に動いているなど国内の競争は激しいです。オタク向けのコミュニティーということでは、日本でもビリビリ動画の勢いが知られていますね。

そこでの有力なカードのひとつとして日本のアニメがある、といったところでしょうか。一般受けするドラマや実写化作品と比べてメインにはなり得ないのですが、定期的に一定数以上の新作が提供され、ファンが毎シーズン盛り上がるということで需要があるんだと思います。

――中国では日本のアニメを観るに当たって反日感情は作用しないんですか?

百元
日本が気に食わないところはあります。ただし、中国では政治的、歴史的、宗教的といった敏感な問題はスルーしたやりとりに慣れているんですよ。いわゆるダブルスタンダードなので、反日感情は別にして日本のコンテンツを楽しむ人が多いわけですし、さらに言えば、中国で日本のアニメやマンガが人気になったのは、そういった政治色なり歴史色のない無色だったことも大きいと思います。

ネットのアニメ作品を語る掲示板などでは、日本のコンテンツに対して、政治的に取れるような中国では敏感な問題になる内容があると「俺達がせっかくアニメを楽しんでいたのに、何故そんな野暮なことをするんだ」と叩かれることがありますから。

――俗に言われる海賊版問題はどうでしょうか?

百元
まずディスクを売る一般的な海賊版のイメージがありますよね。それが中国では非常に多かったのが、P2Pのファイル共有ソフトによって、ネットに繋げばタダで動画が手に入るようになり、海賊版売りが大打撃を受けてほぼ消えてしまいました。

次に中国での正規配信より先にネットに違法アップロードをする字幕翻訳組が出て来まして、独自に翻訳した字幕を付けてアップしたデータが一時期多く見られました。
しかし、それも動画配信サイトでどんどん大量のリソース投入されるようになり、安定した画質や字幕の精度の高さで正規配信の勢いに押されて無くなってきています。視聴者にとっては比較的楽な環境で基本的には無料で見られるので、需要がなくなったと言えるのではないでしょうか。

ただし、今年に入ってから動きがありまして、今度は各動画配信サイトが有料会員向けの先行配信、あるいは有料配信というのをかなり強く打ち出すようになっていますから、また現地のアニメ視聴の環境も大きく変わるかと思います。
《乃木章》
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