「さよならの朝に約束の花をかざろう」岡田麿里監督インタビュー ファンタジーの世界で“親子”を描いた理由とは | アニメ!アニメ!

「さよならの朝に約束の花をかざろう」岡田麿里監督インタビュー ファンタジーの世界で“親子”を描いた理由とは

劇場アニメ『さよならの朝に約束の花をかざろう』より岡田麿里監督にインタビューを敢行。緻密な心情描写でときに視聴者の心をえぐり、多くの共感を得てきた岡田麿里が描く“親子”とは。母親をどのように捉え、監督として映像に落とし込んだのか、話をうかがった。

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『さよならの朝に約束の花をかざろう』(C)PROJECT MAQUIA
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岡田麿里が監督を務める劇場アニメ『さよならの朝に約束の花をかざろう』が、2月24日より全国ロードショーを開始する。
岡田監督は『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』や『心が叫びたがってるんだ。』をはじめとする作品で脚本を担当してきて、今回が初の監督作品となった。脚本も兼任した本作は、不老長寿の民の少女・マキアが故郷を追われ、外の世界で赤ん坊の男の子・エリアルを拾うところから始まる。両親のいなかったマキアは、エリアルを育てることを決心し、二人は葛藤しながらも親子の関係を築いていく。

緻密な心情描写でときに視聴者の心をえぐり、多くの共感を得てきた岡田麿里が描く“親子”とは。母親をどのように捉え、監督として映像に落とし込んだのか、話をうかがった。
【取材・構成=奥村ひとみ】

『さよならの朝に約束の花をかざろう』
2018年2月24日(土)ロードショー
sayoasa.jp/

■“親子”は絶対に逃れられない呪いのような関係でもある

――本作を作るにあたって、物語の起点となった要素を教えていただけますか?

岡田麿里監督(以下、岡田)
今回は「すごく求め合う人たちの話」を描きたかったんです。強く求めるがゆえに、身動きが取れなくなってしまう人たちのお話。
主人公のマキアには両親がおらず、ずっと自分はひとりぼっちだと思って生きてきました。そんな女の子が、親を亡くしてひとりぼっちになった赤ん坊のエリアルを拾います。一人になりたくないと願うマキアが求めている一番強い関係って、やっぱり“親子”だと思うんです。
子供を育てながらマキアは「エリアルの母親にならなきゃ」と、だんだん強迫観念のように自分に役割を課して、そのせいでエリアルの気持ちが分からなくなってしまうこともあったり。二人は本物の親子ではありませんが、だんだん勝手に湧き出してくる愛へ寄っていく様を描いています。

『さよならの朝に約束の花をかざろう』(C)PROJECT MAQUIA
――これまで脚本家として活躍されてきた岡田さんが、本作では初めて監督のポジションに就かれました。監督のお仕事の率直なご感想や、監督と脚本家の違いを感じたポイントを教えてください。

岡田
脚本は作品のトップバッターであり、最初に制作から去ってしまうポジションなので、一度、皆と一緒に最後まで作品に付き合っていくことをやってみたかった。よく“制作現場”という言い方をしますが、現場の、たとえば作画のスタッフさんたちからすると、脚本家は現場の人ではないんですよね。
監督として入るようになってから、「現場はどうですか?」と聞かれることが増えました。また、脚本を書いているだけでは到達できない、表情やセリフ、仕草ひとつや景色の色といったところに参加できたのは、脚本家と監督の大きな違いでした。
想定はしていても、脚本のうえだけではどうしても限界があります。絵作りのディスカッションに参加することで、セリフで説明せずともなんとなく気持ちで伝わったり理解できたりする部分を共有できたので、挑戦させていただけてすごく良かったなと思っています。
メインスタッフには『凪のあすから』でご一緒した篠原俊哉副監督や、美術監督の東地和生さん、キャラクターデザイン・総作画監督の石井百合子さんらが入ってくださり、すごく心強かったです。休憩時間とかもなんだかんだと作品のことを話していて、モノを作っている喜びといいますか、青春感がありましたね(笑)。

――岡田麿里さんと聞くと、『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』や『心が叫びたがってるんだ。』といった現代劇のイメージがありました。今回はなぜファンタジーの世界を舞台にしたのでしょうか?

岡田
描きたいものがけっこう生々しいというか、この作品には強い感情をいっぱい乗せたかったんですね。そうなると、現代劇だとリアルになり過ぎて乗りづらくなるんじゃないかな、と。
現代劇、じっとしていられない感覚と言うか、テンションが高まっていく感じと相性がいいような気がするんです。どちらかと言うと今回の『さよ朝』は、キャラクターが心の内側に入っていくお話なので、世界が伝えてくれる情報は鮮やかなほうがいいな、と考えました。あとは単純にファンタジーが好きということも大きかったです。

『さよならの朝に約束の花をかざろう』(C)PROJECT MAQUIA
――強い感情というのは、やはり“親子”のことですよね。

岡田
「強い繋がり」という点から考え始めたのですが、それが結局、親子なんですよね。強度という意味では恋人や夫婦もそうなのかもしれませんが、恋人や夫婦は解消しようと思えばできます。でも親子は絶対に壊せない関係で、ある意味、呪いのようなものでもあります。けれど、マキアが望んでいたのはそういう関係なんです。
マキアは不器用な子なので、自分が抱いている理想の母親像に、押しつぶされそうになりながらも、エリアルの側にいられる方法が他に見つけられなかった。本作にはマキアの他にも「母親」が登場します。その中には、自分で産んだものの育てられなかった子もいて。マキアとの対というわけではないのですが、望まない出産だったはずなのに、いつしかその子に固執していくという。お互いがお互いのことを想っていても、大切がゆえに逆にすれ違ってしまうこともある。それでも諦められないのも、親子なのかなと。この作品の中でいろんな親子の気持ちを描いてみたかったです。
《奥村ひとみ》
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