■「彼女たちの将来を見守ってほしい」(武田)
――山田監督はトークイベントなどで、この作品について「この気持ちをなんて言っていいのか分からない」とおっしゃっていましたが、今もそのお気持ちは変わりませんか?
山田
そうですね。何となく「成長して骨が伸びる瞬間、その前の初期微動」みたいな感覚を映像にしたいと思っていたのですが、コンテを描いていても、なんか胸が詰まっていて。「この胸が詰まっている感じに名前を付けてください」って、みなさんに募集をしたいです(笑)。
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――公式サイトでも感想投稿キャンペーンをされていますよね。言葉を操る者として、武田さんはいかがですか?
武田
すごく刹那的ですよね。たとえるなら「割れる直前のシャボン玉を写真で撮った」みたいな感じでしょうか。映像では割れていなくて綺麗で美しい瞬間を捉えているけど、実は変動していて……。言葉にするのは難しいですね。
山田
すごく良い表現だと思います! 映画はある一時期を切り取っているけど、その前後でカタチが大きく変わっているんですよね。
――ふと気になっていたのですが、今回、『リズと青い鳥』を描いたことによって、石原監督が手ける映画に影響はありませんか?
山田
そちらは完全に久美子の物語になっているので、作品自体の影響はないと思います。あくまで『リズと青い鳥』は問題が起こって解決されるまでを描いているわけじゃなくて、ある一時期のイメージですから。
ただ、本作を観ていただいた後に『響け!ユーフォニアム』の本編を観て、何か感じるものがあるかもしれない、とは思います。
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――武田さんは書く側にとっていかがですか?
武田
やっぱり映像ってすごく力があるので、何かしらの影響は出てくると思んですけど、それを具体的に出すのは難しいです(笑)。『響け!ユーフォニアム』って、京アニさんが作ってくださったキャラクターから輸入しているものもあるので、そういうところでちょっとずつ影響を受けているのかなって。
山田
TVシリーズを作っている時、ふと「いま交換日記してるかも!」と思う瞬間はありました。武田先生が新たに書いた短編を読んで何か発見を見つけたら、それをコンテに入れさせてもらったりして。直に言葉を交わしてなくても、交換日記みたいな関係を感じていました。
武田
そう言っていただけて良かったです。私もアニメから色々とキャラクターをお借りしているので(笑)。
山田
石原監督も「あっ、このキャラ出てる! やったー!」って喜んでましたよ(笑)。
――では最後にこれから映画をご覧になる方々に向けて、見どころをお伺いします。
武田
みぞれと希美というふたりは、『響け!ユーフォニアム』から見ても動きが独立していて、特殊な立ち位置にいるキャラクターだと思います。王子様がお姫様を迎えに来るような、みんなが思い描く典型的なハッピーエンドではないかもしれませんが、明るい方向に進んでいると思いますので、2人の将来をぜひ見届けてください。
山田
演奏シーンはもちろん、世界を作る音もすごく大事にしています。色々な形の音がありますので、本当に映画館のサラウンド環境で体験していただけたら嬉しいです。とても静かな映画のようで、ものすごい映画体験をしていただけるのではないかなあと思っています。ぜひよろしくお願いします!